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最強の眷属たちに囲まれて、まったりダンジョン運営してます~裏山ダンジョン、ときどき攻略者~  作者: Jasmin


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第69話 

三日が経った。

バベルのオープンに向け、眷属たちはそれぞれの担当層に出払っていて大忙しだ。

静かなリビングでは猫又が足元のクッションで毛玉のように丸くなっている。

こいつに仕事をさせるのは皆諦めつつある。


スマホの画面で、ダンジョンボードのアプリを起動する。


『裏山ダンジョン、混みすぎだろw』

『予約戦争、勝ち取った!』

『明日の宿泊取れた人いる?』

『湯治エリア、もう聖地』


皆がバベルの準備を進めている間に、俺はダンジョンの改善要望を募ることにした。

先日の配信からダンジョンマスターであることを隠す気はないので、堂々と募集する。


【公式】裏山ダンジョン運営に要望ある人、書いて


本人証明代わりに、猫又と、バベルの最上階からの写真を投稿する。

あっという間に数十件の反応があった。


『パンは絶品。けど食堂のメニュー寂しい!』

『工房、早く開けてくれ。装備のメンテがしたい。』

『物資補給のラインナップ、もうちょい種類増やせる?』

『海洋エリア、何ができるんだ?泳いでみたいんだけど死なない?』

『温泉は攻略者じゃない家族も連れてっていい?』


「海洋エリアはモンスターは居ないけど、普通に溺れれば死ぬから気を付けろよ。温泉は家族連れOKだ。森とかには行くなよ。」


『本当に返事来て草』

『ダンジョンマスターなのに距離近すぎだろ』

『会いにいけるマスター』


わいわいとやかましい反応を横目に、適当に返信を付けていく。


「……こりゃ、人手が完全に足りないな。」


呟きに、猫又が一瞬だけ薄目を開けて、また閉じた。


「眷属、そろそろ召喚するか。」


合計800万、ユキやリンドヴルムクラスを1人と、中位クラスを1人といったところで考えている。

今回はみんな忙しそうなので、ダンジョンボードのグループに、後で紹介すると簡単に連絡した。


工房や食堂を任せられる奴が来てくれれば御の字だが、うまく行くかは運次第だな。


まずは中位眷属から。


「幽世の導に従い来たれ異郷の住人」


自分そのものであるダンジョンから魔力が吸い上げられる奇妙な感覚とともに、

床に紋様が浮かぶ。光が紋様の中心で収束していく。



光が収まったころ、そこには黒い燕尾服の男が立っていた。

細身、すらりと長い手足、シルクハット。紳士然とした、完璧な身嗜みである。


ただ、その表情は、げっそりと疲れ果てていた。


「……あなたが、わたくしを呼び出された方ですね……?」


おどおどとした敬語。なんだか調子の狂うやつだ。


「ああ、鷹峰遥だ。ダンジョンマスターをやっていて、力を貸してほしくて呼んだ。分かるか?」


「ダンジョンマスター、ですか。ダンジョンは知っていますが、そのような存在は初耳ですねぇ。申し遅れました。わたくしは……契約の悪魔のメフィスです。」


メフィスは胃のあたりを軽く押さえて、深く息を吐いた。シルクハットを片手で持ち上げて、丁寧にお辞儀をする。


「なぁ、お前、大丈夫か?」


「いえ、大丈夫です……。わたくし、すぐに胃が痛くなってしまうのですよ。」


「言いにくかったらあれだが、病気か?」


「あぁ、いえ。緊張とか、人見知りとか、もろもろです……。あぁ、胃が痛い。」


だ、大丈夫か、こいつ。これでも結構な貯蓄を吸い取っているんだが。


「そうか、大丈夫ならいいんだが。それで、契約の悪魔?だったか?どんなことが得意か教えてほしい。」


「契約魔術が私の本領でして……結ばれた契約は、私が存在している限り、必ず履行されます。契約を踏み倒そうとした場合、対象の生気が徐々に失われ、悪夢、幻覚等にさいなまれ、履行されるまで続くと本能的に理解させる力です……。」


「なるほど。」


良い能力、そしてえげつない能力だと思った。さすがは悪魔といったところか。


「メフィス、後で改めて頼みたいことがある。もう1人召喚するから、ちょっと待っててくれるか。」


「……はい。もう1人ですか、知らない方と会うと具合が悪くなるのですが、しょうがないですね……。」


メフィスが、部屋の隅に下がる。立ち姿はピシッと決まっていて、中身があんなだとは一見思えない。

シルクハットを抱えるようにしている。



「幽世の導に従い来たれ異郷の住人」


呪文に魔力を乗せる。塔の最上階の広間に、紋様が広がる――。先ほどよりも広く、深く、床の隅まで届く勢いだ。

ところが、召喚体が現れる気配はない。


「あれ?」


紋様は静かに、ただ広間に広がっているだけだ。


「失敗、か……?あるのかそんなこと?」


確かに魔力は失われた気配がある。

そのとき、塔の床が、ぐらりと揺れた。


腹の底に響く、低く、長い、うなり声のような音が、下の方から聞こえてくる。

塔そのものが、震えている。海の方から、何かが浮上してくる気配。


塔の南側の窓、その方向だ。

窓に手をついて、外を見下ろす。


雲の隙間から見える、はるか下の海洋エリア。海面が、大きく、大きく、盛り上がっていく。

輪郭が、円から、楕円へ、長い影へ。

水面が割れ、白い飛沫が立ち上がり、深い藍色の何かがゆっくり海上に姿を表した。


果てしなく長い。一向に終端が見えない。

塔の窓ガラスに伝わる低周波の震えが、肌から骨まで届いてくる。


その背中と思しき場所には、巨大な樹木や廃ビルのように見える灰色の塊が生えているようだった。


「……えぇ……。」


てっきりいつも通り、人型の何かが現れて、挨拶して、そんな風に思っていたが。

たしかに、こんなパターンもある、のか……?


メフィスが膝をつきそうな勢いで、胃のあたりを押さえている。


塔の窓ガラスに、左手をついたまま、目を凝らす。

海上に出た「島」と見紛うほどの巨体は、ゆっくりと身を傾けて、こちらに向けて首をもたげたように見えた。


そして、頭の中に声が響いた。

落ち着いた、それでいて温かみのある中世的な声に聞こえた。


――あなたですね。ワタシを呼んだのは――


胸のポケットでスマホが震える。多分他の眷属たちだろう。

眷属が言うことを聞かないケースはこれまでなかったが、万が一アレが暴れるようなら俺には抑えられない。

とりあえず、全員集合だ。


――――

貯金残高:5,475,000円 / ダンジョン蓄積魔力:42

スキル:【剣術】Lv.5 / 【身体強化】Lv.5 / 【戦闘機動】Lv.3 / 【危機感知】Lv.3 / 【状態異常耐性】Lv.2 / 【魔力操作】Lv.2 / 【マナバースト】Lv.3

眷属:ユキ(エルダーエルフ)/ ハヤテ(鷹獣人)/ リンドヴルム(祖竜)/ シノ(九尾)/ 猫又(下位妖獣)/ コムギ(土精)/ メフィス(契約の悪魔)★New! / ???★New!


【ダンジョン構成】

入口 → 温泉街エリア(補給/工房/宿泊/食堂/湯治)→ 森エリア / 火山・大空洞エリア / 海洋エリア&バベルの塔 → 居住エリア(塔最上階)→ コアの小部屋

――――


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― 新着の感想 ―
メフィストフェレスを眷属とするということは、死後に輪廻から外れ魂を取られることに? そして「赤ゑい」の背中は砂ですから、「ザラたん」かしら。
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