表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

202/240

9-09 いつの間にやら喧嘩の準備

9-09 いつの間にやら喧嘩の準備



 当然の流れとしてホテルは引き払うことになった。


 慌てたのはスール子爵だ。

 帝国政府からサリア王女の案内人を押し付けられ、必死にそれをやっている途中で予定から外れてどこに行くのやらという話なのだ。慌てないはずがない。


「子爵殿、ここまで世話になったし、関係のない仕事を押し付けられてなお、貴公がその職無をまっとうしようとしていたことは了解しています。

 ですが私もせっかく本来の家族に会えたのです。

 それにここまで飛ばしてきたせいで日数的にも余裕はあるはず。

 しばし親孝行、ジジババ孝行ということでコートノー伯爵に付き合おうと思います。

 当初の予定より遅らせるつもりはありませんから心配はしなくていいですよ」


「ええ、わたくしも夫となる方の母上、そして祖父君祖母君ですからね、孝行をしたく思いますし、よくわかり合うことは必要だと思うのです」


 だが俺とサリアにこういわれては絶対に否とは言えないだろう。

 まあ、言えないのを承知で言っているのだから気の毒の一語。


 そして彼の受難はこれにとどまらない。


 俺たちは伯爵領都の街道沿いにあるよさげな場所に移動してそこにキャンプを広げる。

 といっても生活スペースはすべてカーゴで賄えるのだから、防衛陣地の設営のようなものだ。

 さすがに伯爵旗下とはいえ帝国兵を無制限にカーゴの中に入れるわけにはいかないし、こちらとしても見張りなどの人員を配置しないわけにはいかない。

 なのである程度はちゃんとする。


 食料とか資材とかは俺の収納に入っているし、キャンプ用のトーフハウスなどもあるのでそうそう困るような事もない。


 サリアの部下の50人と、伯爵が連れてきた30人が手早く仕事にかかる。


 伯爵の部下は一部が帝都に使者として赴き、一部が伯爵領に増援の要請に向かった。伯爵の話によれば四日もあればそれなりの兵力がここに集結することになるらしい。


 ここまでくるとスール子爵も事態が変な方向に向かっているのは簡単にわかるわけで、『どういうことですか?』 と詰め寄ってきた段階で拘束されてしまったりする。


 うん、まあ、事態が収拾するまでおとなしくしていてくれれば安全は保障します。


◇・◇・◇・◇


「さて、なんで帝国の連中は俺とサリアを帝国に呼び寄せようとしたのか?」


 俺達は岩場にドンと置かれたトーフハウスで話し合いの機会を持つ。


 伯爵たちは魔動車の見学に行っている。

 伯爵たちが帝国政府の手先であるという認識は持っていないが、だからと言って無条件に信用していいわけでもない。

 それが分かっているから伯爵もおとなしくアリオンゼール王家専用の魔動車の見学などをしているのだと思う。


「はいはいはいはい」


「はい、ルトナ君」


「敵はおびき寄せて叩くだと思います」


 うん、まあ、それはそうなんだと思うんだけどね。


「兄さま?」


「はい?」


「以前聞いた話ですとアウシールの迷宮とか、この前の海産物迷宮とか裏で悪いことをしようとしていた人がいるってことでしたよね」


「そうそう、って、あれ? その話したっけ?」


 した記憶はない。まあ、敵がいることは否定はしていなかったけど。


「母様から聞きました。艶さまたちはそう言うことに関して王国と協力関係にありますから」


 あー、そう言えばそうだった。そっちルートでも委員会の情報は出てくるのか。


「私もランファさんから聞きましたよ、暗躍している人たちがいるって」

「秘密結社だそうですね」


 そう言う話になってたのか?

 いや、あながち間違いじゃないけど。


「で考えてみればその何とかいうグループの活動を、わたくしたちって結構邪魔しまくってますよね?

 そうすれば目の敵にされるのでは?」


「あー、それもそうか…」


 こちらが向こうのことを調べているのに向こうがこちらを調べてないと考えるのは間抜けだった。


『マスターは魔抜けでありますからな』

『そのちょっと抜けたところがいい感じなのー』


 絶大な支持をありがとう。


「そして、その人たちの邪魔をするときは必ずわたくしか兄さまがその場にいます。

 であれば…」


 なるほど。俺たちのうちどちらが自分たちの敵なのか判別がつかなかったのか。

 なので両方ともつぶしてしまえばいいと。

 そして今回は婚約状態で乗り込んで来たから俺もサリアもぶっちゃけ艶さんたちも同じ穴の狢だと考えたということだな。


「となると帝国はそいつら、世界救済委員会に乗っ取られている可能性が高い。

 うん、困ったもんだ」


 あるいは聖国と教国と帝国は根が同じなのかも。


「華芽姫、ちょっとスケアクロウマンと連絡とってくれる?

 向こうが気になってきたわ」


『はいです~もーしもーしですー』


 というわけで連絡を取ったのだが、向こうは問題はないということだった。

 ドラゴンぐらいしかいない高高度で進んでいるからな。ドラゴンと意思疎通ができれば問題はないだろう。


『なんか準備万端で高高度爆撃をやるっていっているですよー』


「マジで?」


 何する気だ。


◇・◇・◇・◇


「現在高度7000m。周囲に敵影無しだよ」


「いや、この高度で敵影がいたら怖いよ」


 流歌です。

 翔子のぼけに突っ込みを入れる。いや、本当にぼけなのかわからないけど。


「流歌、前方にいい感じの岩場があるよ」


 現在魔動船のコントロールをしているのは私で周辺の観測を翔子が担当している。

 その翔子がそんなことを言う。


「艶さん、どうします。もう少し弾、補給しますか?」


「え? ええええ、そうね、そうしましょうか」


「大丈夫でござるか? この辺りは既に教国の奥深くでござるよ」


 二人ともちゃんと受け答えをしているけど艶さんの持っている紅茶のカップは小刻みに震えているし、ミツヨシさんはどっかと座って目を閉じて全く動かない。

 そんなに怖いかなあ、空の上…

 まあね私もさすがに高度7000mは初めてだけどね、油圧が聞いてなかったら高山病で倒れていると思う。


 現在私たちが飛んでいるのは教国の中にある荒野。

 教国をここまで進んで来たけど変な国だったわ。

 国全体が荒野で、穀倉地帯とかないのよね。

 貿易で食料を手に入れるにしてもぜんぜん食糧生産をしないとかってありなのかしら。


「よし、ここら辺でOK。降下お願い」


「はーい」


 わたしは魔動船をまっすぐ下に降下させる。

 わずかに感じる浮遊感。

 内臓が浮き上がるような感じ。


「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「むむう」


 絶叫マシーンなんかに比べると全然なんだけど、それても艶さんたちはなれないみたいでその瞬間悲鳴が上がった。

 普段いかにもなお姫様の艶さんが慌てる姿はかわいいわね。

 でもメイドのリリアちゃんみたいに意識を失っちゃったほうが利口なような気がするわ。


 そして荒野のど真ん中。


 艶さんたちはすぐに立ち直った。さすが。


「すごいわ、ここって、まるごと大きな岩になっている」


 艶さんはゴーレムとか使うのが得意でだからか地中の様子とかよくわかるみたい。

 その艶さんがそう言った。


「つまりエアーズロックみたいなものね」


「これを丸ごと持っていけたらいいんだけど…」


「少し浮かせてくれればできるなの」


 フフルちゃんのセリフで方針が決まった。

 この巨大な一個の岩をフフルちゃんの収納にしまってもらって、持っていくのだ。

 でもしっかりと埋まった状態ではそれはできない。

 地面から分離することが必要なのだ。


「任せてください」


 艶さんが地面に手を置いて何かを呟いている。

 今たぶん、この岩の周りで艶さんのゴーレムが動き回っている。

 いったんきちんと分離されれば収納は可能なはず。

 さすがに勇者の収納では無理だけど。

 これならいい感じに…


「いけません、艶さま、敵襲です」


 敵というか魔物でした。

 あれはバウとか言う名前の魔物ですね。

 どんなのかというと犬みたいなスマートな爬虫類。ですかね。

 大きさは大型犬ぐらいでしかも群ですよ。いやだなあ。


「もう少し時間がかかります」


「承知しました、時間を稼ぎます」

「ぴーーっ」

「任せるなの」


「流歌は発信準備、ホバリング」


 準備が終わったらすぐに逃げられるようにですね。わかってます。

 私たちは自分の役目を果たすために動き出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔抜け? 間抜けか 発信準備? 発進準備か
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ