鼻
マイペースの更新ですみません。
人間の勝手で地球を元の通りにしてほしいです。
でも、いまだに国によっては人も生きにくいですね
王子の部屋から離れた黒猫のパスとトラ猫のウェイブは王宮を出て、まずは腹ごしらえをしようと、王が話していたチキンコックの無料食堂や向かっていた。その道中のことである。
「ねえ、ウェイブ。この先、地球はどうなると思う?」
「はっ?急になんだよ」
「まあ歩きながら話そうじゃないか」
「でなんで地球なんだよ」
「そりゃあ生き物の家だからねえ」
「俺にとっちゃ野宿と変わんねえがな」
「ものの例えだよ」
「どうって、人の勝手になるだろ」
「君はよくわかってるね」
「そりゃどうも」
しばらく無言で二匹は黙々と歩いた。1つめの橋に差し掛かった。
「この国にも川があるのか」
「綺麗でしょう」
橋の下の川は澄んでいた。川にはカワウソが暮らしていた。
「おい、ありゃカワウソじゃないか」
「そうそう。カワウソは綺麗な川じゃないと住みたくない。人と一緒さ」
「連れてきたのか」
「そう…だろうね」
「なんだ、よくわかってないのか」
「最初からここにいる訳じゃないからね、僕は」
「ここには見たことない生き物もいるようだが、馴染めるのか?」
「まあ、色んな生き物が生きてたっていいでしょ」
「食われるものだっているだろ」
「まあね…食われないように歯向かうか逃げないとね」
二匹は橋を渡り終えた。まだ道が続いている。パスはさっきの話の続きだと続けた。
「この国にいても、僕が心配なのは地球のことなんだ。最近は地球の方が人にいいようにされたストレスが溜まって、多くの野生動物に八つ当たりだよ、大雨降らせたり、からからに乾燥させて火事させたり、王子さんからコアラの命乞いをなんど聞いたことか」
「あいつら、寝てばっかだろ」
「にしても、今までは無かったからさ、そんなこと」
二匹の歩く道のはるか先に建物と看板が見えてきた。
「あれか」
「そうだね」
「やっとか、腹減ったわ」
「まだだけどね」
ウェイブは、はやく食堂に着きたく、パスとの差をつけて、駆け足になった。ところが、ウェイブがいくら駆けても目的地には着けなかった。あと少しのはずなのに、走っても先の看板まで近づくことができず、次第にウェイブは疲れてきた。
「おいおい、なんだよ」
その場で屈んでウェイブは休むことにした。もしかして、この走る道が動いているのか、幾つかたどり着けない可能性を考えてはみたものの、肝腎なところがわからなかった。
そのうち、黒猫のパスが追いついてきた。
「随分と君は走るね」
「変なところだ、一向に辿り着けない」
「それもそのはず」
「おい、おまえ」
またウェイブはイライラしだした。
「知ってたのかよ!」
「初めてじゃないからね」
「だったら、さっさと教えろ」
「君が走るものだから教えたくても教えられないよ」
「うっ…そうか、わかったよ。聞くよ」
「道の横の花畑を見たかい」
「ああ。幾つもの色合いの花があるんだと思ったよ」
「ほら、横にある、この赤い花をめくってごらん」
「めくる?」
二匹の歩く道の横には花畑になっていた。様々な色の花がたくさん咲いているなかで、ただ一つ赤い花だけが丈を低くし、地面に近く拡がるように咲いていた。
「これか」
ウェイブは、この赤い花の花弁を破かないようにひょいと持ち上げてみた。
「げっ!なんだ、これ!」
「鼻だよ」
「人のか、どうしてこんなとこに?」
「色んなことがあるのがこの国さ」
人の鼻のようだが、褐色のかかった肌色だった。鼻しかない。ウェイブはだいぶ驚いた。すると、どこからか声が聞こえてきた。
「花をどけたのは誰だ」
「おっ、なんだまた!」
「僕たちです」
「ん、その声はパスだな」
「どうも、また来ました」
「チキンコックの食堂に行きたいのだな」
「はい、そうです」
「待っておれ、うん…パスだけじゃないな」
「おれもいるのがわかるのか…」
「初めてな声だな」
「どこから聞いているんだ」
「花が代わりに聞いてくれる、こそっと訳してくれるのだ」
「にしてもなんでこんなところに」
「私の役目はきちんと食堂へ案内することだからな、さいわいここは私のいた国より色々とかぐわしく空気もきれいだ」
「鼻だけって…すげえな」
「名前を名乗りなさい」
「とらねこのウェイブだ、宜しく」
「…ほう、わかった。ようこそ、この国へ」
ウェイブが喋ると、鼻は花たちに指示を出した。花たちは一気に花粉をまきだした。花粉は空中に舞い、やがてウェイブの視界に見える看板まで届くと、さっきまであったと思われる看板も食堂の建物も消えて、あるのはまた新しい道だった。
「この道を進めばやがて見えてくるだろう」
「おい!」
ウェイブは新たに道ができていて驚いた。
「俺が見ていたのは幻だったのか」
「花たちが秘密の道には欠かせないからね」
「にしても、あんたよく俺たちに話しかけることができるな、鼻だけだというのに」
「なに、喋らずとも、念じることで伝わることもあるのだ」
「ほら、行こう。じゃあ、鼻さん、宜しくね」
そう言ってパスはウェイブより先に歩き出した。しばらく経ってから、はっとしたウェイブは、あとに続いた。
「結局、抜かれてしまった。なんだったんだ、さっきまで」
次第に赤い花がまた隠すように鼻を覆っていった。




