執事は主を大きくしたい①
これを、と差し出した両手首、正確には夜着の袖口が、フリートさんからよく見えるように掲げる。
私の突然の行動に戸惑いながらも目の前に差し出された手をまじまじと見つめ、私の本意に気付かぬままこの手を取ろうとして、すんでのところで止めたフリートさんの目が、見開かれる。
どうやら、お気づきになりましたね?
私の両手首(正確には夜着の袖口)をじっと見つめ、次いで私の足下に視線を移したフリートさんの目が、真剣味を帯びていく。
フリートさんが検分しやすいように一切の動きを止め、夜着の裾が私の踝から指二本分上の位置でぴくりとも動かないようにじっとする。
じっとしてはいるが、夜着の裾から袖口へ、それからなぜか頭の旋毛の辺りを何往復かするフリートさんの視線に、だんだん居心地が悪くなってくる。
そんなに見なくても、一目瞭然では?
そろそろフリートさんにこの夜着の変化について言及しようと言葉を選んでいると、途中で止まっていたはずのフリートさん手がふいに伸びてきて、足が浮く。
フリートさんに向かって腕を掲げていたところをそのまま脇に手を差し込まれて持ち上げられて、しばらくじっと頭頂から足先まで見つめられたかと思うと、左腕の上に乗せられ何度か小さく上下に揺すられる。
目を閉じて、私を抱えるフリートさんは何かを推し測っているようで。
そんなに精査することですか?
「トゥワ様、このような大事なことに気づくのが遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした」
何かに合点がいったのか、私をそっと着地させて、正面に立ち、深々と頭を下げるフリートさん。
「そんなに頭を下げて謝ることではありませんよ、フリートさん。確かにこの夜着は、父様陛下にフリートさんたちとお揃いで誂えてもらったものですのでとても思い出深いものではありますが、縮んでしまったものは仕方がありませんよ」
この夜着は三代前の王、つまりフリートさんのお父上から頂いたものでお気に入りの一着なのだが、縮んでしまったものは仕方がない。
頭を上げてください、とフリートさんとの距離を詰めれば、何やらぶつぶつ唱えてらっしゃる。
「トゥワ様の御身体の変化に気づけないとはなんたる不覚。毎日拝見しているからこそ御本人よりも真っ先に気づくべきところであるのに、私は一体何を見ていたというのだ」
私の体の変化とは?
フリートさんは何を言っているのだろう?
首を傾げていると、急に顔を上げたフリートさんに再び脇から掲げ上げられた。
「まさか、トゥワ様の御身体が成長なさるだなんて」
勢いよく私を天に掲げたフリートさんは、耳を疑うような言葉を発しながら、それはそれは嬉しそうに微笑む。
誰の、何が、成長なさるですって?




