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執事の望みを聞いてみた②

 そっと、フリートさんの両手に添えていた指先をしっかりと握られて、その真剣味を帯びた眼差しを受けて、はっとする。


 フリートさんに、こんなにも熱く、欲するものがあったとは。


 褒賞として私の元に執事としてやってきたフリートさんは、その献身への対価を決して受け取ろうとせず。

 お側に侍ることが何よりの報酬ですのでと仰っていたが、その言葉を真に受けすぎていたのかもしれない。


 本当は何か求めるものがあるのになんの見返りもなく、自分は褒賞であるからと分を弁えて。

 そんなフリートさんに尽くされることを無償で享受していたとは、申し訳ない気持ちが募っていく。


「私が叶えられることであれば、なんなりと」


 申し訳なく思う気持ちのまま告げれば、私を射抜くフリートさんの瞳に鋭い光が宿る。


「本当に、なんでも望みを、叶えて下さるのですか?」

「そうですね。いくら神術に長けた私でも出来ないことがありますので、常識の範囲内で、お願い致しますが」

「常識の範囲内であれば、なんでも良いと?」

「私の力及ぶ限りであれば、どのような望みでも」

「トゥワ様に叶えられることであれば、なんでも?」

「フリートさんの望みを私が叶えられるのであれば」

「常識の範囲内で、トゥワ様に出来ることであれば、なんでも望みを叶えてくださる、と?」

「塔の守人に二言はありませんから!本当に、なんでも、フリートさんの望みを叶えて差し上げますよ!」


 なんなんだ、このしつこいまでの確認は。


 私の言葉が信じられないのか、何度も何度も確認してくるフリートさんに、このままではずっとこの不毛なやり取りが続いてしまうのではないかと危惧して、やや声を荒らげる。


 私の能力を信じていないわけがないフリートさんが、こんなに風になるのは、自分の望みなど叶えられるわけがないと思い込んでいるからか。


 自分が何かを望むことさえも、烏滸がましと?


 不意にまた苦々しい思いが込み上げそうになった私が指先を強張らせると、フリートさんにぐっと引き寄せられて、二人の距離が縮まる。


「なんでも望みを叶えるなどと、決して他所では仰らないで下さい」

「こんなこと、フリートさんにしか言いませんよ」

「トゥワ様……」


 名前を呼ばれるとともに、はああああ、となんとも長い息を吐かれる。


 額を、しっかりと握った私の手の甲に埋めて、息を吐き続けるフリートさんの旋毛を見つめる。


 大丈夫だろうか。

 私がフリートさんに差し上げられるものなどごく僅かであるからなんでも望みを叶えると言ったのだが、そんなに心に負担を課すようなことだったのだろうか。


 心配になって顔を覗き込もうと浮いた足を着地させると、息を整えたフリートさんがすかさず、握り合った両手はそのままに跪く。


「なんでも望みのものをと仰るのなら、トゥワ様の御足となる栄誉をお与え下さいませ」

「はあああ?」


 フリートさんのとんでもない発言に、生まれてこのかた出したことのない類の大声が、私の口から出た。

フリートさんの暴走は続きます。

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