エピローグ
「遂に……殿下がご結婚されてしまったわ……」
急にベアトリスから手紙が来たと思ったら……。
私達はライガー邸の客間の、窓の側のクッションに座っている。
「数ヶ月前の、婚約発表から覚悟されていたのではないのですか?」
隣のベアトリスは、涙や鼻水をハンカチで押さえている。
「してましたわよ!それでも、悲しいものは悲しいのですわ……」
それもそうね……。
「ネルさんは良いわよね」
「何がです?」
「おめでただとか」
……相変わらず、噂に敏感ね。
その噂があったから、馬車に揺られないようこちらに来たのかしら?
「……ティムと仲の良い、エルナンドさんはご存知でしょうか?」
「えぇ、何度か会った事があるわ」
それが何?と、ベアトリスが横目で私を見る。
「ベアトリス様に興味があるようでしたわ」
「……」
「ずっと前に、彼が放置していた怪我の手当てをするよう、連れてきていた侍女に頼んだんですってね。それ以来、気になっていると聞きましたわ」
ティムに連れていかれた、騎士の懇談の場にて本人から聞いたから噂とかではない。
「そう……」
ベアトリスは濡れた目のまま、ハンカチに視線を落とした。
ティムも殿下から言われたのはたった、一言だった。
その一言で私はここに嫁ぎ、新しい命を宿している。
誰かを気にかけ、掛ける言葉はたった一言で良いのかもしれない。
私達がそうであったように。
ベアトリスが私の視線に気付き、顔を上げた。
頬の涙はもう、乾いていた。
《完》
これにてネル嬢の話は終わりです。
ここまでお付き合い下さった方がいましたら、ありがとございました^^




