表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された【鑑定士】、王国最強の軍師になる 〜見えない才能を切り捨てた者たちの末路〜  作者: 水無月レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/35

第20話 噛み合わない歯車

 王都へ向かう街道は、いつもより静かだった。


 いや、正確には――整いすぎていた。


 整然とした隊列。無駄のない進行。指示も明確で、装備も万全。外から見れば、これ以上ないほど理想的な遠征部隊だ。


 Aランクパーティ《グランツ隊》。


 かつて、レインが所属していた場所。


「……進行速度、予定より三割遅れているな」


 ヴォルフ・グランツが、前方を見据えたまま言った。


「安全第一だ。問題ない」


 ガルドが即座に答える。


「無理に詰めて、損耗を出すよりはな」


 正論だった。

 誰も否定しない。


 だが――。


「索敵範囲が、少し広すぎる」


 後衛の斥候が言う。


「連携が間延びしている気がする」


「問題ない」


 ヴォルフが淡々と返す。


「数値上は、最適だ」


 それ以上、誰も言葉を続けなかった。


 それが、このパーティの今の状態だった。


 判断は正しい。

 数値も合っている。

 規定にも沿っている。


 なのに、噛み合わない。


 ――なぜだ。


 ガルドは、胸の奥に小さな違和感を覚えていた。


 敵が強いわけではない。

 部下が未熟なわけでもない。

 判断ミスも、致命的なものはない。


 それでも、何かが足りない。


「……小休止を入れる」


 ガルドが言った。


 部隊が止まり、警戒態勢に入る。

 いつも通りの動きだ。


 そのときだった。


「――接触!」


 斥候の声が上がる。


 魔物だ。

 数は少ない。

 脅威度も低い。


「前衛、対応」


 ヴォルフが即断する。


 剣が交わり、魔物はあっさりと倒された。


 被害なし。

 完璧。


 だが、全員の動きが終わった直後。


「……疲労値が、想定より高い」


 回復役が眉をひそめる。


「一体しか相手にしていないのに?」


「そうだ。数値がおかしい」


 ヴォルフは、記録板を確認し、沈黙した。


 異常ではない。

 だが、ズレている。


 積み重なる、小さなズレ。


 誰かが言いかけて、やめる。

 誰かが違和感を飲み込む。


 ――口に出す理由が、見つからない。


 なぜなら。


 間違っていないからだ。


 全員が、正しいことしかしていない。


 だからこそ、誰も修正できない。


 ガルドは、無意識に後方を振り返った。


 そこにいるはずの人物は、もういない。


 短い指示。

 最小限の修正。

 「今だ」「違う」「戻れ」。


 数値に出ない、しかし確実だった“調整”。


「……いや」


 ガルドは、首を振った。


 今さらだ。

 切ったのは、自分たちだ。


 部隊は再び進み始める。

 整然と、正しく、静かに。


 それでも、歯車はわずかに軋んでいた。


 その頃。


 街外れの野営地では、レインが地図を畳んでいた。


「次の依頼、断るのか?」


 カイルが聞く。


「ああ」


「珍しいな」


「今は、受けすぎると危険だ」


 カイルは眉を上げる。


「王都の目か?」


「それもある」


 レインは静かに言った。


「評価が先行しすぎている」


 成功が続けば、人は理由を求める。

 理由を求められれば、測られる。


 それを、レインは避けていた。


 判断は、必要な場面でだけ使う。

 そうでなければ、歪む。


 セレスが、遠くからこちらを見ていた。


 彼女は何も言わない。

 だが、その視線は、確かに告げている。


 ――世界が、追いつこうとしている。


 そして同時に。


 追いつけない部分が、壊れ始めていることも。


 噛み合わない歯車は、いつか音を立てる。


 その音が聞こえるのは、

 まだ、少し先の話だ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ