執事と主に陛下を添えて①
今は一刻の猶予もないので詳細は西の塔へ向かいながら馬車の中で、と言われたフリートさんと私は、フォワード国王陛下とともにとんでもなく煌びやかな馬車に揺られて北西に進路を取っていた。
全盛期の私なら神術で塔ごと瞬時に移動しているところだが、今の私には塔を連れていく必要も余力もない。
何が起きるか分からないから神術の無駄遣いは避けたいところだし、やたらと神術の使用を制限したがるフリートさんの目もあって、フォワード国王陛下の申し出を有り難く受けた。
憧れだった馬車での移動だ、心が躍る。
内心嬉々としていた私とは裏腹に、なぜか西の塔への同行に難色を示したフリートさんは、馬車が走り出しても眉に縦線を刻んだままだった。
かなりお怒りのご様子だったのにフォワード国王陛下へのお説教を超えた叱責のお時間が始まることもなく、どうしたことか私を抱えてじっとしている。
「あの、お二人は、いつもそのように?」
向かいに座ったフォワード国王陛下が、横抱きにした私をしっかり抱えて膝に乗せたフリートさんにおずおずと問いかけた。
この状況でその質問ができるとは、現国王陛下はなかなか度胸がおありようだ。
背後からの不機嫌をひしひしと感じながら、意外と豪胆なフォワード国王陛下に感心する。
「まさか、いつもこのようにさせて頂けるわけがないでしょう?今はただ、初めての馬車で御身体にご負担がないようお支えしているだけのことです」
なるほど、この態勢はそういうことだったのですか。
いつもの調子で掬い上げられ馬車に乗り、フリートさんの着席とともに膝に乗せられたものだから、いつものように特に意味のない触れ合いなのかと思っていたけれど、フリートさんなりのご配慮の賜物だった。
何やら最初の方に残念そうな言葉が聞こえたけれど、その心遣いに感謝の意を込めて、フリートさんの膝の上で落ち着かせて頂く。
「では陛下、そろそろ詳細をお聞かせ頂いても?」
私の寛いだ様子を確認してか肩の力を少し抜いたフリートさんが、やっとフォワード国王陛下に注意を向けてくれた。
「私は、叔父上にご教授頂いたとおり、西の塔の出現を確認してからきっちり五日後に塔の入り口前にて歓迎の式典を執り行いました。最後に私がご挨拶申し上げると守人様が塔からお出ましになると聞いていたのですが、待てど暮らせど守人様のご尊顔を拝せず。こうして日参しているのですが、守人様は一向にその御姿を見せて下さいません。塔は沈黙したままですし、本当に守人様が中にいらっしゃるのかどうか」
一気に言い切り深く長い息を吐いたフォワード国王陛下の天色の瞳が、きらりと揺れた。
お読み頂きありがとうございます。
馬車内のお話が長くなりましたので、分けることにしました。




