スネークバイトその2 第一部完
お読みいただきありがとうございます。
こちら一旦25話で第一部完といたしました。
なんと3年もひとつの物語を初めて書き続けることができました。
また思いが動いたらそのときに新たな物語が動くかもしれません。今後本にもしますので、ほしい方はそちらをお求めください。
「世界には色んな生き物が息しているのに、メディアが写すのはいつだってほんの一部の人達、その人達よりも生活の苦しい方や棲家を追われた生き物だっている。私達もひとりひとり心に傷を受けているから、ドロップアウトしたくなった人達にも元気を与えられたらなんてそう思ったの」
サンゴにつづきマンバが話した。
「難しいことばはわからないけど、私の感覚ではさ、生きている人達って確かに卵からかえったんだけどさ、生きてたらさ生きないとならないじゃん。死ぬまではずっと。そういう意味ではみんな可哀想なの」
つづいてコブラが話した。
「マンバちゃんの言ってることは大袈裟かもしれないけれど、人として生きると、んー違うな。日本にいるとこうならないとならない。こうなった方が望ましいみたいな風当たりがあるじゃない。それこそ身近な人と話す時でさえ、気の使いようあるじゃない。食えたらいいやん。じゃあないよね。大概の人って。例えばさ、そりゃ私もお母さんになりたいけどさ、とやかく言われるものじゃないよね。うるせえなと」
「コブラちゃん、口悪いわ」
「あら失敬」
「最も生きている世界が安全じゃないことはわかっているわ。だから傷を抱えてるって言ったでしょ。でも、あなたが旅してるここも決して安全ではないわね。まあ、それでもここには野蛮な輩はいないからやっぱりあちらよりマシかな」
サンゴが話をまとめたことで、リバティは彼女達がそれぞれこちらに来るまでどういうものを知り見てきたのか世界のありようを漠然と感じたのだった。リバティはこう思った。誰かに言われるって、私は誰かに言われたりすることはないわ。それは私がマネキンだから。人は色々な人々の間で生きないとならない。だからなにかを受け取る代わりになにかを返す使命を持っているような気がする。そのツケを重く感じるから息苦しくなる人達もいるのかな。
「ありがとう。皆さんの話を聞いて私も自分の在り方を考えるきっかけになりました」
リバティの返事をきいて3人はにこにこ顔を浮かべた。
「参考になってよかったわ。またステージやるときはぜひ観に来てね!」
「ええ!ぜひ!」
「リバティちゃんは5年後どうなってるんだろうね」
ふとマンバが言い出した。
「5年後ですか?」
「そう、リバティちゃんマネキンだって聞いたから、髪が薄くなることも皺が増えることも体力が衰えることもないのかしら。それに誰かお相手見つけてどこかで生活してるのかしら」
「ええっと、そんな時間の間隔では考えたことなかったわ」
そうしてじっとしてリバティが考え込んでいたのでパスが止めに入った。
「リバティ、考えるのはあとにすればいいよ。どうもありがとう。じゃあ、また送ってくけどなにか言い残したことはお互いにないかい」
あっとリバティは気づいて3人に伝えた。
「皆さんがこれからダンスや歌を続けるように私も今の旅を続けていきます。どうも先のことを考えるのが苦手で先というのは今の積み重ねでしかないから。特にわたしにはこれといった将来は描いてませんわ」
「リバティちゃんがそれなら全然構わないよ」
「言ったでしょ、誰かにとやかく言われるのはごめんって」
「じゃあ、これで。また会えるといいね。えっと、一つだけ言わせて。誰にも言われないということは、あなたの行為がよいことなのかよくなかったことなのか、正しいことなのか間違っていることなのか、それを自分で直したり学ばないとならないの。時には二度と選択をやり直せないことを決める時だってある。後悔してもそのまま人生は続いていくわ。私達はどんな人だって生き物だって元気になるように受け入れてゆくわ。でもそれはあなたの時間に少しだけ寄り添うだけ。決めていくことを引き受けるのもあなたしかいないのよ。じゃあね」
そうして、サンゴ、マンバ、コブラの3人はリバティを囲んで3方向からハグをした。それが合図だとパスにはわかり、3人をテレポートで連れていき、しばらくしてからまたパスだけ戻ってきた。
「リバティ、いかがだったかな」
「最後のサンゴさんの言葉は印象的だったわ。あの3人は自分に言い聞かせているようにも感じたわ」
「とはいえ、どんなことでも見方を変えれば印象変わるよ。さあ、リバティ次はどこへ行こうか」
「あなたに任せるわ。でもしばらく休みたいわ」
「そうだね、ショーを観るのも疲れるものさ」
パスが話したその時だった。二人の頭に魔法使いから声が聞こえてきた。
「やあ、リバティ。旅を楽しんでるかな」
「インバイト、どうしたのですか」
「うん、君たちの旅だが一度この壮大な実験を中断したいと思うのだ。すまないが」
「どうして?」
「なあに、ほんのひと時の間さ、理由を聞いても納得しないだろう。だから時が動けばなんともなくなる。動かなければ続きを描けないまでさ」
「ひどい仕打ちね」
「まるで人生みたいだ」
「あなた猫だけどね」
「あ、ごめん」
「ここまでに沢山の事柄に遭遇しただろう。既にこの話も展開を広げた。再び始まることを願うよ」
そして魔法使いは呪文を唱えた。その瞬間に物語の時は静止した。全てが止まったあとまた始まるのは誰かの思いが強く動いたときなのだろう。




