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第2話

「メス」

「はい。」

と言ってメスを渡して水島は、ゆっくりとメスを入れた。そして、何時間か過ぎて手術は終わった。水島は、汗を拭きながら手術室出た。ちょうどそこへ、はるえが通りかかりはるえは、

「手術はどうでしたか?」

「ああ成功さ」

と言ってタオルを椅子に置くと、真剣な目になって

「今日の夜8時絶対に」

と言いかけたところで、はるえが、

「ごめんなさい。私、、、、今日の夜8時に用事があって、行けませんの、、、。本当にごめんなさい」

と言い終わると、水島が

「何の用事?」

「患者のカルテを根岸先生に届けなきゃならないの、、、。」

「そんなの、俺がやる」

「いいの!!、、、、私、、、ごめんなさい。」

「そう、、、それじゃ今度の日曜日に必ず!」

と言って6号室へ入って行ってしまった。はるえは、その後ろ姿を見て心の中ですまないと言う気持ちでいっぱいになった。

ーーそして仕事が終わり夜の7時59分頃ーーー

その頃進は家で、外科のカルテやレントゲンなどを見て勉強していた。しかし時々考えてはぼんやりして、どうもはかどらなかった。その原因はあの田上の『毎日同じ時間に痛くなるんだ』と言う言葉がこだまして、耳から離れないせいであった。そしてぼんやり外を眺めていると、

ピンポーンと言うブザーの音で我に返った。進は腕時計を見るとちょうど8時だったので、慌てて勉強の道具を片付けた、完全に片付け終わってないうちに、はるえを通した。進は、

「散らかってるけれど、どうぞ」

と言った。はるえは赤くなりながら、部屋に入った。そしてはるえは、驚きながら

「進先生のお部屋とても素敵ですのね」

と言った。それもそのはず、進の部屋はこのマンションの中でとっても綺麗な部屋だったからだ。進の部屋とは簡単に説明すると、壁は白くてインテリアで、そして幅が約2Mぐらいのベットに、そこにはふんわりとした羽毛の布団が敷いてあり、そして箪笥とテレビそしてステレオ本箱机があった。そして中央には、透明なテーブルとソファーがあり、ジュータンは柔らかいもので出来ており、色はやっぱり白だった。そして奥の方には、広い台所と風呂とトイレがついてるのだった。はるえは、しばらく声も出ずに立ち尽くしたまま辺りをを見回していたが、進が

「さっどうしたの、適当に座って」

と言う声で我に返った。

「進先生はこんな綺麗なところに住んでるなんて思ってもいなかったわ。、、、、先生の家お金持ちだったんですね、、、知らなかった。」

「ふふふ、そうでもないよ。それに俺は別にこんな綺麗な所に住む気はなかったんだけれど、、、、両親が綺麗好きでね。そんなわけでここに住んでるんだ。」

進は言い終わると

「お茶も出さずに、、、コーヒーでいいかい?」

「先生そんなことは私がします」

と言ってはるえが、コーヒーを入れた。

「あすまない」

と言って進は、窓の方へ行って外を眺めた。夜の8時は真っ暗だった。街の明かりが見えた。はるえは、コーヒーを入れ終わると

「はい先生、先生はブラックでしたね」と言って渡した。進は

「ありがとう。」

と言って受け取った。その時進の手がはるえの上に重なりはるえは、赤くなった。

「はいどうぞ」

と言って渡した。コーヒーを少し飲むと

「ところで、、カルテは?」

と聞いた。はるえはすぐにバックの中から取り出すと、進に渡した。そして進がカルテを見てるとはるえが、コーヒーのカップを置いて真剣な目で言った。

「先生、お聞きしたいことがあって今日わざわざここへ来たの」

進はフッと視線をカルテから反らした。はるえは、

「あのー。進先生には、実の姉がいると言うのは本当ですか」

と言い終わると真剣な目で進の方をじっと見た。

進は眼鏡を外すと

「なぜそんなことを、、、、」

と言った。はるえは

「先生噂で聞いたものですから、、、、進先生に本当のことを直接聞きたくて、、、私、、、わたし、、、。」

と眉毛をきっとあげていつでも美人なはるえがこの時ばかりは、少し怖い顔で進に問いかけた。

「あー。ああ、、、。」

と進は仕方なくはるえに言った。はるえは、ハッとして

「じゃじゃー本当にあの噂は嘘ではなかったんですね。」

とはるえは答えた。進はもう言葉はなかった首を、縦に振っただけだった。はるえは、

「その姉と言うのは、もしかして根川美加さんの事。」

と聞いた。進は困った顔をして

「それは、、あの、、」

と少しためらった。はるえは、そんな進に

「先生私には嘘つかないで、、、私どんな事あっても、秘密は守りますから」

と決心した。その決心は生まれて初めての進に対する愛の告白でもあった。進は窓越しへ行くと外を眺めながら言った。

「ああ。俺の姉さんは実は、根川美加だ。あのファションモデルをやってる、、。」

はるえはすぐに

「じゃあなぜ隠すんです。根川美加が、進先生の実の姉だと言うことを」

「そそれは、、、。姉さんに迷惑をかけたくないからさ」

はるえが進に、

「迷惑?」

「ああ、、、俺の姉は知っての通りファションモデルだ。それも今すごい人気の!、、、、俺がもし根川美加の弟だって言えば、世間はきっと俺をマスコミのネタとして書くだろう。別にそこまではいいんだが、その後が、、、」

というとはるえが、眉毛を釣り上げて進に説いた。

「その後がどうしたんです?」

と聞いた。進はカーテンを握りしめて言った。はるえは、

「えっ血が繋がってないんですって、、、!!」

そのあとはもう声がなかった。進は

「そう、繋がってないんだ、、、つまり俺は父さんに、拾われた子なんだ」

「えっそそれじゃ捨て子?!」

「そうさ。俺は捨て子、、、、だから姉さんが最近いやもっと前から、他人だってマスコミに言ってる」

「捨て子と分かると世間は姉さんに冷たくなり白い目で見られる。俺も姉さんもね」

と言って進はカーテンを思い切りしめた。はるえは、

「進先生の本当の親は誰なんですか?」

進は

「もう辞めよう。こんな話」

「そそうね、辞めましょうこんな話」

と言ってゆっくりと立った。はるえは気を紛らわすために

「あは、コ。コーヒーが冷めてしまったみたい、、、暖かいのに入れ替えるわ。」

と言ってカップを進の手から取ると、台所に行った。入れ替えが終わると、今度は赤くなっていじらしい感じで進に聞いた。

「話はあともう一つ聞きたいことがあって、そそれは、、、。」

進はコーヒーを飲みながら、

「それは、、、?」

と聞き返した。はるえは、真っ赤になりながら

「今度はいつお会いできますか?」

とやっとの思いで言った。進はその表情がいじらしいのと身振りが可愛いのとで、微笑みながら

「いつって、、、。君がどうしても会いたいって言うのなら、、、おれはいつでも、、、」

と進は声が言い終わらないうちに、はるえは、嬉しい顔をして

「それじゃ今度の土曜日は、お暇ですか?」

「土曜?多分暇だ」

「そうそうですか!それが分かれば私、、、じゃ場所は、、今度は私の家でも、、、いいですか?」

「ああ、、、。」

「それじゃ、、、私、こんな時間なんで帰ります」

と言って靴を履き始めた。時計はもう11時を過ぎていた。進は、

「夕食は食べるかい?」

「いいです。どこかで食べて帰ります」

「ああ、、、俺が途中まで送るよ、、、もう11時すぎてるし、、、あぶないから、、、」

その声を聞いて張り裂けそうに、はるえの心臓は波打った。

そして途中ではるえは

「先生ここでいいです。あとはタクシー乗って帰りますから、、、今日はどうもありがとうございました。」

「ああ、、、気をつけて帰れよ」

と進は、言うと、はるえは、

「土曜日にまた」

と言って別れた。進はこの間から全然寝てないせいか少し疲れた顔をしてはるえの、喜ぶ顔を思い出して笑いながら家に帰った。


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