129 スッキリしたいでしょ? みやび視点
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ナギに連れられやってきた簡易保護施設。やや古びた感のある建物の一室。
なんとなくビジネスホテルを思い起こさせる部屋だ。簡素だなぁというのが第一印象。
なんでこんな施設があるのかと思ったけど、どうやら保護された異能力者はここでしばらく過ごし、護国機関に協力するかどうかを決めるらしい。
ナギはそんな風に言っていたけど、もし協力を拒んだ場合にはその異能力者はどうなるのかなとは疑問に思った。
さっき聞いた「去勢」という言葉が頭をよぎる。ミケネコたちは今後どうなってしまうのだろうか。
私が考える事ではないかと思いなおして、居室内のテーブルに持ってきた鞄を置く。明日は学校だから制服も持ってきたので、それはクローゼットにかけた。
さてと。気になっていたことを済まさないと。
さっきの戦闘で投げ飛ばされた私をナギが受け止めてくれたのだから、ダメージを負ってるはず。今も痛みを見せないようにはしてるけど、少なくとも打ち身は出来ているだろう。
ナギと隣り合わせの形で2人ベッドに座って、面と向かって声をかける。
「じゃあ、ナギ、服脱いで? とっととしちゃおう」
そう言うと、何故かナギがびくりと身をすくませた。
「っ!? ここで、する、のか?」
「ここじゃ嫌?」
医務室の方が治療道具が揃ってるから、とか?
でも私の能力ならそういうの要らないけど。もしかしたら治癒の異能を使わせたくないのかな。だとすると――。
「私じゃダメ、かな?」
異能を使わないで治療となると、湿布薬を貼るくらいしか思いつかない。そんなものでは完治も遅くなるだろうからできれば私の異能ですぐに治したいのだけど。
「そんなわけない。むしろみやび以外となんか嫌に決まってるだろ」
そうかぁ、異能力に対して嫌悪感があるわけじゃないのか。なら良かった。
「大丈夫だよ、すぐに済むから」
ただでさえ夜も更けて来たし、もしかしたら時間がかかる事を気にしてるのかと思ったけど、それでも首を縦に振ってくれない。
「……すぐ、は男としてはちょっと情けないな。いや俺も初めてだからどれくらい耐えられるかわからないが。しかしまだ職務が残っているし、あまり時間が取れないのは確かなんだが」
意味がよくわからないけど、治癒の痛みに耐えられるのかが気になるって事なのかな? 異能力による治癒なら痛みなんて全然感じないのに。
治癒能力を受けるの初めてみたいだから不安なのかな。確かに怪我が治っていくのって不自然で怖いかもなぁ。
「優しくするよ? それにナギも仕事に戻るのならスッキリしておきたいでしょ?」
どれくらい肩を痛めてしまったのか見てみなきゃわからないけど、打ち身状態で仕事なんて辛いだけじゃない。
ミケネコの手前、痛みを隠してたみたいけど人間一人あのスピードで吹っ飛んだのをまともに受け止めたんだから相当辛かっただろうに。
「スッキリ……」
気のせいか、ナギの視線が私の胸あたりに集中してる。衝撃をまともに受けたのは肩だけかと思ったけどあの時に胸部も打ってしまったのだろうか。
だったらなおさら心配だ。
「いや、ダメだ。こういうのはこんな場所で軽く済ませるものじゃない」と私からなるべく距離を取ろうとする。
ノラネコのような反抗的な異能力者に敵対する事もある仕事柄、異能力を享受するのに抵抗があるのだろうか。
「もう。さっさと済まそうってば。四の五の言わずにとっとと脱いでよ」
脱いでくれなきゃどこが痛いのかいまいちわからないし、治療しづらい。他人を治療するのも初めての事だし、なるべく患部を見なきゃ。
ナギの制服のボタンに手をかける。人の服を脱がせるのって初めてだからてこずるし、ナギは抵抗してくる。
「いいからやらせて!!」
暴れていたら余計に肩と胸の打撲が痛むだろうに。
悪戦苦闘していたら、正面から両肩に手を置かれた。そして軽く額に口づけられた。
ん? なんでこんな流れに?
「求めてくれて嬉しいし正直な所俺もしたいが、性急に事を進めたくない。君が本当に大事だから。後日ちゃんと時間を取ってからにしよう」
「……は?」
「……ん?」
「え、ゴメン、何の話?」
「したい、んじゃないのか?」
「したいよ? そりゃ。ナギが好きだから」
「俺もだ、だからこそ……」
「だから早く治療させてよ」
「――治療」
なんかナギが渋い顔になった。うん? なんでだろう。
「え? さっきからそう言ってるのに?」
「あ、いや……。みやびも今日は色々あって疲れただろうし、異能を使うのはどうかと思ってな」
私から視線を逸らしてるし、なんとなく声も上ずってる。
「自分の時は三途の川が見えてたくらいからの治癒で力尽きたけど、ナギの怪我程度なら大丈夫だと思うけど?」
「見えてたのか、三途の川が」
恐らくもう少しでもナギたちが到着するのが遅れていたら最悪の事態だったと思う。ナギの声が聞こえて意識が浮上したけど、あのままだったら気絶したまま絶命していたと思う。
「えっと、じゃ改めて。服脱いで」
「……わかった」
渋々といった感じで制服を脱いでくれた。




