執事と主と好意的な西の塔
まるで招かれるように入った西の塔内部は、やはりというか、暗く重い空気に満ちていた。
真っ直ぐ頭上に伸びた外観よりは頑丈に見える石壁と、それに沿ってとぐろを巻いて上階へと続く階段だけの空間。
最上階まで吹き抜けになっているなど、まるで物見の塔だ。人の住むところではない。
目を閉じて最上階の様子を探れど、本来守人の部屋である場所に人の気配はない。
両腕を広げて、塔の構造を確認するように神術を巡らせ慎重に探っていけば、すぐ真下、地下の浅いところに私よりも少しばかり大きな人影を感じる。
微動だにしないからもしや骸かと、ぞっとしかけるが、微かな神気を感じてほっとする。
塔内で守人が儚くなることなどないと分かっていても、この塔の様子を見れば、あり得なくもないという気がしてくる。
外観はどうあれ、こんな立派な塔に召喚されたというのに、あえて地下に篭っているなんて、本当に外の世界と関わりたくないのだな。
「西の塔の守人様は、地下にいらっしゃるのですか?」
天を仰いでいた視線を下げ、広げていた腕も下ろして床に手をつき、この塔の守人らしき人影の様子を探っていたら、フリートさんの声が降って来た。
床に手を付いたまま見上げて頷くと、フリートさんも床に膝をついて、私の両手に大きな手を重ねた。
伝わる温もりが心地良くて息を吐けば、白く尾を引く。
随分冷えていたようだ。
外よりひんやりとしていると思っていたが、常人よりもそのあたりの感覚が鈍いから気づかなかった。
「フリートさん、寒くはないですか?やはり外で待たれていた方が、」
「寒さは感じませんし、外で待つくらいならお側で待たせて頂きます」
私の言葉を最後まで聞くことなく、即座に否定するフリートさんの吐く息も、もちろん白い。
寒さを感じないも何もないだろう。
こんなことなら同行を許すのではなかったと後悔すれど、私の両手をしっかり握り込むフリートさんをここから追い出すことなど、到底できそうにない。
これは、護衛騎士のように斜め後ろに無言で控えて着いてくるフリートさんのことを振り切ることが出来なかった、私の落ち度だ。
探し人の居場所は知れたことだし探索は止めて、神気を体の隅々まで巡り巡らせて体温を上げる。神術も少し使って、私の周りの空気もほのかに温めた。
「私の側で待つというのなら、地下まで連れて行ってもらいましょうか」
「かしこまりました」
握られた手をそのままにフリートさんに向かって腕を差し出せば、察しよく私を抱き上げ左腕に乗せてくれる。
これで少しは寒さも和らぐだろう。
いつのまにか現れた地下へと続く螺旋階段へと向かいながら、フリートさんと私は互いに熱を分け合った。




