そしてヒーローは……
調査の結果、城下周辺で桜と同じように幻覚症状、及び記憶の混濁を顕す患者が発生していることが分かった。
原因を究明したところ、一部の店に卸されている粉物に特殊な胞子が混入していたとのことだった。故意に混ぜられたわけではなく、原料の栽培段階で奇病が発生したためだったのだが、完璧に取り除かれていなかったらしい。
不運なことに、とある人気の菓子店でもその粉が使われており、被害の度合いは広かった。桜も町に出たおりに買い求めていたと、店員の証言が取れている。
ただ、専門家の意見により、幸いにもその症状は一日程度で収まるもので、後遺症も残らないと判明した。関係者たちは安堵の息を吐いた。
数時間後には桜も自分の発言を綺麗に忘れ、整合性の取れた物言いをするようになり、気を揉む一同を安堵させた。アステルが戦隊の話を持ち出すと、「なんで知ってるの? そんなテレビ番組のこと話したことあったっけ」と首を傾げている。
桜の買い食いを止めるすべはない。
後日アステルは、ことの顛末を主君である王太子レジナルドに報告した。
食品の管理をこれまで以上に徹底するよう通達、また、定期的な調査を行う機関を新設する、許可申請をした。
- end -