執事は主を大きくしたい②
「トゥワ様、さっそくお召し物を新調致しましょう。夜着はもちろんですが、これからはトオル様との面会で外出する機会も増えましょうから、外着を何点か誂えねばなりませんね。ああそうです、守人様のあのお衣装はいかがなさいますか?」
「ちょっと待ってください、フリートさん。」
掲げられていたところからは下されたものの、嬉々として採寸でもしそうな勢いのフリートさんに待ったをかける。
いろいろ言いたいことがありすぎて整理したいので一旦落ち着いて欲しいし、有能執事はどこへやら、見事に過保護で世話焼きな辺境時代のハンフリート殿下に逆行してしまっている。
ん?過保護で世話焼きなのは今も変わらない、か?
国王陛下であらせられた頃は為政者と守人として適切な距離感があったから忘れていたけれど、ハンフリート殿下はいつも私のことを心配してくれていろいろと手を尽くして下さる方だった。もともとがそういう性分なのか、お父上が私に対して過保護だったのを見て育ったせいなのか。
同じく、事あるごとにお父上の膝に乗せられていた私を見て育ったお兄様がそうでもなかったことを思うと、辺境時代のことは私にも非があるような気もするので、フリートさんの性分だけの話ではないかもしれない。
それにしても、私が成長?
そんなこと、あるものだろうか。
「あのですね、フリートさん。守人は塔に召喚されてのち、その姿形を塔の保護下で保持されます。私はまだ守人としての役目があるようですので、成長するということはないと思うのですが」
自分の考えを整理するためにも、フリートさんもご存知であることを言ってみたのだが、フリートさんの笑みがどんどん深くなっていってそわそわしてしまう。
「では、こちらにお立ちください」
こちら、と直立するフリートさんの爪先のすぐ前の床を指される。
何をさせたいのか分からないけれど、有無を言わせぬ笑みに素直に従い、フリートさんの爪先に自分の爪先を合わて立つ。
「それでは私の襟締を直して頂けますか?」
襟元を素早く緩めたフリートさんはにこやかに言うけれど、先日ほんの少し横にずれていたのを直そうとして、腕の長さが足りなかったことは記憶に新しい。
「この前の時みたいに、首が締まっても知りませんよ?」
知りませんよとは言うが、そっと手を伸ばしながら立てる限界近くまで踵を上げようとして、親指の付け根辺りで止まってしまう。
伸ばした手の指先が、フリートさんの胸元を飾る紫紺の襟締に、届いたのだ。




