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沖浦数葉の創作メモ -浦島太郎のウラ話-  作者: 広瀬凉太


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第10話 竜宮城へのいざない

 まあ俺も、漫画やライトノベルに出てくるような鈍感系主人公ではないつもりだ。それ以前に主人公じゃないという説もあるが。

 でも、数葉(かずは)の言いたいことはわかった、とは思う。


「要するに、今日の一連の茶番は……」

「……茶番ゆーな」

 いや、茶番だろこれ。もとはといえば、一言ですんだことなんだから。


「水族館……ええと……」

 ああ、自分がこんな言葉を口にする日が来ようとは。

 普通の単語なんだろうけど、当事者となると妙に気恥ずかしい。


「水族館デートのお誘いの、前振りだったと」

 そらしていた視線を戻せば、数葉は静かにうなずいてくれた。

 ああ、よかった。これで外れだったら、黒歴史の上塗り。ここから脱兎のごとく逃げ出して、退部届を書きに行かなきゃならなくなっていた。


「結局、一緒に水族館に行こうの一言ですんでたんじゃ……」

「……女心が、わかってない」

 ……わかるもんか。少し前まで、同世代の女子なんていじめの加害者でしかなかったんだから。


 いや、やっぱり断られるのが怖かったりするのだろうか。

「水族館の話をするために、浦島太郎の話を振って……そのうえ太郎を知らないとか、それをネタにネット小説が書きたいとかいう話まで作って……」

 うちの部は実質俺と数葉の二人なので、妙な噂が流れていたりもするが、今のところデートに行くような仲ではなかったりする。


「しかしその目論見は、道半ばにしてもろくも瓦解して、俺の黒歴史が爆発して大脱線した、と」

 そう指摘すると、数葉は頬を赤く染めて、何度もうなずいた。


 それで、俺から水族館に行こうと言われるのを待っていたか。それとも、水族館の話が出た時に数葉の方から……思い返せば、それは失敗に終わったようだが。


「しかしまあ、特に急いで水族館に行く予定はないけどな」

「……なん……ですって?」

 美少女のくせに妙な顔芸やめろ。


「いや、リュウグウノツカイって、飼育は非常に難しいんだよ」

「……動画とかで、見たことあるけど」

「生きたまま捕まえられて、すぐ水族館に運ばれても数時間展示されるのがやっと。長くても次の日には死んでいる。さっきも言ったろ。深海魚が浅いところで見つかる時点で、ただ事じゃないんだ」

「……じゃあ、水族館は?」

「さすがに学校さぼって水族館に行く訳にはいかないし、放課後に行くには遠すぎる。週末まではリュウグウノツカイが()たないだろう。剥製なら他の水族館でもみたことあるし、急いで人混みに行く必要もないかな、と」

「……むううぅぅ……」

 自分のせいで数葉がこんな顔をしているかと思うと、悪い気もするが……。


「もう一つ、すっごい野暮なこと言っていいか?」

「…………うん」

 何かいつもより間があったな。

 本能的にいやな予感でも感じ取ったか?


「水族館とは、水生生物などの収集・展示そして研究のための施設であって、決してデートスポットとかそういうチャラチャラしたもんじゃない!」

「……………………」

 何でそんな、『デート中のカップルに親でも殺された?』とでも言いたげな顔をしてるんだ。


「……何でそんな、デート中のカップルに故郷の星でも滅ぼされたみたいなことを」

「異星人扱い!?」

 デートに誘おうとしてる相手にかける言葉じゃなくない?


「……かわいそうに。ろくでもない水族館デートしか、したことがないんだな」

「いや、そもそもデートなんかしたことないし……」

 ……今後する予定もなかったんだが……。


 あれ? そんなことを言い出すということは、数葉の方は、経験があったりするんだろうか。

 一瞬そんな考えが頭の片隅をよぎり、心臓が一瞬大きく跳ねた気がした。


 右手で自分の左胸を押さえる。今のは、まさか……。

 俺にこんな、嫉妬心めいたものが存在したとは。正直、自分でも意外なんだが。


「……私もないけど心配するな」

 俺の様子を見て心のうちを読み取ったのか、数葉がそんな言葉を掛けてくる。

「心配するわ!」

 あ、いや……でも高校生カップルなんて、恋愛経験ないもの同士のことも多いだろう。

 二人で色々と試行錯誤していくもんなんだろうな……普通は。


「いや、デート中のカップルに何されたかといわれても、ゆっくり魚を観察してるのを邪魔されたくらいだが」

「……確かに……水槽の前でいちゃついてるカップルとか、よくいる」

「そもそも、アジとイワシの区別もつかんようなバカップル相手に、学術的に貴重な魚を見せたところで何の役にも立たないだろうに」

「……バカップルって、そういうのじゃないと思うな……」

「そんなことがしたければ別に水族館である必要はどこにもないだろ。そこらへんにラ……いや何でもない」

「……ラ、ブ」

「待て地図検索するな!」

 ちょっと暴走しかけたが、今ので頭が冷えた。


「確かにあの水族館の近くにはそういうもんもあるが、行き帰りにちょっと見かけただけで俺とは何の関係もない代物だぞ」

「……ほんとに、行ったことはない?」

「誰と行くんだよ、そんなとこ」

 いや、そこで自分がいる、みたいな顔されても。


「女性恐怖症の発作でラブホテルから救急搬送とか、停学、いや下手すりゃ退学もんだぞ」

「……ラブホのことは、まだいい」

 まだ⁉

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