スネークバイト その1
書ききれなかったので、その1、その2に分けました。
リバティたちは、ヴァリーから話を聞き、ショーが行われる場所に来ていた。
ステージでは、斑模様の衣装を着た女性が三人立っていた。彼女たちは靴職人のヴァリーがオーダーメイドで作り上げた色とりどりの靴を履いていた。三人のうちの一人がマイクを持って話した。
「皆さん、私たちスネークバイトのショーを見に来てくれてありがとう。私たちは、あちらとこちらを巡っているダンスグループです。今日は、沢山私たちと一緒に踊って楽しんでください」
そして、どこからか楽曲が流れて三人はマイクを持ちながら、踊りだした。三人は蛇をモチーフにしているのか、頭には蛇の頭が三つに分かれていて、ヒュドラやヤマタノオロチを彷彿とさせる被り物を付けていた。
「一曲目、蛇にらみ」
それはこんな歌だった。
蛇、蛇、蛇睨み。あなたの赤ちゃんそんなところに置かないで
私が食べちゃうわ
蛇、蛇、蛇睨み。さっさと逃げてしまって。
こちらはあきませんわ。
憂鬱な日常は誰もが感じている
というより不条理な日常に誰もがイライラしている
勝ち負けなど興味ないのに
不平等に巻き込まれる
生きているのが有りがたいのか
死んでしまうのが気楽なのか
わからない
だから睨むの こんな世界を
蛇、蛇、蛇睨み。あなたなんか睨んでないの
食べてほしいならいただくわ
蛇、蛇、蛇睨み。それでも死んでしまっては
あきませんわ
お逃げなさい
その三人組の歌を聴いていたリバティは衝撃を受けた。自分が動けないマネキンだったとき、こういった歌に触れることはまずなかったからだ。その歌詞の意味も先行きが不透明であったリバティには共感できるものであった。ステージで立つその三人が自分と同じように惑いを抱えているように思えたのだった。
リバティは、そのステージの三人と一度話をしてみたいと思った。
「ねえ、パス。私、あの子たちと話がしてみたいわ」
「リバティから話がしてみたいと思うなんて珍しいね」
「ええ。同じ女性と話をすることもなかったもの」
「そうだね。じゃあ、ショーが終わったら僕が話しかけてみるよ」
「ありがとう」
スネークバイトの三人組は、楽曲のリズムに合わせて踊り、ステージを広く使っていた。楽曲のなかには歌詞のない、彼女たちが蛇の動きを模倣して、両手をにょろにょろと動かすような踊りもあった。リバティはショーが終わるまで、彼女たちをじっと見ていた。そしてショーが終わると、再び最初に挨拶をした女性が話をした。
「どうも皆さん、本日は私たちのショーを見てくれてありがとう。こちらの世界では、あともう一つの町を回って最後になりますので、よかったらそちらにも見に来てください。それでは、自己紹介します」
「はい、マンバです」
「はい、サンゴです」
「はい、コブラです」
マンバは緑色、サンゴは青色、コブラは黄土色の蛇の頭をした被り物を付けていた。挨拶をしていたのは、サンゴだった。
「以上、わたしたちスネークバイトでした!ありがとうございました」
三人は深く一礼をしてから、町の住民の拍手を受けてはステージを後にした。
「お疲れ様。マンバちゃん、コブラちゃん」
「お疲れー。楽しかったねー」
「うん。一緒に踊ってくれる方もいて楽しかった」
そして、三人で話をしていたなかにステージの隙間から黒猫のパスが忍び込んできた。
「やあ、とてもいいステージだったよ、ありがとう」
「あら、猫が喋っているわ」
「猫さんも見てたの?どうもありがとう」
「うん、見てた。それで君たちにお願いがあるんだ。僕のお連れが君たちと話がしたいんだってさ。君たちのショーを見て、とても感激したらしい。リバティという女の子なのだけど」
「それって魔法使いが話をしていた子ね」
驚いてパスが答える前に、サンゴが経緯を話した。
「私たちもこの世界でショーをするにあたって、一度魔法使いから話を聞いているの。その、元の世界でなんらか痛みを抱えている人達の避難所にこの世界があるというのも聞いたし、そのマネキンの話も聞いたわ。会うのは構わないけど、彼女の期待に応えられるかしら」
「僕としては会ってくれればそれで十分だよ、あとはリバティが考えることだ。じゃあ、こっちへ」
そのまま、出口へ案内すると、この三人組の関係者に行く手を遮られてしまうだろうから、パスは三人を近くに引き寄せて、一気にテレポートを使った。関係者がステージで様子を見たときには、もうパスと三人の姿は見えなくなっていた。
パスたちは待っていたリバティの目の前に姿を現した。
「お待たせ。リバティ、連れてきたよ」
「はあい。私たちのショーを見てくれてありがとうね、私、サンゴ」
「私、マンバ」
「私、コブラよ」
「はじめまして。私はリバティです。とても素敵なショーでした」
「どうもありがとう」
とサンゴは答えた。
「こちらの世界で、似たような女性と話をすることはほとんどなかったのです。どうしてこちらでショーをしようと思ったのですか?」
「私達も何かしら痛みを抱えていたから。皆、この世界に興味を持ったのよ」
つづく




