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【みなそこの夢】~夢で“知らない歌”を聞く少女と、忘れられた大陸~  作者: 幹まなと
【第15章】泰平のとばりを切り裂くおつき星
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ヨヲセの証言②

 賑わう食堂の中、ヒネとヨヲセの間にだけ静寂が落ちていた。

 カダを疑うヨヲセが理由を語りだした。

「実は、私は修行の一環として……宇宙船の中をたびたびのぞいていたんだ」

「う、宇宙船?」

 ヨヲセから出た、あまりに突飛な話にヒネは目を丸くした。

「生前にババ様から『あんたには遠く離れた場所に意識だけで行ける才能がある』って言われてさ。最初は半信半疑だったし、なかなかうまくいかなかったんだ。けど、そのうち本当に、思った場所に少しずつ意識だけで行けるようになってさ。最初のころは大陸中を、そのうち惑星中を意識で回るようになって、あるとき思いつきで宇宙まで行ってみたことがあったんだ」

 隣の席で笑い声が上がる。何やらふざけ合っているだけのようだとわかり、ヒネは視線を戻した。

 他人が聞けば、半ば真偽を疑う話だろう。だが「意識だけで遠く離れた場所へ行く」というのは、高度な能力のある神呼には可能なのだ。実際に、ヒネも何度か試してみて、毎度ではないが成功したことも何回かある。

「あの技は、かなりの体力を使いますでしょう。私なんて一度、しばらく体調を崩してしまい、大変でした。それからはもう、ずっとやっておりません」

「ヒネも、できるのか?」

 驚いたように聞いてきたヨヲセに、ヒネはきょとんとする。

「『意識で遠く離れた場所を覗く』のとは違うぞ?」

「はい、わかっております。『意識だけでどこかに行く』というのは、『意識で覗く』場合とは違って、たとえば触れたり匂いを嗅いだりもできますね。あと、相手も同じ能力がある場合には、意思疎通も可能です」

 淡々と答えるヒネに、ヨヲセは複雑な表情で口を尖らせる。

「しかし宇宙船とは……いったい、宇宙のどこまで行ってくるのです?」

 ヒネが問うと、ヨヲセの目に真剣な色が戻る。

「そんなに遠くじゃない。惑星パムゥの上空、おそらく大気の層を抜けた辺りだと思う。そこに停泊してるんだ」

 ヒネは驚いた。

「だけど簡単には中に入れない。何か意識の壁のようなものがあって、どうやっても中には入れないようになってるんだ。だけど……」

 そう言って、湯呑に残っていた茶をヨヲセが一気に飲み干す。


挿絵(By みてみん)


「ある日、抜け穴を見つけた」

「抜け穴?」

「抜け穴というか……多分あれだ。抜け穴を見つけたことでわかったんだけど、意識の壁は文字通り意識の壁なんだ。つまり、機械的なもので作られた障壁じゃなくて、シュバウル人の意識で張り巡らされている壁だってこと」

 ヒネは、自分の前に置かれた手つかずの膳に目を向ける。天井から吊るされた明かりが、汁物の表面に、輪郭だけをぼんやり映して揺れている。

「で、一日のうち、だいたい決まった時間になると、ある一つの場所だけ障壁が弱くなるんだ。多分、何らかの理由でそこだけ意識を向けにくくなるか、あるいは意識が途切れるのかもしれない。正確なことはわからないけど、とにかく、その時間にそこを通れば中に入れることを発見した。」

「中でシュバウル人に会ったのですか?」

 ヒネは目を上げて問う。

「会った。いや、会ったというか、いつも追い払われると表現した方がいいか。でも問題はシュバウル人じゃない」

 ヒネはわずかに目を見開く。

「問題、とは、なんのことですか?」

「そこに、宇宙船の中にあったものだ」

 そう言って、ヨヲセは再び湯呑に手を伸ばしたが、途中で空だったと思い出し、伸ばした手が宙をさまよう。「これでよければ」とヒネが差し出した茶を、ヨヲセは礼を言って一口飲んだ。


「宇宙船の中は、中には――」



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