9-21 イムヘテプ
9-21 イムヘテプ
「うーん、すごいイケメンだなあ…」
「え? そうですか?」
あれ? テレビとかに出たら人気をかっさらいそうな、そんな感じの美少年? な感じだと思うけど…
「いえ、確かに整った顔をしていますが…そんなに騒ぐほどじゃ…」
ありゃりあゃ?
流歌と意見が食い違った。
こいつとは妙にというか、あいつの娘なので当然だと思うんだけど趣味が合うんだよね。
それなのにここまで意見が食い違う?
どういうことだ?
周りを見ると艶さんとかミツヨシ君とかも特にその手の感想はもっていないみたい…
エジプトのファラオ風でいい感じだと思うけどな…
「直接会うのは初めてですね」
「はい、そうですね、ですがお噂はかねがね? 奇特な方たちだと感心しているのです。いつも」
艶さんとイムヘテプの応酬だ。なんか火花がバチバチ飛んでいる感じだな。
「それにしても自分の歩いてきたところがすべて幻だったなんてびっくりしました。あなたの能力は聞いたことがなかったですけど、こんな恐ろしい能力だったなんて…
この態勢で対峙できたのは僥倖でしたね」
「はい、全く不運なことでした。そちらの方さえいなければ、どのようにもなりましたのに。
効果的かと思って役立たずをぶつけようなどと考えたのが間違いでした。
人間なら多少の動揺は誘えるかと思ったんですが…まさか逆効果になるなんて…
魔力お化けですね」
ふむふむ、なんかわかって来たぞ。
このイムヘテプの声って、やたら耳に心地いいんだよね。
言ってることはめちゃくちゃなのに妙に腑に落ちる。
何でかと思ったらモース君が足元でウゴウゴ言ってる。
イムヘテプの方に行きたいような感じだな。俺が拘束しているから思うように動けない。
モース君の本体は俺の左腕に組み込まれた流龍珠だから、行ってみれば俺の召喚獣みたいな扱いなんだよね…
ということはだ。
「精霊にやたらよく効く魅了能力」
俺がそう言うとイムヘテプは大きく目を見開いた。
「あー、当たりか、モース君までふらふら行くようだと、この国の神を操るとかできそう。上位精霊をどうこうできるなら、いくらでもやり様はあるものな」
宗教をでっち上げてたみたいだけど、本当の神というか祀られていた上位精霊を動かせるんならいくらでも信ぴょう性も箔もつけようがある。
俺にしてからがこの『敵』を好ましいと感じるのだからものすごく強力な能力だと思う。
「あらゆるものを幻影でだまして、しかも精霊を使役できるんなら、帝国の乗っ取りとか簡単だよね。
ひょっとして帝国のここしばらくの宰相って、全部君なのかな?
見た目ぐらいどうとでもなりそうだ。
魅了効果は近距離でないと薄れるみたいだから、彼がずっと出ずっぱりでないと無理だろう。
代替わりした風を装ってずっとやってたんだね」
「待ってください」
艶さんから待ったが!
「彼の能力は魅了なんですか?」
「ああ、それは間違いないね」
モース君の反応からそれは明らかだ。
「では、この城を作っていた幻は彼の能力ではありません。
系統が違いすぎます。
これは別の人の能力ですね。
だとしたら…」
「いやー、さすがですね、伊達や酔狂で何百年も我々と争っていない。というところですか。勘の鋭い人は本当に嫌いですよ」
なるほど。確かに周囲の幻は修復の兆しを見せない。
彼がやっているのでなければそれも当然か。
俺がふむふむ言っていると。
「あなたのような人が騎士団にいられると困るんですよね。
どうやら精霊を使役している様子。
わたしとは違う方法ですかね。
うーん、困りました」
彼はあまり困っていないようにあははと笑った。
「いえ、本当に困ってますよ、困っていますとも。ここであなたをしとめなくてはならないと決意するぐらいにはね」
イムヘテプがそういうと彼の周辺にぽつぽつと小さな灯がともる。
それはすぐに膨れ、真っ赤な、炎の玉になる。
そのたまには陰影で顔のようなものが浮かび上がっていた。
「火の精霊だね」
「ええ、ですがそれだけではないですよ」
火の玉のうちのいくつかがそのまま大きくなって色を変えていく。
小さいのがソフトボール大。
大きめなのが50cmほどだ。
さらにそのうちの一つが大きくなって3mほどになる。
《この上位精霊でありますな。この国の神でありましょう》
「モース君、大丈夫?」
《はい、フラグメントの中に回収されたら影響は受けなくなりましたであります。
外は知覚できますが、ここは別の世界ですから、魅了の効果もここまでは来ないでありますよ》
うん、それはよかった。
良かったがモースくんは留守番だな。
華芽姫も引っ込んでいてもらうしかない。
相手が火の精霊だからモース君がいてくれるとものすごくやりやすかったんだけど…
まあ、仕方ない。
それに大した問題じゃない。
俺は無造作に踏み込むと無間獄を大鎌モードにして火の上位精霊を切り裂いた。
バフっと一瞬にしてはじける炎。
そして炎が過ぎ去った後には何も残っていなかった。
「あ…りえない…上級精霊を倒すなんて…」
イムヘテプが愕然としている。
精霊というのは言ってみればエネルギー生命体なので死ぬ、という概念はない。
ただエネルギーの塊だからエネルギー量が下がれば自己を維持できずに崩壊してしまう。
つまり下位精霊などは大きなエネルギーで押しつぶすことは出来るのだ。
ただ上位精霊になると難易度は格段に上がる。
もともと保有するエネルギー量が桁外れだから押しつぶすにしてもどこからそのエネルギーを持ってくるの? という話になるのだ。
なので一般的に上級精霊を殺すのはほぼ不可能。という認識がある。
これを実行されれば驚くなという方が無理なのだ。
それはつまり自分の目の前にいる存在、つまり俺がそれだけのエネルギーを持っているということになるのだから。
人間から見れば化け物レベルだ。
それにじつをいうと倒したわけでもないのだ。
ぶっちゃけ無間獄のゲート機能を使って冥府に送り込んだだけ。
はっきり言ってああいうのの治療は分からないからね、向こうなら専門家もいるし。
『なによーーーっ』とか聞こえた気がするが…まあ、気のせいだ。たぶん。
それはそれとしてミツヨシ君はその隙を逃すような男じゃない。
気が付いた時にはミツヨシ君がイムヘテプの後ろに移動していて(瞬間移動か!)その剣がイムヘテプの胸に突き刺さっていた。
そして返す刀でその首を!
カキーンという音がして彼の剣が受け止められた。
剣を受け止めていたのは…水晶の骸骨戦士だった。
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ごめんなさい、今年は花粉症がすごくて…
頭が…全然回りません。
ちょっと本文に自信がないかも…後で(かなり後?)修正とかあるかもです。
あと誤字とかあったらお知らせください。
それともし面白いと思っていただけたら『☆』とかください。なんか大事なことのようなので。
(たまにはお願いしてみるです)




