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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第二章 司、調伏師として全国を巡る
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ヤ・ク・ソ・ク


シュタッ タタンッ!


山を越え、地を駆け、森を抜け、川を渡り、1人の男が人里に降り立った。


「田舎だ…。」


ポツリポツリと家はある。だが、それだけだ。一見すれば、妖怪など現れるはずもない、のどかな場所だ。しかし、こうして依頼があったからこそ、司は此処にいる。


「おーい。電話もらったモノだがー。」


「おお、よく来てくだすった。さあさあ、中へ。ずいぶんお若いですな?」


興奮気味の老人が出迎えてくれた。中に入ると、明らかに司のことを疑っている、夫婦の視線が。


「こうも睨まれると、やりにくいんだけど…。」


「親父が呼んだだけで、俺は、霊媒師とかそういうのは、一切信じてないからな。それに、年上には敬語を使って貰おうか。君は、まだ子供だろう?」


「コラッ!何ということを…。」


「あー、いいよいいよ。やっぱりそう見えるよねぇ。でも、仕事は仕事だから。化け物を見たってのは、どいつだ?」


司はみんなの顔を見渡す。そして、憔悴しきった顔のガキに目を止める。


「どう考えても、お前だよな…。おい、名前は?」


「ケイタ…。」


「よっしゃ、ケイタ。化け物の特徴を教えてくれ。見た目とか、何をしたとか…。」


「もうやめてよっ!」


「あ?」


ケイタは耳をふさいで自分の世界に閉じこもる。昨日の恐怖が、今になってトラウマになってしまったらしい。


「もういいよ…。昨日のは、見間違いなんだよ…。何もなかったんだよ…。」


メソメソと泣き始めるケイタに、司の苛立ちが募る。


「ふざけんなよ、テメエ…。」


「ヒイッ!?」


ケイタの頭をつかみ、目を見つめる司。


「ちょっと、何してるの!?」


「このガキ!」


「黙ってな。」


夫婦がごちゃごちゃ言うのを、睨み付けて制する司。


「ケイタ、お前が見たのはな、妖怪ってやつだ。」


「妖怪?」


「妖怪は、時に人を襲う。お前がこうして泣いてる間にも、誰かが襲われてるかもしれない。俺は、そういう人間を救うために来た。止まってる暇なんかねえんだ!」


真剣な表情。司の過去に何があったか、ケイタは知る由もないが、その覚悟だけは伝わったようだ。


「大丈夫。俺が、絶対にお前を守る。そのためにも、教えてくれ。頼む。」


深々と頭を下げる司。誰も何も言えなかった。沈黙を破ったのは、ケイタだった。


「アイツは…黒くて、小さいのがたくさんいて…目が赤くて…。分かるのは、これくらい。あと、何故か部屋に入ってこれなかった。」


「部屋に?どの部屋だ?」


「こちらです。」


じいさんに案内された先は、何の変哲もない座敷。普通の人にとっては、だが。


「ほう…。じいさん、あんた、妖怪の事知ってたな?」


「はい。この土地に、古くから伝わる言い伝えがありましてな。一応、対処はしとったのですが…。」


「おい、どういう事だよ。俺は何も聞いてないぞ!」


父親がわめく。それもそのはず、この家に生まれてから1度も、そんな話は聞いたことがないのだから。


「すまん。しばらくは妖怪が出とらんかったから、いらん心配をかけたくなくてな。この部屋には、結界が張ってあるんじゃ。」


「だが、相当古いもんだ。次は耐えられないだろうな。」


部屋を見渡しながら、司が呟く。


「ヤツはしつこい。今日にもまた来るだろうよ。」


「お兄さん、アイツが何か分かったの?」


ケイタが、驚いた顔で訪ねる。


「俺は、頭がいいんだ。人生経験豊富だからな。」


「フフッ、自分で言うの?」


ケイタに笑顔が戻った。さっきまでの悲壮な顔とは大違いの、年相応の笑顔だ。


「何なんだよ…。もう訳わかんねえよ…。」


へたりこむケイタの両親。


「安心しなよ、夜にはもう、全てが終わってる。」









「ヤツらの正体は、油取りだ。」


夜になり、司はあの部屋にみんなを集めた。


「油取り?」


「人間、特に子供をさらう妖怪だ。1度狙った獲物に対して、執着心がすごい。今日もまた…ん?」


司の顔が殺気に満ちる。さっきまでの柔和な笑顔は吹き飛んで。


「来やがった!」


ガタガタガタ!


窓に張り付く黒い影。卵形の胴体に手足と目玉のみがくっついた、シンプルな構造。それゆえに、恐怖をかき立てる。


「うわぁっ!」


「キャアッ!」


「怖いよ…。助けて…。」


3人はへたりこんで身を寄せ合う。


ついに結界が壊れ、窓が破壊された。


「うわああ!もうダメだ…!」


1体が、ケイタめがけて飛びかかる。その刹那、鋭い蹴りが、油取りの顔面にクリーンヒットした。


「ゴキャッ!?」


ピクリとも動かない油取り。周りの油取りも、何が起きたのか分からない。それは、ケイタたちも一緒だった。


「妖怪を素手で…。あなた様は、一体…?」


心底驚いた顔の、じいさん。司は、ニヤッと笑ってこう言った。


「俺は司。人であり神!最強の調伏師だ!見せてやるよ、俺の戦いを!」



ジリジリと油取りとの距離を詰めていく。仲間を1人やられたせいか、逃げ腰だ。家の外に追いやられたとき、司に逃がす気がないと悟ったのか、一斉に飛びかかってきた。


「テヤッ!ソイヤッ!ハアアアッ!」


上段下段中段蹴りを使いこなし、的確にダメージを与えていく。1体1体はそう強くない。こんなことが出来るのも、神になったおかげだ。神になった影響は、体にも出ている。それがこれ、身体能力の向上だ。付喪神を使わなくても、十分に渡り合える。


「フンッ!」


ブレイクダンスの要領で、一気に蹴散らす。数も半分に減ってきた。


「こりゃあ、楽に終わりそうだな。んお!?」


「グギギギギ!!」


怒り狂った油取りが、1体の巨大な油取りに合体していく。

こいつの厄介なところは、合体すると何倍にも強くなるところだ。


「遊びはここまでってか?」


「お兄さん、頑張れ!」


「あ、バカ!何出てきてんだ!」


いつのまにか家族で外に出てきていた。何考えてんだ!


声につられて油取りが、そっちに向かう。


「うわぁっ!」


「クソがっ!」


後ろから、延髄と思われる部分に蹴りをいれる。しかし、体が柔らかいゴムみたいになって、ダメージを吸収してしまった。そのまま司の足をつかみ、地面に叩きつけた。


「グハッ!いってぇ…。」


「ごめんなさい…。僕のせいで…。ヒッ。」


慌てて駆け寄るケイタ。

思わず息を呑んでしまった。目の前に般若がいたからだ。


「あーもー、ブチギレたわ。ちょっくら本気出しますか。」


司は、懐からガントレットを取りだし、腕に装着した。

カードリーダーに調伏師専用カードを装填すると、電子音と共に

起動した。


『付喪神を選んでください』


司は無言でタッチパネルを操作する。


『シオリ』


「召喚。」


司の横に、魔法陣が出現し、光の粒子が集まって1人の女の子を造り上げた。


「やっと呼んでくれたんですか?」


紫織は膨れっ面だ。


「わりい。頼めるか?」


「分かりましたよー。」


ふてくされながらも、紫織は本に姿を変える。


「フッ!」


司は、力を込めると同時に光に包まれ、体の大きな、髪は銀色の青年へと成長した。


「お、お兄さん?なの?」


「俺は神だからな。これくらい余裕だ。」


「へえっ!?」


「さあて、滅ぼすか。」


呆気に取られる一同を尻目に、司は本をめくる。


「圧!」


途端に油取りが膝から崩れ落ちた。まるで、自らの重みに耐えきれなくなったかのように。


「こんな魔法も弾き返せねえのか。つまんねぇ。いいや、消えろ。」


とびっきり冷酷な死刑宣告だった。


「滅!」


次の瞬間、油取りは跡形もなく破裂した。あっけなく、風船を割るかのように。


「依頼完了…。ってことで、いいか?」


みんなうなずくしかなかった。







翌日_


「もう行っちゃうの?」


「コラッ!神様に対して、そんな言葉…」


「いいよ。ってか、昨日まで俺の事信じてなかったくせにー。」


「す、すいませんでした…。あんなすごい人だとは、いや、神様だとは…。」


「まあ許してやるよ。ちなみに、当たり前だが俺のほうが年上だ。そこんとこよろしく。」


両親共にペコペコしまくり。ちょっと優越感に浸る司だった。


「おかしいとは思ったんです。調伏師にしては、やけに若く見えましたからな。」


「あんたもよく知ってたな?調伏師のこと。」


「昔から、この土地ではお世話になっとったようですからな。ワシも、何度か話には聞いとりましたし、その縁で、お電話させていただきました。」


「ねえねえ…。」


ケイタが、寂しそうな顔で司の袖を引っ張る。


「どした?」


「また会える?」


「さあな。人間の一生は短い。チャンスは少ないだろうな。」


あからさまにショボンとするケイタ。司は、髪の毛をワシワシして、


「依頼があったら、いつでも電話してこい。何なら指名でもしてくれ。すぐに来てやるよ。」


ケイタの顔がパアッと明るくなる。


「じゃあな!ケイタ!また会おーぜ!」


司は、空に向かって飛んでいった。


「バイバーイ!」


また会えるよね!ケイタは、そう思いながら、いつまでも手を振るのだった。






これが守られるかどうか…まだ考えてません。皆さんはどう思います?見たいですか、この家族のアフターストーリー?

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