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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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9-30 水無月進

9-30 水無月進



「おおっ、なんだ!」


 マーブロウバソスさんが驚いたような顔で俺を見ている。やはり魔力の高まりは分かるようだ。


「信じられん、なんて魔力だ…天翼族でもここまでの魔力を持ったものはいないぞ!」


 かなり驚愕しているようだが、俺の魔力は魔力が無限にあるところから直接供給されているから天井知らずだ。

 出力には限界があるが、最近は慣れてきたのでそれなりに大きい。


 そんな時マーブロウバソスさんがこけた。

 膨大な魔力に驚いて転んだ…というわけではなく、いきなり何かを踏み外したように転んだんだ。


「あー、やっぱり」


 周囲の岩にノイズが走る。

 そしてそのまま消滅する岩が出てくる。


 彼が転んだのは足元の岩がなくなったからだ。


「馬鹿な…岩を消滅させる魔力だと!」


 うん、ここだけ見ればそう見えるかもしれない。

 だけど実在を消滅させる魔力なんて…まあ、ないというわけではないけれどちょっと手に余るかな。


 そして俺は彼に真実を教えてやる。


「マーブロウさん、ここには最初から岩なんてないんですよ。これは幻、触れる幻、全てうそです」


 そう、これは委員会のリーダーの勇者スキルの力だ。

 ここのがけが崩れて埋まってしまったと人間にそして世界に嘘をついてそう思い込ませたのだ。


 マーさん(とうとう端折った)は飛び上がり羽ばたきながら足元を埋め尽くしていた岩、瓦礫が消えていくのを呆然と見ていた。


「何のためにこんなことを…」


 俺がそう言う能力の産物だと教えると彼は愕然とそうつぶやいた。

 それは中に入ってみればおのずとわかるさ。


◇・◇・◇・◇


「おかしい…前に来た時にはここはすごい風が吹いていて、立居も大変なほどだったぞ」


 瓦礫が消滅すると、マーさんが言うには〝昔と全く変わらない様子の亀裂がそこにあり、しかしもう風は吹いていなかった。

 亀裂というか横穴はかなり大きく、高さは20メートルにも及ぶだろうか。

 そこを歩いて俺たちは奥に進む。


 ただ内部はかなり様子が変わっているらしかった。


「こんなに平らなはずがない」


 というのだ。

 まあ、それは当然で洞窟の床はまるで何か大きいものが這いずった後のように削れていた。

 もっと言うと上と下から鍾乳石が伸びていて、しかし下側の鐘乳敵だけがすべて押しつぶされているのだ。


 おかげでかなり歩きやすい。


「ここってどのぐらい奥まで続くんですか?」


「そうさな、歩くと丸一日は続くかな」


 悠長に歩いている場合じゃなかった。

 俺はマーさんの襟首をひっつかんで…


「おげげげげっ、やめ、とぶ、自分で飛ぶから」


 いや、無視だ。確かに飛ぶのは歩くより早いけど、俺の飛行速度からすれば誤差みたいなもんだからな。


 それにマーさんは気づいていないがこの場所はヤバイ。

 あちこちに死体の痕跡があるのだ。


 死体の痕跡というと変に聞こえるかもしれないがほんとに痕跡で死体はない。つまり、おそらく、死体が激しく損壊されているのだ。

 そして大部分が消失している。


 そのくせ、そのものの魂が見当たらない。本当にきれいさっぱりない。

 でもここに冥府のにおいはしない。

 つまり向うに旅立ったわけでもない。


「これって前にも見たことがあるなあ…」


「なんだってーーー」


 俺のつぶやきが聞こえたのかマーさんが聞き返してくる。答えようもないから無視だ。


 さらにしばらく進むと遺体が残されているようになった。

 ただ周りが激しく損傷している。


 つまりこの辺りで爆発のようなものがあって、洞窟とか一部崩れ、その爆発に巻き込まれた人間がここで死体になった。

 その後、ここから何かがはい出していって、その進行ルート上にいた人間はみんなひき肉になって、おそらく魂ごとその何かに食われてしまった。


 以前海産物迷宮で委員会のやつらがやったことだ。

 あれにすごく似ている。


 そして俺たちは爆心地と思しき場所にたどり着いた。


◇・◇・◇・◇


 なんじゃこりゃーーーーっ、と大声を出したマーさんはすぐに周辺の確認に走り出した。

 遺体を一つ一つ確認している。


「うーん、吹っ飛ばされて、たたきつけられて亡くなっているな…」


 おそらくここで何かがあったのだ。

 爆発のような何かが。

 そしてたくさんの兵士が吹っ飛ばされた。


 そう、ここにある死体はほとんどが帝国の兵士のものだ。制服を着ている。


 そしてここにいたなにかはそのまま外に向かってはい出していった。

 逃げる兵士を捕食しながら。


 なので横方向に吹っ飛ばされた兵士の遺体は…無事というのはおかしいか、まあ、損傷が少ない。


「おい、生きているのがいるぞ!」


 マーさんの声に俺は振り返った。そして駆け寄る。

 うん、生きてはいる。だけどかなりぼろぼろの人だ。

 俺は回復魔法を起動して彼の治療を始める。


 その兵士はかなりいい服を着ているので上級士官みたいな人なのかな、ちょっと太った感じの…


「あれ?」


 回復して少し状態がよくなるとなんとなく見覚えがある。

 というか…


「水無月君!」


 地球から来た勇者君の一人じゃん。

 何でこんなところでぼろ雑巾になってんの?


 彼が話せるまでに回復するのにしばらくかかった。


◇・◇・◇・◇


「うううっ、葛湯がおいしいでござる」


 俺が収納から出した葛湯を左手でたどたどしくすする勇者君。

 水無月 進君だったな。


 怪我はなかなかひどかったが、何とか治せた。ただ右手はもげちゃってたのでありません。

 足も変な形のオブジェになってたよ。まあ、こちらはくっついていたから何とか治したけどさ…ほんとによく生きていたなという感じ。


「それがしのスキルのおかげでござるよ。あとアニメは偉大でござるな」


 うん、こいつはオタクだった。


 彼の勇者スキルは『全魔法適性』というやつで、想像力でどんな魔法も使えるものだという。以前にも効いたような?

 まあ、そのスキルを使って今まで見たアニメのとんでも能力とかとんでもシステムとかいろいろ作っていたらしい。

 それが今回は功を奏した。防御に全神経を振り分けて何とか自分の命を守ったという、それでもあの怪我だ。


「生命維持装置がなかったら死んでいたでござるよ」


 あははと笑う。

 水無月君の手は、体は小刻みに震えていた。よほどの目にあったのだろう。


 だがきかないわけにもいかないのだ。


「何があった?」


「と…とんでもないことがあったでござる。それがしたちは騙されていたでござるよ。騙されて…吉保も…」


 ああ、もう一人の勇者君か…

 再び肩をふるわせ始める水無月君。


「仕方ない」


 俺は洞窟の中を冥の魔力で染めていく。

 うまくいくかな?


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