ヨヲセの証言②
賑わう食堂の中、ヒネとヨヲセの間にだけ静寂が落ちていた。
カダを疑うヨヲセが理由を語りだした。
「実は、私は修行の一環として……宇宙船の中をたびたびのぞいていたんだ」
「う、宇宙船?」
ヨヲセから出た、あまりに突飛な話にヒネは目を丸くした。
「生前にババ様から『あんたには遠く離れた場所に意識だけで行ける才能がある』って言われてさ。最初は半信半疑だったし、なかなかうまくいかなかったんだ。けど、そのうち本当に、思った場所に少しずつ意識だけで行けるようになってさ。最初のころは大陸中を、そのうち惑星中を意識で回るようになって、あるとき思いつきで宇宙まで行ってみたことがあったんだ」
隣の席で笑い声が上がる。何やらふざけ合っているだけのようだとわかり、ヒネは視線を戻した。
他人が聞けば、半ば真偽を疑う話だろう。だが「意識だけで遠く離れた場所へ行く」というのは、高度な能力のある神呼には可能なのだ。実際に、ヒネも何度か試してみて、毎度ではないが成功したことも何回かある。
「あの技は、かなりの体力を使いますでしょう。私なんて一度、しばらく体調を崩してしまい、大変でした。それからはもう、ずっとやっておりません」
「ヒネも、できるのか?」
驚いたように聞いてきたヨヲセに、ヒネはきょとんとする。
「『意識で遠く離れた場所を覗く』のとは違うぞ?」
「はい、わかっております。『意識だけでどこかに行く』というのは、『意識で覗く』場合とは違って、たとえば触れたり匂いを嗅いだりもできますね。あと、相手も同じ能力がある場合には、意思疎通も可能です」
淡々と答えるヒネに、ヨヲセは複雑な表情で口を尖らせる。
「しかし宇宙船とは……いったい、宇宙のどこまで行ってくるのです?」
ヒネが問うと、ヨヲセの目に真剣な色が戻る。
「そんなに遠くじゃない。惑星パムゥの上空、おそらく大気の層を抜けた辺りだと思う。そこに停泊してるんだ」
ヒネは驚いた。
「だけど簡単には中に入れない。何か意識の壁のようなものがあって、どうやっても中には入れないようになってるんだ。だけど……」
そう言って、湯呑に残っていた茶をヨヲセが一気に飲み干す。
「ある日、抜け穴を見つけた」
「抜け穴?」
「抜け穴というか……多分あれだ。抜け穴を見つけたことでわかったんだけど、意識の壁は文字通り意識の壁なんだ。つまり、機械的なもので作られた障壁じゃなくて、シュバウル人の意識で張り巡らされている壁だってこと」
ヒネは、自分の前に置かれた手つかずの膳に目を向ける。天井から吊るされた明かりが、汁物の表面に、輪郭だけをぼんやり映して揺れている。
「で、一日のうち、だいたい決まった時間になると、ある一つの場所だけ障壁が弱くなるんだ。多分、何らかの理由でそこだけ意識を向けにくくなるか、あるいは意識が途切れるのかもしれない。正確なことはわからないけど、とにかく、その時間にそこを通れば中に入れることを発見した。」
「中でシュバウル人に会ったのですか?」
ヒネは目を上げて問う。
「会った。いや、会ったというか、いつも追い払われると表現した方がいいか。でも問題はシュバウル人じゃない」
ヒネはわずかに目を見開く。
「問題、とは、なんのことですか?」
「そこに、宇宙船の中にあったものだ」
そう言って、ヨヲセは再び湯呑に手を伸ばしたが、途中で空だったと思い出し、伸ばした手が宙をさまよう。「これでよければ」とヒネが差し出した茶を、ヨヲセは礼を言って一口飲んだ。
「宇宙船の中は、中には――」
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