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異世界コレクター ~コンプ済み廃人ゲーマーは転生先でも無双してすべてを集めるようです~  作者: りゅーいち
第2章 ハクタの町に迫る影

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9 無職vs騎士

 攻撃力に劣る無職(ノービス)のジンが、騎士(ナイト)相手に魔法以外でまともなダメージを与えられる方法はカウンターしかない。


 積極的に狙っていけば戦いの形にはなるが、


(EWOと同じならダメージはあるはずだが、全く効いてなさそうだな)


 テレンスの様子を見てそう判断する。

 職業(ジョブ)とレベルの差には、個々の技術では埋められないものもある。魔力や耐久力はその中でもわかりやすい。


 さて、どうしたものか。

 テレンスがどう判断するかはわからないが、今のような力任せの攻撃はもうしてこないと考えたほうがいい。それ即ち、カウンターが狙いにくくなるということだ。


(それでも経験値のために、簡単にはやられてやるものか)


 ジンが思い浮かべた対剣&盾の戦術は、中距離の魔法攻撃で盾の防御力を無視してダメージを与えるか、至近距離の打ち合いに持ち込んで剣のリーチと盾の取り回しという優位を削るか、の2つだった。


 勿論ジンにできるのは後者で、それゆえに短剣の選択は有利に働いた。もっとも、他の武器は現実に握ったことがなく、包丁と似通っている短剣ならまだ扱いやすいだろうと考えたのが本音だが。


 戦術の話に戻る。


 ジンがこれから行う至近距離での戦いは、EWOの中では事情が少し異なる。距離が足りないために当たらないというのは当たり前として、EWOでは現実における“振りの速度”や“姿勢”によって攻撃の威力が変化することがなかった。


 武器の攻撃の出し始め、出し終わり、近すぎても武器のリーチギリギリでも与えるダメージは同じだったし、武器ごとに決まった攻撃モーションしかなかったから相手の姿勢が変わることもなかった。パターン通りであるがゆえにカウンターも簡単にとることができた。


(現実のこの世界ではそうもいかないんだろうな、多分。対人戦(PVP)でEWOとどれくらいの差があるのか、1つでも多く掴んでこの先のドロップに活かしてやる)


 負けても殺されることはないしな、とジンは思う。


 テレンスも今後の攻め方を考えているのか、盾を前に構えてジンをにらみつけたまま動こうとしない。

 ジンはジンで、いつでもカウンターを取れるように身構えつつテレンスの観察を続けた。




 模擬戦が始まって5分ほどが経過したが、ジンとテレンスはお互いに倒れていないし降参もしていない。


「シアン君、どう思う?」


「何がでしょうか」


「ジン君のことだよ。君から無職(ノービス)の新規冒険者なんて聞いていたから、よっぽどの訳ありだと思っていたんだが……」


 先ほどの魔物に対する的確な情報といい、今の戦闘の様子といい、ジンが有能な冒険者であるとクラインは感じざるをえなかった。


 今この瞬間は膠着状態だが、模擬戦では大抵テレンスが先に攻撃をし、ジンがそれに対応するという図式で成り立っている。


 訓練場に向かう途中でシアンに確認をしたが、ジンの能力に特筆すべき点や特別な魔道具の類はなく、本当にただの無職(ノービス)レベル3なのだ。


 職業(ジョブ)レベルを考えれば、テレンスの最初の攻撃がすぐに命中して、決着がつくはずだった。最初の一合を含めて、その瞬間が訪れていないこと自体訳が分からない。


 テレンスの攻撃はことごとく回避され、反対にジンの攻撃は、ほぼ毎回テレンスを吹き飛ばしていた。


(一体なんなのだ。“超反撃”をあそこまで的確に使いこなす冒険者は見たことがない!)


 ジンがカウンターと呼ぶ現象は、この世界では超反撃と呼ばれていて、的確に出すことは上級の冒険者でも難しいというのが常識だ。


 ――ここでEWOでのカウンターの発動条件をおさらいすると、『敵が自分に向かって行った攻撃を回避し、かつ敵の攻撃動作が終わる前に反撃が命中した場合』だ。


 ……ジンはEWOと同じ感覚のため意識してはいないが、ただ攻撃中に反撃をしてもこうはならない。

 この世界の人々の中に無い概念、それは“攻撃動作”だ。


 攻撃動作=攻撃の出し始めから出し終わり、と言ってしまえばその通りなのだが、“超反撃”を成功させるには防御や受け流しを含め、攻撃側の動きに対して一切の邪魔をしてはならない。


 EWOではそもそもプログラム通りにしか動かない関係で、攻撃が当たろうとも防ごうともモーション自体に変化はなかったのだ。


 加えて、“自分に向かって”というのも少し問題がある。


 戦争のように大規模な乱戦になる場合などは、自分が誰に向かって攻撃しているか明確に意識することは少ない。

 これは魔物の群れに対しても言えることで、効率的にやろうとすればするほど、範囲的な攻撃をしようとするほど“超反撃”にはなりにくい。


 そんなことはつゆ知らず、クラインは感動しながらも思う。


 この戦いはどこまで続くのだろうと。


 確かにジンの超反撃は脅威といえる。ただジンも感じていることだが、テレンスにダメージがほとんど入っていない。この状況であればいつかジンは根負けする。それはいったいいつになるのだろう……と。


 だが、クラインがこの先の戦いを想像してから間もない時、終わりは意外な形で早く訪れた。


 疲労で集中力が落ちたためか、それとも床の凹凸に引っ掛かりでもしたのか。

 ジンが何度目かもわからないテレンスの攻撃を回避する際に、姿勢を大きく崩してしまった。


 この好機を逃すほどテレンスは甘くない。振り下ろした剣をそのまま横に薙ぎ、ジンを剣の腹で叩くように突き飛ばした。

 これまでテレンスの身に起こっていたのと同様に、大きく吹き飛んでいくジン。


 違いは、ジンが全く起き上がってこないことだろう。


 クラインはすぐに模擬戦を終了させ、隣の部屋に控えているギルド付きの僧侶(クレリック)に彼の治療を命令した。

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