表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は選択の連続である[Re:]  作者: 八白
第一部二章 遺物三都
78/113

2/リィンヤン -14 試行錯誤

「──…………」


 月明かりの下、木剣を正眼に構える。

 構え方は適当だ。

 俺は剣術に詳しくないし、ジグやヘレジナも教えてはくれなかった。

 それは、俺に必要がないからだ。


 流派における型には、二つの意味があると言う。

 選択の簡易化と、動作の洗練だ。


 前者は、あえて動作を制限することで、思考の手間を省き、反応速度を上げる。

 後者は、同じ動作を反復し体に刻み込むことで、一撃の威力、精度を高める。

 神眼を持っている俺にとって、前者の意味は害となり得る。

 それは、自在に選べる無限の選択肢のほとんどを自ら切り捨てることに他ならないからだ。


 神眼を発動し、呼気と共に木剣を振り下ろす。

 そして、可能な限り速度を落とさず、斬り上げに転じた。

 燕返し。

 反復すれば、精度は上がるだろう。

 だが、その行為に意味があるかと言えば、難しい。

 この技が必殺となり得る展開が見えなかった。


 あと、俺の知識にあって実戦で使えそうな必殺技はと言えば、椿三十郎の逆抜き不意打ち斬りくらいのものだ。

 でも、あれは居合術だし、両刃の長剣では使えない。


「不意打ち、か……」


 不意打ちに使える必殺技。

 燕返しよりは実戦向きだ。

 少なくとも、どのタイミングで使えばいいか、はっきりしている。


「コンセプトが必要だな」


 ぶつぶつと呟きながら、あれやこれやと木剣を振る。

 攻めの手段として使うのだから、カウンター技であってはならない。

 だが、神眼の真髄は、その対応力にこそある。

 目指すべきところは、究極的には、攻めのカウンターであるべきだ。


「……攻めのカウンターって、なんだ」


 思わずセルフで突っ込む。

 明らかに矛盾している。

 だが、神眼を使った必殺技となると、そこに行き着いてしまうのだ。

 神眼と共にジグの眼力が備わっていれば、相手の構えの隙を狙うこともできただろう。

 しかし、それは、ジグの経験によって培われたものだ。

 一朝一夕で身につくものではない。


 無心に木剣を振るいながら、思索に耽る。

 後の先、という言葉がある。

 剣道、剣術において、相手の攻撃後の隙に反撃を叩き込むことだ。


 後の先は、取れる。

 しかし、相手が警戒して打ち込んで来なければ、戦闘中常に神眼を発動し続けなければならないこちらが不利だ。

 攻撃してきた瞬間に神眼を発動するという手もあるが、不意打ち、あるいは超高速の攻撃に対し、無力となってしまう。


 対の先、あるいは先の先という言葉もある。

 対の先とは、相手の攻撃と同時に反撃を行うこと。

 先の先とは、相手が攻撃をする前に反撃を行うことだ。


「攻撃の前に、反撃する……」


 矛盾しているようだが、そうではない。

 相手が攻撃を意識した瞬間に反撃するという、人間の認知能力を超越した世界のことを指しているらしい。

 神眼と眼力。

 その両方が揃っていれば先の先も取れるのだろうが、俺には不可能だ。

 それに、後の先も、対の先も、先の先も、結局のところガン待ちには無力なのだ。


 思考が堂々巡りを繰り返す。

 相手が問答無用で攻撃してくれればいいのだが──


「……!」


 無心に燕返しを繰り返していた手を止める。

 息は、以前ほど上がらなくなっていた。

 手のひらの血豆も既に硬くなり、もう痛むこともない。

 そうだ。

 相手が攻撃を仕掛けてこないのであれば、仕掛けさせればいい。

 いや、攻撃でなくとも構わない。

 相手が動けば、隙が見える。

 その隙に、必殺の一撃を叩き込めばいいのだ。

 あとは、如何にして相手を動かすか──それを考えるだけだ。


 僅かに見えてきた光明を追い求めるように、俺は再び木剣を振り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ