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異世界は選択の連続である[Re:]  作者: 八白
第一部六章 亜人国家トレロ・マ・レボロ
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3/トレロ・マ・レボロ -5 二通目の封筒

「敢えて誇張して言うぞ。魔力銃《マナガン》の製法をどこかの国に教えるってことは、その国で普通に暮らしてる一般人全員を、調練の必要もなく、冷徹な兵士として運用できるようにするってことだ」


「──…………」


 プルの顔が真っ青になっていく。


「カタナの言う通りだ。クロケー、お前の母ちゃんの倫理観どうなってんだ……」


 アーラーヤが、呆れたようにクロケーを見つめた。


「ワカった」


 クロケーが、再び自分の懐に手を入れる。


「二通目がある」


「あん? 二通目……?」


「お前ラが魔力銃《マナガン》の製法を要らナイって言ったら、コレ出せって」


「……まあ、製法を教えてもらったほうがラーイウラの国力は上がるだろうさ。でも、魔力銃《マナガン》の件はさすがに握り潰すぜ。そのほうが世のため人のためだ」


 アーラーヤが、改めて二通目の封筒を開封し、中身を読み上げた。


「──先程の報酬の件は嘘だ、だと」


 ヘレジナが呆れて眉根を寄せる。


「何がしたいのだ……」


「続けるぞ。……息子には、こう言い含めてある。魔力銃《マナガン》の製法を欲しがる相手ならば、そのまま戻ってこい。欲しがらない相手なら、意地でもついていけ。この手紙を読んでいるということは、後者だろう。よろしく頼む」


 理解する。


「なるほどな。クロケーを託すに値する相手か、試したってことか」


「だが、それは向こうの言い分であろう。こちらは元より連れて行く気などない」


 アーラーヤが続ける。


「なお、前金代わりとして、クロケーには新品の魔力銃《マナガン》を一丁持たせてある。魔力銃《マナガン》は自衛手段としても便利だ。また、分解しても模造品を作れない設計になっている。それでは、またいずれ──だとさ」


 手紙を読み終えた直後、クロケーが両手を床に突いた。

 そして、アーラーヤに向かって深々と頭を下げる。


「オ願いします! オレを弟子にシテください!」


「──…………」


 アーラーヤが腕を組み、険しい顔で目を閉じる。


「……なんで俺なんだ? そこのカタナも強いし、ヘレジナの嬢ちゃんに至っては俺なんざよりだいぶ強いぞ。特位一歩手前だ」


「ふふん」


「アーラーヤ、……サンは、オレと戦い方が似てる。速度を武器にシテること。二刀流なこと。手合わせシテ、ビビッ、て来たんだ。コノ人から学びたい、って……」


 実際は二刀流ではなく四刀流なのだが、十代前半の少年に対してはさすがに使わなかったらしい。


「はァ……」


 アーラーヤが、観念したように溜め息を吐いた。


「……悪い。お荷物増えるわ」


「!」


 クロケーの小さめの獣耳が、ピンと立つ。

 思わず苦笑する。


「まあ、こんだけ熱烈に追い回されたらな」


「根負けよ、根負け」


 ヘレジナもまた、困ったように笑った。


「師匠なら、しっかり弟子を守るのだぞ」


「わかっとるわい。カタナの弟子だっつーイオタより強く育ててやるわ」


「いや、現時点でだいぶ……」


 イオタ、さすがにまだ徒弟級だろうし。


「──……はふ、ふ……」


 プルが、隣でムニャムニャと妙な吐息を漏らす。

 あくびを噛み殺そうとして失敗したらしい。


「寝るか。もう深夜だ」


 アーラーヤが、クロケーに言う。


「クロケー。二階のベッド、使わせてもらえ。一台空いてるらしいからよ」


「アーラーヤサンは?」


「俺は、事情があって一階だ」


「ナラ、オレも下で寝る」


「いや、お前──」


 何かを言い掛けたアーラーヤだったが、すぐに口をつぐんだ。


「……わかった。好きにしろい」


「あ、毛布出しましね」


「アア」


「〈アア〉じゃなくて、礼を言え礼を」


「あ、ハイ。アリがとう……」


「どういたしまして!」


 ヤーエルヘルがクロケーに毛布を渡し、俺たちは今度こそ就寝することにした。

 旅は道連れとはよく言うが、まさか六人旅になるとは思ってもみなかった。

 騎竜車を二階建てに改造しておいて、本当によかった。

 六人での雑魚寝は、さすがの騎竜車と言えど窮屈過ぎるだろう。


 俺は、ヤーエルヘルを再びしっかりと抱き締めると、そのまま眠りに落ちた。

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