12年ぶりに明かされる真実①
目の前に現れた男性は、ヒネの父親、カイザンで間違いなかった。
画像は若いころのもので、目の前の人物は倍ほど歳をとってはいるが、面影は鮮明に残っている。おそらく間違いないだろう。思い返せば、以前会った際もど派手な羽織をまとっていたと思い出す。
ヒネは、知らぬ顔をして通り過ぎようとした。しかし、通路の真ん中で立つ父が、その派手な衣のせいか、一層立ちふさがる壁のように感じて躊躇する。
思い切って父の右手を通り抜けようとしたとき、父の方もヒネに道を譲ろうとして、だがヒネが動いた方へ身を動かしたため、ぶつかってしまった。
「これは申し訳ない、お怪我はございませんか?」
父はヒネとは気づいていないようで、他人行儀に気遣ってみせる。無理もない、会ったのは最初で最後、8歳のときに一度だけだ。面影すらないだろう……。
「はい、問題ございませんので」
そう言って、顔を伏せがちにヒネは通り過ぎようとしたが、伏せた顔をのぞき込んだ父が突然ヒネの肩をつかんだ。
ぎょっとして顔を上げたヒネを、父のカイザンがまじまじと見ている。
「そなた、どこかでお会いしてはおらぬか?」
カイザンに問われ、ヒネは躊躇した。だが突然、嫌味の一つでも言ってやりたい衝動に駆られ、ヒネは言ってしまう。
「もし、マガ18番地区6部にお心当たりがございましたら、あるいはいつの日か、お会いしたやもしれません。」
父は母の死を知っているのだろうか、ヒネはずっと思っていた。こちらから知らせてやる義理もないだろう。結局、8歳のときに一度だけヒネとリタに会いに来たきり、そのあとはまったく姿を見せていない。
とっくに自分たちは忘れられた存在なのだ。
「ヒネか」
カイザンは短くそう言った。ヒネは目を上げ、カイザンの、父の目をまっすぐに見る。
居住地番だけでよくわかったな、とヒネは思ったが、マガにはそれしか心当たりがないのだろうとすぐに思い直した。だが父は、
「似ておるな……ナギにそっくりだ」
そう言って、なおもヒネの顔をじっと見つめる。父の目に慕わしげな色を認めて、ヒネは目を逸らす。
ナギというのは、亡くなった母の名である。
「亡くなったそうだな、だいぶ前に……」
だがカイザンの言葉で、ヒネはもう一度目を上げた。そこにカイザンの視線はなく、寂しそうに遠くを見やっていた。
「報せも送らずに申し訳ない、ずっと気にはかけていたのだ」
言い訳するようにカイザンは言って、下を向いた。
「必要ございません。おっしゃる通り、だいぶ前のことでございますゆえ」
そう言うと、ヒネはカイザンをやり過ごすようにかわし、歩きはじめた。
カイザンは身をひるがえし、ヒネのあとを追いかけてくる。ヒネは、追いかけてくる父の姿を横目で捉え、面倒くさいなと内心で思う。
「惑星中を股にかけ、さぞやお忙しかったのでございましょう」
ヒネは自分でも可愛くないと思いながら、つい嫌味を言ってしまった。12年ぶりに父と再会したばかりであるというのに。
だが父は、ヒネから言葉をもらえたのが嬉しかったのか、なぜか声をはずませて言う。
「もしや寂しかったのか? 私もであるぞ!」
ヒネは横目で睨んでしまった。
「アニタに言われたのだ。しばらく、もう顔は見せないでほしいと」
アニタとはリタの母である。ヒネは、意外な話に怪訝な顔をして、カイザンを見る。




