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異世界コレクター ~コンプ済み廃人ゲーマーは転生先でも無双してすべてを集めるようです~  作者: りゅーいち
第2章 ハクタの町に迫る影

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20 ゴブリン侵攻戦③

 1匹目のゴブリンを倒し、ジンの意識に戦場の音、匂い、ひりつくような空気の感触が一気に流れ込んできた。


 他の場所でも戦場になっているのか、金属音やゴブリンの悲鳴、魔法の炸裂する音が聞こえてきた。


 2匹目はまだ遠い。けれどもそこから先は数えるのも嫌になるほどのゴブリン達。確認できる範囲で通常のゴブリン以外は存在しないが、そのうちゴブリン兵などの上位の奴らが出てくるだろうとジンは予測している。


(殲滅することはできないが、できる限り数を減らす!)


 ジンは勇敢にも群れに向かって走り出した。


 すぐに2匹目のゴブリンとぶつかる。


 一合。


 たったそれだけだが、ゴブリンの首が地面に転がった。


(いける! 少なくとも防御のバフ等はかかっていない!)


 昨日までは短剣の一撃で普通のゴブリンは倒せていたが、侵攻戦の時だけ特殊なバフがかかったりスキルを覚えていたりする場合がある。今の攻撃でその線は消えた。


 “自己犠牲”をはじめとした厄介なスキルをおそらく覚えているのだろうが、一撃で倒せるならあまり問題はない。


 仲間を殺されたことに怒ったのか、数匹のゴブリンが厳しい顔つき(少なくともジンにはそう見える)で襲いかかってくる。


 ジンはそれらの攻撃を的確に回避しつつ、右手に持ち替えた短剣で次々とゴブリンを切り裂いていく。


(簡単に倒せるが、ゴブリンからの被ダメージは0じゃない。まずは囲まれないように気を付けつつ立ち回らないとな)


 広がって攻めてくるゴブリン達を、ジンはジグザグに下がりながら対応していた。


 こうすることで、後ろに回り込まれる時間を稼ぐことができる。今はとにかく死なないように討伐を繰り返さなくてはならない。


 まとめて飛びかかってくるゴブリンがいれば大きく下がり、突撃してくるゴブリンがいれば勢いを借りてその体を切り裂き、防御しているゴブリンはあえて無視し、逆にジンを無視して通り過ぎようとするゴブリンは可能な限り倒す。


 そうして騙し騙し戦っていたものの、ついにジンはゴブリン達に囲まれてしまう。通常のゴブリンだけでなく、ゴブリン兵やゴブリン騎士さえも混じっている。


 ゴブリン騎士は通常のゴブリンよりも物理防御力が高く、今のジンでは一撃で仕留められない。かつてないほどのピンチに、ジンは焦る。


(職業(ジョブ)取得はまだか!? ……今日の討伐数は80は超えているはずだ! 正確な数は覚えていないがもうすぐ……)


 そう思っていると背後から地面を蹴る音が複数聞こえてきた。


 振り返ると5匹以上のゴブリン兵がジンの背後を襲おうと迫ってきていた。まとめてバックアタックを喰らおうものなら一気に瀕死だ。


「小賢しいな!」


 気合一発。ジンは大きく左にかわしつつもゴブリン兵を1匹切り裂いた。


 しかしながら包囲の端に寄ってしまったことで、左側からゴブリン達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。


 棍棒の激しい攻撃が直撃する寸前、ジンはそれら1つ1つを捌(・)き(・)き(・)っ(・)た(・)。


 今までとは明らかに違う速さと精度の動きに、ゴブリン達も硬直する。


 ジンの脳内に、声が響く。


 ——無職(ノービス)レベル10を確認。


 ——短剣による連続500体撃破を確認。


 ——職業(ジョブ)授与を行います。


 ——盗賊(シーフ)レベル1(・)2(・)になりました。


 ——スキル“観察”を取得しました。


 ——スキル“短剣熟練(小)” を取得しました。


 ——スキル“素早さ強化(小)” を取得しました。


 ——スキル“ものをぬすむ”を取得しました。


 ——スキル“ポイズンナイフ” を取得しました。


 ——スキル“気配隠蔽(小)” を取得しました。


 ——スキル“器用さ強化(小)” を取得しました。


(やっぱりあったな強制職業(ジョブ)獲得!)


 EWOでは『強く(なっ)てニューゲーム』、『強制脱ニート装置』、『お前のような無職があるか』などと揶揄された隠しシステムだ。


 獲得条件はジンの脳内に響いた声の通り、2つ。


 1つ。無職(ノービス)の最大レベルであるレベル10になること。


 2つ。特定の方法で敵を500体連続で撃破すること。


 盗賊(シーフ)になる場合は短剣を用いた討伐がこれに該当する。


 EWOでは特に2つ目の条件の重さから、縛りプレイ以外ではまず陽の目を浴びない方法だ。


 なお、その労力に見合ったメリットはちゃんと存在する。


 本来無職(ノービス)から最初の職業になる時はレベルが1に戻ってしまうのだが、この方法で職業(ジョブ)を取得した場合は無職(ノービス)のレベルがそのまま引き継がれ、レベル10からスタートできる。


 しかも、無職(ノービス)がレベル10に達したあとも、本来なら捨てられるはずの経験値が内部的に蓄積される。


 それだけではない。通常ならレベル差による経験値キャップのせいで、経験値を得られなくなるはずの相手――つまり通常ゴブリンから得た分すら、内部では加算されている。


 このメリットが転生者であるジンに非常に有利に働いてくれた。教会の職業(ジョブ)授与を待つこともなく、レベルは高いままで、かつ自分の望む職業(ジョブ)を得ることができるのだから。


 ゴブリン達の攻撃を弾き返したジンは、天からの声が収まるや否やそのまま前進。驚きのあまり固まっているゴブリン達を殴り蹴り、包囲を脱出して走り出した。


(スキルの効果もあるだろうけど、盗賊(シーフ)になったことで本当に体が軽い! 素早さ器用さ特化は伊達じゃないな!!)


 ——本人は気づいていないが、通常の盗賊(シーフ)レベル12にこんな動きは不可能だ。


 ところがジンは、盗賊(シーフ)に素早さ・器用さが大きく劣る無職(ノービス)でカウンターを連発できるほど観察眼に優れ、また対魔物に関していえば、行動速度や攻撃パターンですら頭の中に入っている。


 そんな人間が突如、一回りも二回りも速く正確に動けるようになった場合、どうなるか。


 野球選手が重いバットで素振りをし、打席では普段のバットを握るように。


 あるいは時速100キロで高速道路を走った後、一般道へ降りた時、周りの景色がいやに遅く見えるように。


 身体能力の上げ幅が大きければ大きいほど、周囲は遅く見え、自分の身体は速く動く。そしてこれまで以上に、頭の中で思い描いた動きを今の身体なら再現できる。できてしまう。


 今だけの感覚かもしれないが、それは確かにジンのピンチを救ったのだ。


 ジンが向かうは北の森。


 大将討伐の準備は整った。


 もう、立ち止まっている理由はない。

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