アイアムア神~司とゆかいな仲間たち~
やっぱり我慢できずに投稿してしまいました。次こそは、ホントのホントに受験明けにします。応援よろしくお願いします。
いつかどこかで、誰かが言った。この世のモノには、魂が宿ると。
またいつかどこかで、誰かが言った。人の姿を取り、人と共存するモノがいると。
いつかどこかで、皆が言った。その名を、付喪神と。
「ハアッ!テヤアッ!!」
「グギイィィイ!!」
巨大なムカデの化け物。人の住む街からそう遠くない、この山に住む妖怪だ。昔と違い、今は夜でも街に人が多い。ここで食い止めないと、甚大な被害が出る。
「火拳ォ!!」
「グギャギァアァ…ァ…ア」
火を纏わせた拳を、腹に叩き込まれて息絶えたムカデ。
倒した男は、ムカデに近づきカードをかざす。
ムカデの死骸は、分解されてカードに吸い込まれた。それこそ跡形もなく。
「ふぅ。討伐完了。お疲れ、紫織。」
ボフンッ!
懐から本が飛び出し、煙と共に人の姿となった。
「お疲れさまです、司さん。今日のは、ちょっと手強かったですね。」
紫色の目に、紫色の髪の少女。着物が似合う大和撫子だ。
片や男は、神御衣、平安時代の水干をイメージしてもらうと、分かりやすいだろうか、そんな服を着ている、銀髪の中性的な美少年。
「何分デカイからな。見た目も気持ち悪いし。さて回収したし、帰るか。」
「はい。」
「浮遊。」
二人の体は宙に浮き、そのまま夜空に吸い込まれていった。
「たっだいま~。」
「お帰りなさいませ、依頼は達成できましたか?」
「当然、ちゃんと回収してきたぜ。ほれ。」
事務のお姉さんに、カードを渡す。
「確かに。しっかし、司さんもスゴいですよねー。」
「何が?」
「だって、人間社会の発展を見越して、こんなカード作っちゃうんですもん。近い将来、人間は霊的なものを信じなくなるとか、調伏師の育成機関を作った方がいいとか、今までに誰も思い付いてませんでしたからね。今までの調伏師の技術の伝承は、全部口伝でしたし、なんちゃって調伏師も、一部にはいましたし。先見の明ありすぎです、ヤバイです。」
調伏師専用多機能型データカード。司の発明品だ。全国の調伏師に配られている。
お姉さんは、興奮した様子で続ける。
「このカードだって、調伏師のランクを表すばかりか、倒した妖怪の体をエネルギーに分解して吸収、日本各地の関連施設へのパスカードにもなる、超万能アイテムじゃないですか。元人間なのに、こんなことできちゃうなんて、やっぱりスゴいです。」
「まあ、それほどでも…あるかな?」
司はまんざらでもなさそうに、はにかむ。
「ククリ~。この書類お願い。あら、司さん。帰ってきてたんですね。」
「アマテラス。無事、帰って参りました。」
書類を持ってきた、目の下にクマができた神。彼女こそ、日本の神のトップ、天照大神だ。このクマは、もちろん仕事…ではなく、
「また徹夜でゲームか?」
「あはは、イベント期間だったので…。」
今の時代は、アマテラスにとって、魅力的すぎる時代だ。科学技術が発展し、スマホやゲーム機が進化したため、娯楽が増えたのだ。そんなものを、アマテラスが放っておくわけがなく、何台ものゲーム専用スマホや、パソコンテレビを抱え込み、日夜ゲームに励んでいる。
「俺が人間だった頃は、こんなのなかったんだけど。お前がやってたゲームは、タカミムスヒが作ってたんだろ?」
高御産巣日神。物作りと想像力の神だ。とにかく発明好きな神で、姿は見せないくせに、発明品がいつのまにか神の間に出回っている。俺も顔は知らない。
「まあ、あれから200年近く経ちましたしねー。最近は、人間の技術が進化したことに、危機感を抱いているようですね。ゲーム機のサンプルを寄越せとうるさいです。」
「ゲームの話ばかりしてないで、ちゃんと他の書類も出してくださいよ。まだまだ溜まってるんですからね。」
「ククリの意地悪~。私一番偉いんだよ?」
「あなたの給料はどこから?」
「うっ、じ、事務から…。」
「じゃあ、事務長官である私のさじ加減ですよね?」
「はい…。仕事します…。ではまた、司さん…。」
「頑張ってこいよ…。」
トボトボと歩く姿には、威厳など欠片もなかった。
「働かざる者食うべからずです。人間に働くように言っておいて、神が働かないなんて、許されないことです。」
「正しいこと言ってるのに、何となく悲しくなるよね、あれ見てると。」
「気の持ちようです。」
「そう…。じゃあ、俺は皆のところに戻るわ。何かあったら、またよろしく。」
「お疲れさまでーす。」
「ただいま。」
「おお、主人よ、帰ったか!見てくれ、主人のために手作りしたのだぞ!」
チャイナドレスみたいな、足に深いスリットの入った服を着て、その上からエプロンを重ねるコーデで、俺を出迎えてくれたのは、ウチのお色気担当、刀華だ。ムチムチの体は、正直、下半身に熱がこもる。
「お、旨そうなシチュー。刀華が作ったのか?」
「ふっふーん。もちろ…。」
「違うじゃろ、妾が作ったのじゃ。」
「ちょっ、時乃!」
「お主が作ったものは、そこの炭化した黒色のナニカじゃろ。嘘をつくでない。」
巫女服姿の小学生。快活ながらも、風格のある出で立ち。時乃の指差す先には、フライパンの上で無惨に火炙りに処された、魚とも肉とも分からぬ、黒こげの物体が。
「こりゃあ…。どうしたらこんなことに…。」
「まあ、刀華の家事下手は、今に始まったことじゃありませんから。」
紫織も苦笑ぎみだ。
「その点、妾は役に立っておると言えような?こんな失敗は絶対にせぬ。」
時乃は、ない胸を張る。
「ううえ…。」
声にならない呻きをあげ、落ち込む刀華。
「元気出してください~。私も下手ですから~。一緒に練習しましょう~!」
「うええ~!玻璃~!」
刀華をあやすのは、お母さん…じゃなかった、ふわふわオーラ全開の玻璃だ。眼鏡をかけた、タレ目のお姉さん。童貞を殺すと言われる、ブラウスとハイウエストスカートの組合わせ。無論彼女に、そんな気はないのだが。というのも彼女は、優しい、とにかく優しい。それでいて芯が通った部分があるのだ。あまり見せないけれど。
「そんなことより、早よう食事にするのじゃ。せっかく作ったのに、冷めてしもうてはかなわん。」
「そうだな、いただくとしますか。」
温かい食事と、仲間たちとの楽しいひととき。高天原での日々は、こうして過ぎていくのだった。




