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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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私的なバトルは非日常系のなかで

「それでは、契約を結びに行きましょう!善は急げと言いますし!」


興奮しながら、ズンズン廊下を進むアマテラスと、落ち着きのない姉の醜態に呆れるスサノオ。それを微笑ましく眺める俺の三人は、契約を司る神のもとへ向かっていた。


「着きました!ここが、高天原事務課です。早速、ここの主任に会いに行きましょう。」


老若男女、大小様々な神達が、慌ただしく働く横をすり抜け、奥の応接間に入って待つ。


「お待たせしました、天照大神様。」


現れたのは、スーツを着た柔らかい笑顔の女性。眼鏡をくいっと上げる仕草は、仕事の出来る雰囲気と可愛さを同時に醸し出している。


「紹介します、彼女はここの事務主任、菊理媛神(くくりひめのかみ)です。元々は全てを()()()縁結びの神なのですが、それを拡張して契約の神も担ってもらってます。」


「菊理媛神です。よろしくお願いいたします。あなたが、天照大神様がお招きになった人間ですね?お噂はかねがね。早速、専属契約を結ばせていただきますね。」


「専属契約ってのは、どうやってやるんだ?」


「ではまず、私と手を繋いでください。天照大神様も。」


向かい合った状態の俺とアマテラスの間に、菊理媛神が入って、3人1列で手を繋ぐ。


「ではいきます。我、菊理媛神の名において、汝、天地 司と、汝、天照大神。双方の間に永久不滅の契りを結ばん。この契りの壊れし時、世界の破滅を覚悟せよ。」


菊理媛神が文言を述べる。


神結(かみゆ)い!」


俺の中に霊力が流れ込んでくる。まるで魂同士を繋がれているかのような、妙な感覚。


「はいっ、これで完了です。魂に刻み込まれた契約は、いかなるときにも有効です。どれだけ心が嫌がっていようと、命令は絶対遵守。そこだけは気を付けてくださいね。」


そこら辺は真名契約と一緒か。神様の霊力を使ってる分、神結いの方が強力かもしれない。多分しないとは思うけど、命令ってのが怖いな。俺は、嫌いなことはとことんしない主義だし。


「心配せずとも、あなたに酷な命令をする気は、毛頭ありませんよ。こちらから願って契約してもらっているのですからね。それ相応の態度というものがありますし。」


そうだった、神様補正で筒抜けなんだった。便利だけど怖いよなぁ、変なこと言えない。考えることもできない。嘘なんてもっての外、グロ系も18禁も、黒歴史的なのもダメ。思考の自由を制限されるのはキツい。


「別に私は気にしていませんよ?聞こえてくるって言っても、ラジオとかと、そう変わりはありませんからねぇ。聞き流すこともできますよ。そんなくだらない悩みより、早く皆さんを紹介してくださいよ!楽しみなんです、女子トークするの!」


下らんって。バッサリいくなよ。そんで女子トークってのは、ああ、紫織達のことね。さっきからずーっと原型のままで、一言も喋ってなかったから忘れてた。耳を澄ますと、寝息が聞こえるし。こいつら、面倒になって寝てやがったな。


「おーい、起きろー。俺の契約主様からの命令だぜ。人間の姿になれよー。」


全身を揺らして、振動を与えて起こす。10秒ぐらいでみんなの体が光始める。


パアアッ


ボフボフンッ


「ふああ~。何でしゅか、司しゃん?」


「はあ、主人よ、いくらなんでも急に起こされては…。」


「う~ん、まだ眠たいのじゃあ…。」


「…。すぅ~…。はっ!すぅ~…。」


「ほら、全員起きんか!アマテラスが、お前らとお話ししたいってよ!」


「うえっ!?急に呼び捨て!?私、神様なんですけど!?」


「はいはい。そんなことより、起きんかい!」


後ろでアマテラスがギャーギャー言ってるが、俺には何も聞こえない。ようやく目を覚ました皆に、俺はこれまでの経緯を説明する。ブーイングが出るかと思ったが、そんなことは無かった。皆、俺の決定を尊重してくれるらしい。皆に感謝だな。


「そんで、こいつが日本の神のトップ(笑)の天照大神だ。皆、曲がりなりにも神だから、一応挨拶するように。」


「契約破棄していい?ねえ、破棄していいよね?」


「ムリですよ、魂に刻んじゃいましたし。死ぬまではこのままですねぇ。面白そうだしいいんじゃないですか?」


「覚えておきなさいよ、ククリ…。」


ニヤニヤしているククリと、ジト目のアマテラス。呆れた顔でため息をつくスサノオ。色んな顔が見れて面白い。やっぱり、神様も人間も同じじゃん、感情豊かなところは。もちろん、体の仕組みは全然違う。生活様式にも違いはあるだろうさ。だけども、根本的なところは一緒なんじゃないかなあ。最近、そう強く思うようになってきた。



「司さん?元はといえば、あなたのせいなんですからね!私、スッゴイ偉いのに!」


「うわー、自分で偉いって言うとか、さぶいわー。恥ずかしすぎるわ、黒歴史だわー。」


「何ですって!?…あら?」



ギイイイイッ


扉が開く音がして、そちらを振り返ると高さ3メートルくらいの大男が立っていた。


「菊理媛神よ、書類を持ってきたぞ。天照大神様もいらっしゃったのですか。ご機嫌麗しゅう。」


「はい、ありがとう、建御名方神(たけみなかたのかみ)。後は、こちらで受理しておくね。」


「うむ、頼んだ。して天照大神様、そちらの人間は誰ですかな?」


「ああ、彼は天地 司といいましてね。この度、ウチの専属調伏師になってくれた、すごく強い人間なのですよ。」


それを聞いたタケミナカタは、俺にバカにしたような笑みを向けた。ニヤニヤした、俺をなめきった顔。


「おい、何がおかしいんだよ?」


怒気を含んだ声で訪ねる。てめえも神なら聞こえてんだろ、答え次第じゃ容赦しねえぞ!ってな。


「いやなに、貴様のような華奢な人間が専属調伏師とはな、すぐに契約のし直しをせねばならぬのではと、天照大神様を心配しただけだ。」


「俺が、すぐに怪異に殺られるって言いてえのか!」


「フン、まあそうだな。単純に強さだけなら、俺の方が何倍も強い。だが、俺達神が、現世で戦うとついやり過ぎてしまう。下手すれば、人間を滅ぼしてしまうかもしれぬ。だからこそ、貴様ら人間を仕方なく雇っておるのだ。それにしても、もう少しマシなのがいただろう。」


「何だと、テメエ!!」


「お止めなさいッ!二人とも、私の前で醜い争いを始める気ですかッ!」


アマテラスの叱責がとぶ。


「だったら…」


「!?」


「決闘ってのはどうだよ?」


怒りで、霊力のコントロールが出来ていない。膨大な量を垂れ流してしまっている。それでも全く衰える気配のない霊力に、アマテラスは身震いする。


「おい、聞いてんのか?こいつと俺とで、決闘させろってんだ。それなら文句ねえだろ。」


「やれやれ、俺は構いませんが、天照大神様はいかがですかな?」


タケミナカタは、気づいていないのだろうか?この恐ろしい霊力に。しかもこれは、まだまだ成長途上の霊力、だと言うのに。


「どうなんだよ、アマテラス!」


両者は既に合意している。後は私の許可を待つだけ。ここで私が止めても、遺恨が残るだけであろう。司さんには、滞りなく任務を遂行してほしい。そのためには、他の神の協力と信頼が必要不可欠なのだ。ここで力を示しておくのもいいかもしれない。


「分かりました、二人の決闘を認めましょう。詳細は後日、追って知らせます。」


「だそうだ。何なら、今から逃げ出す準備でもしておいたらどうだ?」


「言ってろ…!首を洗って待っとけ、必ずブッ倒してやる…!」


アマテラスは、早速の修羅場にため息をつき、自らが太陽神でありながら、天を恨むのであった。

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