#1
「おい、なにぼうっとしてんだ? さっさと行こうぜ」
声をかけられたことで意識が浮上した俺は、眠たい目をこすりながら視線を声の主へと向ける。
「お前、また徹夜したのか?」
「まあねーー。 ちょっとトランスレーターの調子が悪くてーー」
「ほどほどにしとけよ?」
そうだな、と相槌をうちながら席を立つ。
「ほら、早く帰ろうぜ。 今日はパーティだろ!」
「落ち着けって……。 お前はどうせ、みかに会いたいだけだろ……」
「当たり前だろ。 毎日顔合わせてるお前には分からないのかもしれないけどなーー、みかちゃんは最高のーー」
始まったかーー
こうなると面倒なんだよな、こいつ。
この面倒な男の名は、博多博士。
ハカセではなくヒロシだが、みな彼をハカセと呼ぶ。この漢字だからな、是非もなし。
「ところで、ハカセ。 お前が言ってた美味いケーキ屋ってどこにあるんだ?」
「ん、ああ。 それならステーションの通りにあるぜ」
「割と近いんだな」
「ああ、あんな美味いケーキなかなか出会えないぜ……」
ハカセは恍惚とした表情を浮かべながら俺にケーキについて語り始めた。
またかーー
うんざりしながら大学の正門をくぐりぬけた先、ステーション通りに続く道の道端に女の子が立っていた。
下着姿で。
ーーなにこれ。
「おい、宙。 俺の目に下着姿の女の子が見えるんだが、俺の頭はとうとうダメになったのか?」
「お前の頭は元からダメだが、下着姿の女の子なら俺にも見えてるぞ」
「よし。 話しかけてくる」
「おいっ……‼︎」
正気かこいつ……⁉︎
「こんにちは、お嬢さん」
「…………んん?」
下着姿の女の子は、ゆっくりとこっちを向いた。
なんというか……
とても発育がよろしい……
よろしいけれど、非常によろしくない。
「なぜ下着姿でこんな所にいるのですか?」
ダイレクトすぎだろ!
「下着……姿……?」
発育のよろしい彼女は、不思議そうな表情だ。
なんで不思議そうな表情をするのか、こっちが不思議だよ!
「なにか変でしょうか?」
不思議そうに返してきた。
なにがそんなに不思議なんだよ。
不思議ちゃんか。
「いえいえ、なにも変ではございませんよ、お嬢さん。 むしろウェルカムーー」
「おい、やめろ」
肘打ちを一発。
「ーーがふっ!! き、貴様……なにを……」
「ちょっと黙ってろ」
鳩尾に入ったのかハカセは悶絶していたがほうっておく。
「あのですね。 服を着ないで、外出するのはどうかとーー」
「服なら着ているではないですか」
「ーーはい?」
「ほら」
ほら、と言いながら自慢気に見せつけられても、そこには二つの豊かな丸みしかない。
俺の困った顔を見て何かを察したのか、若干心配そうな顔でーー
「服とは、これのことではないのですか?」
と、ブラを指差しながら聞いてきた。
まあ、確かに服と言えば服だがーー
いや、待て。
この反応はもしかしてーー
「もしかしてあなたは、アザーですか?」
「はい、わたくし、アザーのアリスと申します」
なるほど。合点がいった。
アザーというのは、いわゆる宇宙人のことだ。
最近のアザーは人型じゃないタイプが多かったから気づけなかった。
「あのですね。 服というのはーー」
以下略。
そうして、服や服を着用する意味を念入りに教え終わると、彼女、アリスさんは頬を赤らめながら、
「申し訳ありませんでしたっ……!」
と、うつむきながら謝罪してきた。
「いえ、大丈夫ですよ。 アザーなら仕方ありませんし」
むしろ眼福なので感謝したいところだ。
「あのぅ……」
「はい?」
「ちょっとお願いがあるのですがーー」
なんだろう。
隣でようやく回復しかけているハカセを横目に答える。
「なんでしょう」
「服を買うのに一緒について来てくれませんか?」




