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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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玻璃の一日

センターが終わった記念に、3つの作品を1話ずつ更新します。これと、ラブコメ作品の『行き遅れと死にたがりの恋愛黙示録(アポカリプス)』、サスペンス&バトルの『民間委託型犯罪撲滅捜査官、略してトクソー』の3つです。お暇があれば、どうぞ。

「玄瑞様~。元気にしてますか~。私は、元気ですよぉ~。」


私、玻璃は、天を見上げてつぶやきます。アマテラス様に聞きました。死んだ魂は天に昇り、世界中に散って、新たな魂の一部となるのだそうです。どうかこの思いが、玄瑞様に届きますように。


「玄瑞様~。あなたがいなくなってから~、どうなることかと思いましたが~、何とかやっています~。司様は、いい人ですよぉ~。」


そうなのです。司様は、とっても優しい人なのです。玄瑞様の頼みを引き受けてくれましたし、私にもよくしてくれます。でも、私は…。


「真名契約…どうしましょう~。」


「真名契約が、どうしたって?」


「あ、司様~。」


背後に、新たな玻璃の主人、司が立っていた。


「したいの?真名契約。」


神になられた司様。こんなすごい人の所有物になれるなんて、光栄の極みです。


「でも~、玄瑞様を裏切ることになるのではと~。申し訳ありません~。ワガママ言ってしまって~。」


「俺も強制はしないよ。真名契約じゃなくても、俺たちは繋がってる。よく考えたらいいさ。」


うう…。司様とは、もっと強い絆で結ばれたい。でもそれは、玄瑞様を裏切ることになります。真名契約は、一種の結婚のようなもの。主が死んだからと、誰でも彼でも、結んでいいものではないのです。真名を明かすことは、主人を信頼し、身を預けること。司様はその資格があるお方…。でも、足軽女だと思われたくない…。


「あー、悩んでるとこ悪いんだけど…。全部聞こえてるぞ?心の声。足軽じゃなくて、尻軽ね?」


ボンッ!!


顔が真っ赤になっていくのが、はっきり分かります。こんな、は、辱しめは、受けたことがありません。今すぐ、頸動脈を掻き切ってしまいたい。


「あ、あのあの~!今のは、なかったことに~!」


「顔が真っ赤だ…。ごめんな、力のコントロールが上手く出来なくてよ。慣れれば、気にしなくてよくなるらしいが。勝手に耳に入ってきちゃうんだよ、神ってのは嫌だね?」


ああ、心の声が駄々漏れだなんて!しかも、言葉の間違いを指摘されて…。恥ずかしすぎます!大体なんですか、足軽女って!自分でもビックリですよ!


「ハッハッハ、面白いじゃん。そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。」


「うう~。意地悪しないでください~。」


はあ、司様の意地悪。でも、この感じ、懐かしいです。玄瑞様も、若い頃は同じようなことをしてました。年を取ってくると、だんだん収まってきましたが、若い頃はイタズラ、意地悪大好きな、少年のような人でした。やはり二人は似ています。この人ならば、玄瑞様も許してくれるでしょう。よし!


「ごめんごめん、許してくれよー。」


「じゃあ~。真名契約してくれたら~、許してあげます~。」


「え?したくないんじゃなかったの?」


「もう~。女の子に、恥をかかせないでください~。」


プロポーズみたいなものなんですからね。付喪神にとっては。


「私の真名は~、顕世照魔鏡(うつしよしょうまきょう)・天です~。さあ、さあ~!」


「分かった、分かった!これからもよろしく。顕世照魔鏡・天!」


玄瑞様、ありがとうございました。これからは、司様のもとで、一生懸命お仕えします。だから、見ててください。私の、活躍を。


「契約完了。よかったのか?」


「後悔なんて、司様は、させてくれないでしょう?」


いつものフワフワした口調ではなく、ハッキリと言い切る。

少々驚いた司だが、すぐに笑って、


「もちろん。音もあげさせないけどね。」


「それでこそ、私が仕える主。この玻璃、身命を賭して働きます。」


普段からは想像できないほどの、真剣な顔。これが、玻璃の本気、玻璃の覚悟なのであった。

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