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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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アマテラスのいうことを聞きなさい!

体育祭で日焼けがヤバい。めちゃくちゃ痛い。

その名の通り、天空に広がる高天原。俺達は、その廊下、と呼ばれている通りを歩いていた。


「ああ、遠い…。さっきからキロ単位で歩いてるのに…。大体、この通り広すぎだろ、見た目にはそんなことなかったのに。ってか、こんなのが今までに、全く発見されてないっておかしくない?」


俺の疑問に、スサノオが笑って答える。


「はっはっは、神の魔法と科学の力をなめんなよ?浮遊、隠形、空間歪曲!こんぐらいお手のものさ。」


「余計なことしやがって…。」


本心が出ちまう。疲れたら、隠す気力も起きない。何より、この疲労の原因は、廊下が長いだけではない。紫織達もその原因の一つだ。途中までは一緒に歩いていたが、


「疲れたー。」


「おぶってー。」


「着いたら教えてー。」


とか何とか言って原型に戻って、今は、懐に紫織、腰に刀華を提げ、手には時乃を持ち、背中には玻璃を背負い、フラフラになりながら歩いている。いくらなんでも、本、刀、天秤、巨大な鏡、総重量がヤバそうな物を持って歩くのは辛い。


「まだ着かねえのかよ…。」


「ほれ、入り口が見えてきたぜ。お疲れさん。こん中に俺のねーちゃん、天照大神がいる。おーい、入るぞ!」


高天原は全てがビッグサイズなのだろうか、門もデカけりゃ、部屋の入り口もデカい。天照大神って、実は巨人なのではと思うぐらいに、とんでもなく縦にも横にもデカい。その場合、巨人ではなく巨神なのだが。


ガチャリ


スサノオが、何でこんなの開けられるんだ、って思うぐらいにデカい扉を開けると、中は真っ暗な空間が広がっていた。そして部屋の端っこに、青白い光が輝いていた。


「このぉぉぉぉ!紅玉出ねぇ!鱗なんざ、取り飽きたんだよぉぉ!」


怒気を含んだ女性の声。そして、カチカチとボタンを押す音。


「おっ、乱入か?返り討ちだ!」


先程の青白い光は、神々しい神の光ではなく、ゲーム機の光だった。

スサノオが、部屋の電気をつける。


パチッ


「ようし、5分針!あれッ!?いつの間に、部屋の電気が…。はっ!」


ようやく俺達に気づく。俺達と目を合わせないようにしながら、部屋の中央の台座に戻っていく。


「よく来ましたね、人間。私は、日本の総氏神、天照大神と…。」


「いやいや、何無かったことにしようとしてんの。説明しろよ、説明。」


今のを無かったことにとか、どう考えてもできっこない。あんな乱暴な言葉で、しかも部屋の端で真っ暗な中、ゲームとか。コイツはまるで…。


「引きこもりのゲーマー。ねーちゃんの正体だよ。」


「ちょっ!?スサノオ!」


慌てた様子で、弟の口を塞ごうとするも、時すでに遅し。


「いいじゃん、もう知れたことだろ?すまねえな、司。さすがに、何千、何万年と生きてりゃ、神生(じんせい)がつまらなくなるんだ。神にも楽しむ権利はある。見逃してやってくれな?」


「見逃すも何も…。とりあえず、暗い中でだけはやめようぜ。目が悪くなっちまう。それさえ守れば、ゲームも悪いもんじゃ…。ってあれ?」


天照は、うつむいて黒いオーラを出している。


「知られてしまった…。弟しか知らない、私の秘密を!かくなる上はッ!」


ギギギギィィ


突然、扉が閉まり始めた。


「おい!何してんだ!」


「あなたは、ここから出ることは出来ません。」


クソッ!走り出すが、間に合わない。俺の目の前で、残酷にも扉は閉まった。


「おい!ねーちゃん、いくら何でもやりすぎだ!司を監禁する気かよ!」


スサノオが激昂する。


当の天照は、至って真面目な顔だ。


「確かに、今のは衝動的な行動でした。それは謝ります。しかし、どちらにせよ、あなたにはここから出ていかれては困るのです。私のお願いを聞いてもらうまでは。」


はあ!?監禁しといて、頼みを聞けだぁ!?図々しいにも程があるぜ!


「おこがましいのは、重々承知しています。ですが、世界のため、地上の民達のため、どうかお願い出来ませんか?」


おいおい、こいつホントに、さっきのゲーマーと同一人物かよ?チッ、そんな顔すんなよ、怒れなくなっちまう。やっぱり、日本を統べる神は違うねぇ。


「話だけなら聞いてやる。ただし、無茶な願いは聞けねーぞ。」


「ありがとうございます!早速ですが、あなたには、ここの専属調伏師になって頂きたいのです。」


「専属?何か他のと違うのか?」


「普通、調伏師というのは2種類あります。1つは、各地を転々として怪異を収めたり、調伏師の総本山で、後進の指導に当たる者。もう1つは、その土地ごとに1人ずつ配属される、土地専任の者。これらの者は、我々神とも密接な関係にあり、特に後者は、配属されるときに、その土地の土地神に認められないと、配属を拒否されるなど、神が主導権を握っていることが、多いですね。」


「で?その主導権を握られている立場に、俺をならせるっての?」


「いいえ、ここからが重要なところです。その土地のことに関しては、土地神に一任していますが、ここの土地神に当たるのは、私です。私は、あなたの実力をここから見ていました。あなたの実力は、配属を拒否するなどとんでもなく、また自由であることで真価を発揮すると、そう判断しました。ですのであなたには、これからも旅を続けてもらい、異変があれば我々に報告し、招集がかかれば、ここに来ていただこうと思います。それ以外は、何をしても構いません。」


へえー、意外と好条件かも。何より、これからも旅が出来るのは嬉しいね。最近、楽しいんだよね、いろんな奴らと会えるのが。それでいて、玄瑞と同じ調伏師になれる。玄瑞は強かった。それに、カッコいいって思ったんだよな。あんな人間になりてぇって思ったんだよな。その第一歩に、調伏師になるのもアリかもしれない。よし!


「しゃーねーな。分かったよ、調伏師になってやらぁ。ちゃんと、今の条件守れよ?」


「ありがとうございます!司さんのような、実力ある人がいて良かった!」


おおい、何だよ照れるじゃん。神ッつっても、そう人間と変わらないんだな。何だか、親近感湧くねぇ。面白いことになってきたなぁ!


その時はそう考えていた。誰もが本気で。あの事件までは。司のタイムリミットは、刻々と近づいているのだった。

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