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最強の眷属たちに囲まれて、まったりダンジョン運営してます~裏山ダンジョン、ときどき攻略者~  作者: Jasmin


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第27話 伊達メガネ

朝、森エリアに意識を向けると、すでに3組の攻略者が活動していた。平日の午前中でこの人数は、ひと月前なら考えられなかった。

入口近くで装備を整えている2人組の会話が、耳に入ってきた。


「ここ、マジで穴場だって。ポーションが安いし、そのまま訓練もできる。」


「奥の森がちょうどいい難易度なんだよな。初心者でもギリギリ死なない感じの。常連の先輩が教えてくれたんだけどさ。」


口コミで新規が増えて、その新規がまた別の誰かを連れてきてくれる。いい感じだ。


ダンジョンを出て、バスと電車を乗り継いだ。向かう先は攻略者協会の第七支部。今日もひかりと待ち合わせをしている。

協会のロビーに着くと、ひかりはすでにベンチに座っていた。膝の上にノートを広げて、何かを読み込んでいる。


「おはようございます、遥さん!」


顔を上げたひかりが、ぱっと笑った。手元のノートには付箋がびっしり貼られている。


「……すごい気合いだな。」


「当然ですよ! 今日で筆記対策を仕上げて、明日申請しましょう!」


ここ数日、ひかりとの間でランクアップ試験に向けた準備を進めていた。石廊殿には3回潜り、パーティー実績を積んだ。戦闘面は問題ない。問題は筆記だ。


協会の2階にある待合スペースの隅のテーブルを陣取って、ひかりの即席講義が始まった。

今日はなんと伊達メガネのおまけ付きだ。


「じゃあまず、パーティー行動の基本から。遥さん、パーティーでダンジョンに入るとき、最初にやることは?」


「……あー、えーと、装備の確認?」


「それもありますけど、もっと色々あります。パーティーメンバー全員の所持品と状態を相互確認して、役割分担を共有するんです。これ、試験に出ます。」


「マジか。みんな真面目にやってるのか?」


「マジですけど、教科書通りだとそうってだけで、皆最初だけですね。あと、ダンジョン内で他のパーティーとすれ違うときの優先通行ルール、知ってますか?」


「……あるの、そういうの。」


「あります。基本は撤退中のパーティーが優先、奥に向かう方が道を譲ります。これも出ます。」


知らなかった。今まで他のパーティーとすれ違ったことがほとんどないからピンとこないが、ヤバい方を優先するのは言われてみれば合理的なルールだ。


「あと、ダンジョン内で意識不明の攻略者を発見した場合の対応。これ重要です。」


「救急に連絡……?」


「まず安全を確保してから、協会の緊急連絡先に通報です。一般の救急はダンジョン内に入れないので。協会の救護班が出動する仕組みなんですよ。依頼として高位の攻略者が呼ばれることもあります。」


ダンジョン専門の救護班があるのか。そりゃ、一般の救急隊がダンジョンに入ってくるわけがないか。


「次、魔石の取り扱い規定。魔石を未鑑定のまま個人間で売買することは?」


「……え、ダメなのか!?」


「ダメです。協会法第14条で禁止されてます。未鑑定の魔石は品質が保証されないので、必ず協会か認定業者の鑑定を通す必要があるんです。」


「ヤバ……知らなかった。……なぁ、あの駅前の購買所はいいのか?」


「はい、街に出ているような店舗は大丈夫ですよ。遥さん、本当にEランクの範囲ですからね……?」


ひかりは呆れたような、それでいてどこか楽しそうな顔をした。


「すまん。ちゃんと覚えるから。」


「覚えてください! わたしの教え子が落ちたら、わたしの面目丸つぶれですからね!」


「よろしく頼むよ、先生。」


ひかりはわざとらしく伊達メガネをクイクイと上機嫌だ。

その後も講義は続いた。緊急時の退避手順、ダンジョン内での火器使用の制限。どれも学校で基礎訓練を受けていれば常識なのだろうか、俺にとっては初耳のオンパレードだ。


ひかりはノートの付箋を次々めくりながら、要点を簡潔にまとめてくれる。彼女は教えるのが上手い。自分が苦労して覚えた知識を、噛み砕いて伝えてくれる。

1~2時間ほどかけて一通りの範囲を終え、ひかりが用意してきた模擬問題を解いた。


「よし、これなら大丈夫です!」


「先生が優秀だったおかげだな。」


「……え、えへへ。」


ひかりが照れたように笑って、ノートを閉じた。


そのまま1階の受付窓口に向かった。カウンターの向こうに、見覚えのある顔。朝霧さんだ。


「こんにちは。ランクアップ試験の申請をしたいんですが。」


「鷹峰さんに空月さん。いらっしゃいませ。」


朝霧が対応してくれた。端末を操作しながら、俺のデータを確認している。


「パーティー実績が4件、鷹峰さんはソロでの活動実績は記録がないですが……確か協会にはしばらく来ていなかったのですよね。最近の魔石の売却記録や活動歴から、Dランクであれば受験資格は問題なく満たしています。」


「試験日は最短で7日後になりますが、よろしいですか?」


「はい、お願いします。」


「かしこまりました。戦闘試験と筆記試験がありますが、詳細はこちらの資料に記載されています。」


紙の資料を受け取った。戦闘試験は協会が管理するダンジョンの指定階層を制限時間内にクリアする形式。筆記試験は30問の選択式で、合格ラインは8割。


「空月さんも、一緒に受験されますか?」


「はい! お願いします!」


ひかりが隣で元気よく申請した。朝霧さんが2人分の手続きを進めてくれる。


申請書に記入している間、朝霧さんがふと言った。


「鷹峰さん。」


「はい?」


「最近、こちらによくいらしてくださるようになって、嬉しく思います。以前は……少し心配していたんですよ。」


登録だけして消えた攻略者。確かに協会側からすれば、死亡扱いに近い存在だったのかもしれない。


「すみません、色々とバタバタしていて。」


「いえ、活動を再開されたのであれば何よりです。頑張ってくださいね。」


どこか観察するような視線を感じた。


協会を出ると、夕方の空が橙色に染まっていた。


「7日後か。」


「筆記は今日の復習をしっかりやれば大丈夫です。戦闘試験は……遥さんなら余裕ですよね。」


「試験なんて学生ぶりだからな……。こう見えて緊張してる。」


「ふふ、らしくいないですよ! あ、それと。」


ひかりが立ち止まった。


「わたしも、頑張りますから。遥さんだけ受かって、わたしが落ちたら格好つかないですし。」


「ひかりなら大丈夫だろ。」


「えへへ……はい!」


ひかりが拳を握って頷いた。


帰りの電車の中で、ノートを開いた。ひかりの講義で書き殴ったメモを読み返す。


まずは7日後の試験だ。筆記、落ちたらひかりに合わせる顔がない。帰ったら復習しよう。


――――

貯金残高:970,000円 / ダンジョン蓄積魔力:80

スキル:【剣術】Lv.4 / 【身体強化】Lv.3

眷属:ユキ(エルダーエルフ)/ ハヤテ(鷹獣人)

――――

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