26.スタート
スタート地点はまさに十人十色を表すかのような情景が繰り広げられていた。
二人で抱き合う者。
二人で地図を見ながら作戦を練る者。
二人でじゃれ合う者。
中には公衆の面前にも係らず二人でキスする者までいる。
そんでもってそんな人々を観察する変わったカップルは、――もちろん朱音と孝樹だ。
「おぉっ!すげぇ!」
「うっわー!!大胆だねぇっ!!」
…とかいいながらあっちを向いたりコッチを向いたり。
まぁ『珍しい』というならココもある意味その通りなんだけど…。
「な?」
「ぃ…ぃゃっ!」
「皆こんなにオープンなんだぞ?」
「周りは周り!私は私!」
「長いものには巻かれろって言うだろ?」
「…絶対得なんてないもん」
そんな掛け合いを幾度も繰り返している。
周囲で二人の世界を作っている者が大半を占める中、それを尽く拒否しているのである。
「紗代〜!欲求不満になっちまう」
「本気なら耐えろ」
「本気だから触りたくなる男の気持ちを理解するんだ!」
「ゃ」
永遠に続くかと思われた掛け合いは唐突に終わることになる。
「皆集まったようだな?」
周りを見渡してそれとなく人数を確かめたらしいHIKARUはニヤリと口元を綻ばせる。
「では!諸君の健闘を祈る!!!」
HIKARUとKARINは繋いだ手を高く掲げ、高々と宣言する。
『ここに、≪カップル対抗障害物レース≫開始を宣言します!』
沸き立つ観衆。
私も紛れもなくその中の一人で、身体が高潮していくのが分かる。
「いよいよか」
「頑張ろうな」
そんな風に軽くハイタッチを行う二人。
「なぁ〜に言ってんの!孝樹!優勝よ!」
――の片方を睨みながら朱音は高々とそう言い放った。
そしてその観衆の高潮が最高に達した時、徐にAGEHAの二人はアイコンタクトを交わすと、同時に同じ事を言い始める。
『準備はいいな(ね)!?んじゃ…Ready――Go!!』
そして火蓋は気って落とされたのだ。