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異世界追放業  作者: なきり。


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12/13

12件目【ラドナの休日2】

 今居るのは、ダンジョンをある程度潜った場所にある広い空間。四方が岩に囲まれていてあまり気分の良いものではないけど、ダンジョンというのは往々にしてこういうものだから仕方ない。むしろ休憩が出来る場所があって良かった。まだ疲れていないうちに休むのが冒険者の鉄則だ。ここまで進んできた道と、先へ進む道。それと、何か別ルートがあったのだろうか、横へと逸れる道が一つあるだけの殺風景な空間、そんな場所でもここまで歩いてきた閉塞感のある洞窟のような道と比べれば幾分マシ。

 そんな場所で私、ラドナは…


「いやぁー、このお肉美味しいっすね。モンスターの肉なんて食った事無かったけど、毒蛇ヒュドラの肉って鶏肉みたいな味なんだ」


「何言ってんの、ギルドで出てくる料理とかガッツリモンスターの肉使われてるわよ。…というか、なんで一緒にご飯食べてるのよ」


 前に追放した転生冒険者の『ハルト』とダンジョン内で焚き火を囲み、討伐したモンスターの肉を焼いて食事を共にしている。…ほんとに何で?


「え? いやぁ、俺が倒した毒蛇だし食べて良いかなと」


「アンタが勝手についてきて私1人で倒せる敵を全部勝手に倒して、なんならこの毒蛇の解毒も私がしてるのに、どんだけ面の皮厚いのよ」


「へへ、それほどでも…」


「アンタのいた世界では今のって褒め言葉になるの? 教えてあげる、この世界では今のは罵倒って言うの」


 最悪…なんでこんなやつと一緒に行動することになってんの? 私は1人で魔法を試しながら攻略したいのに勝手に実験台のモンスター殺していくし、ペラペラ喋るし鬱陶しいったら無い。そもそも追放された相手にこんなにグイグイ来るって、どんな神経してんの?


「アンタってそんな性格してたっけ?私の記憶では、追放する前はもっとオドオドしてた気がするんだけど」


「確かに、異世界に転生してはしゃいでたところを怖い人にボコボコにされて、抵抗しようにもスキルの使い方が分かんなくて泣いてたら皆さんに助けられてであの頃は引っ込み思案になってましたが…今はスキルもなんか強くなったし、転生してイケメンになったし! なんか女の子助けてモテてるし、最強ハーレム作れるんじゃね? って感じでイケイケなんすよ、俺!」


「…自信ない奴は嫌いだけど、自信過剰な奴はもっと嫌いだわ。私」


「ちょいちょい、手厳しいっすね」


「優しくした覚えは無いわよ」


 ふん、と鼻を鳴らしながら横を向く。確かに強くなっているし顔も悪くないが、相手の意思を踏み躙って勝手に付き纏ってくるような男のどこが良いのか。というか、転生してきたハズレスキル持ちは追放された後大体ハーレムを作る、って話を聞いたけど本当だったのね。ドニルが奴らにはスローライフとハーレム以外選択肢がないって良くない笑い方をしてたのを思い出すわ。


「というか、ラドナさん俺の『創生』見ても驚かないんっすね。パーティに居た時と全然違うのに」


「はぁ? 知ってるんだから驚くわけ…あ」


 しまった! 私はコイツのスキルが強化されてるの知ってるけど、コイツは私が知らないと思ってるから知らないフリしなきゃいけないんだった! 別にバレたところで何かあるわけじゃないけど、そういう活動をしてるってバレたら言いふらされる可能性があるし、それをパーティに入れるハズレスキル持ちに周知されると、私たちに追放されても復讐心とか見返したいって思いが生まれなくなるかもしれないから極力バレないようにってドニルに言われてたのに!


「なになにラドナさん、もしかして俺のこと気になって調べてた感じっすか?」


「ば、バカ言ってんじゃないわよ。雑魚スキルが何故か強くなったって噂になってるのを聞いたことあるってだけよ」


「えー、俺に気があると思ったのに」


「…もしかしてアンタ、私もそのハーレムに入れようとしてる?」


「まあ、そっすね。パーティに居た時皆さん優しくしてくれましたし、追放されたとはいえ受けた優しさは忘れてないんで、俺普通にラドナさんのこと好きですよ」


「あっそう、ハーレムの子達に言ってあげなさい」


「つれないなぁ…。で、ご飯食べながらで悪いですけど、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」


「何よ」


「俺を追放した理由ですよ。俺のスキル『創生』は確かに今より効果範囲も創れるものも小さくて弱かったし、皆さんについていける能力なんて何も無かった。でもそれってパーティに入れる前から分かってたことですよね? じゃあなんで、わざわざパーティに入れてから追放なんてことしたんですか?」


「………」


 やっぱり聞かれるわよね…。なんて答えるのが正解だろ。ここで下手なこと答えても、流石にこの場で殺しに来たりはしないだろうけど、なんらかのしっぺ返しを喰らうのは間違いない。

 確か元々の『創生』は剣や斧、盾みたいな装備品を何もない場所に作り出す能力で、作り出せる範囲は半径5メートルほどまで。だけど本人に戦闘能力がない上耐久値も切れ味も悪いから使い物にならない代物だった。だけど、調査報告が正しければ今の奴の『創生』は効果範囲を50メートルはある上、地面や壁なんかから強力な武具を出現させられる。

 さっき巨大蜘蛛にしたみたいに、地面から生えてきた剣で串刺しなんてのも簡単に出来る、正真正銘チートに分類されるクラスのスキルね。そんなスキルを持ったやつに逆上させるような事は言えない、ここは慎重に…

 …ん? なんか、妙な気配。地響き、辺りの魔力密度の変化、言いようのない空気感。私の経験上、こういう時は…


「ねぇ、何とか言ったらどうです? それとも何ですか?特に理由もないのに気まぐれでパーティに入れて、気が済んだからポイですか?酷いですよねぇ、言いふらしちゃおっかぶふ…?」


「黙りなさい」


 ペラペラとよく回る口に手を当て、小声でそう諭す。ここはB級のダンジョン、そう強い魔物は出てこない。…ただ、低位のダンジョンでも稀に、高ランクのモンスターは生成される。


「今から聞くことに正直に答えて。あと、大きな声は出すな。良い?」


「…なんです?」


「アンタ、ここら辺の魔物狩り尽くしたでしょ?」


「? はい、今日は女の子たち置いて素材集めに来てたんで。それが何か?」


「で、狩るときにあの『創生』使いまくったわけね?」


「はい、あんまり思い切り使える状況もないもんですから、試しがてら」


「はぁ…。パーティに居たときに言ったと思うけど、ダンジョン内は『元魔がんま』っていう、魔力の元となる成分で満ちてる。モンスターも、ダンジョンの核となる『元魔石がんませき』から発される元魔を分解して魔力によって形作られて生成されるし、元魔石の大きさによってダンジョンの、モンスターのランクが変わってくる」


「それが何か?」


「私たちが使う魔法もモンスターも、魔力によって構築されてるの。使った魔法も、倒して放置したモンスターも、分解されて魔力に戻る。そして漂う魔力は周りの元魔と同様に固まって、また分解される。私は『魔力強化』で他人より魔力が濃いから特に気をつけてるけど、強い魔法を使うと使用魔力が増えてダンジョン内に放たれる魔力の量も増える。つまり、普段は元魔石の大きさに比例するモンスターの強さが、外からの要因でその濃度を上げてしまうと…」


 ズシン、ズシンと、地響きは大きさを増してこちらへ近づいてくる。横道から迫ってくるその地響きに、流石にここまで近づけばその存在に気づくようで、不機嫌そうだったハルトの顔にも冷や汗が浮かんでいる。

 息を潜めた私たちに気づいているのかいないのか、どちらにせよソレはこちらへ確実に歩んでくる。じりじりと後ろへ後退りながら足音の方向から目を逸らさないよう神経を張り詰めていると、視界を遮っていた壁からのそりと、ソレが姿を現した。


「…ッ!」


「「「ぶふぉぉぉ…!」」」


 ハルトが放置したであろうモンスターの死骸と、それを倒した『創生』の残滓。それらが合わさり形を練って産み出されたのは、3つの首を持つ、毒蛇の上位種。Sランク相当の強さを持つ、『魔盛毒蛇マナランスヒュドラ』だった。


【補足情報】

 この世界において元魔は普遍的に存在し、呼吸や食事にも含まれてます。なのでベッドで寝たりご飯を食べたらMPは回復するし、元魔、および魔力の濃度が高いところでは息をするだけでじわじわ魔力を摂取できます。

 また、ダンジョンは長い年月を掛けてじわじわと元魔石の大きさに見合ったものが構築されます。生成中のダンジョンには結界がかかり、誰も立ち入れないし外にも出れません。結界を張るのにも魔力を使っているので、結界を張らなければもっと早くダンジョンを構築できますが、安全策をとるらしいです。


 毒蛇の肉はあっさりタンパクな味で、本当に鶏肉みたいな味で転生者に特に好まれてます。市場に出回っているのは元々毒がない蛇族のものか毒抜きされた毒蛇のものですが、フグの毒みたいな感じで下手したら死ぬので売る際は一度ギルドを挟んで解毒してもらう、もしくは解毒されてる場合は本当に解毒されてるか確認がとれないと売れません。ラドナは自力で解毒できますがギルドを通して売るとその分手数料がかかるため、量が多くない場合はその場で食べてます。

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