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御厨ナギはいちゃいちゃしたい  作者: 希来里星すぴの


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115/115

115 新たな嫉妬 ナギ視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

(TOPページ)

https://note.com/kirakiraspino


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

 みやびの病室で久々の再会を噛みしめてる時に現れた加賀宮。みやびの病室をよく訪れているとは聞いていたが、その理由が分かった。


「――お前が、兄か」

 俺の発言を2人とも否定しない。

 加賀宮は眉をひそめて「ちっ」といつものように舌打ちをし、みやびはさっと視線を外して窓の外を眺めている。

 吹けもしないのに口笛を吹こうとして唇を尖らせている。

 加賀宮はともかく、みやびの誤魔化し方はなんだ。誤魔化しきれてないし、その方法さえ可愛い。

 深いため息とともにベッドから下り、横に置かれた椅子に座る。加賀宮も椅子に座ったのを見届けると腕組みしながら2人に問う。

「2人とも、いつから兄妹だと気づいていた?」

「……子供の頃にどうやら記憶を操作されていたみたいで今まであやふやな記憶だったんだよね。でも生死を彷徨っていた時にその封印が解けたみたいで、ここで目を覚ました時に色々と思い出したよ」

 みやびが子供時代の話をする時に、痛みに耐えるような表情を見せていたが記憶を操作されていたのか。幼少期のトラウマか何かだと思っていたが。


 加賀宮に「次はお前の話だ」とばかりに視線を送ると観念したように口を開いた。

「お前が『番いが出来た』と写真をシオンに見せていた時だ。こいつ、ガキの頃から顔が変わってないんだ。その茶色の髪の毛と相まってすぐにわかった」

 みやびは子供の頃からこんなに愛らしかったのか。

 ――いや、今はそういう話じゃなく。

「そんなに前から」

 かつて加賀宮のみやびに対する行動に疑問を抱いたが、そういうことだったのか。人との関わりを積極的に持とうとしない加賀宮にしては色々とおかしい行動を取っていると思っていた。食べ物に執着を見せない加賀宮がみやびが調理したというカレーに興味を示していたり。

 いつだったかみやびが寮に来た時にだって送るために車を貸してくれたりと、気にかけていたな。

「こいつが5歳まで一緒に住んでた。違う名前を名乗っていたり、俺の存在も一切覚えてないのを不審に思い色々と調べた結果、記憶を消されている可能性が高いと思った」

「おい、それは――」

 戸籍乗っ取りの話をみやびの前でするのか?

「すでに知ってる。というかこいつの方から俺を兄と呼んできて『本当の名前を教えてくれ』と乞われた」

「そうだよ。私の本当の名前も聞いたよ」

 加賀宮の言葉を受けてみやびは力強く頷いた。

 みやびの母親の名前が藤原忍ではなく、九条涼音だったようにみやびにもある本当の名。

「本当の――名前……」

 思わず呟いた。

 彼女の全てを知りたい。その思いが抑えきれずに、ちらりとみやびを見る。

「あ。ナギには教えないから」

「なんでだ!!!!!!!!!!!!!!」

 思わず叫び、がっくりと項垂れてしまった。

「ゴメンね」と、みやびは俺の左手を取り「なんていうか、これは……私の罰だから。みやびちゃんの人生を奪った罰」

 そう言って儚げに、切なげに笑った。

「しかしそれは――」

 君の母親の罪であって、君が受けるべき罰ではない。そう言葉に出そうとしたら、俺の左手の番いの指輪を彼女の指が優しく撫でた。

「もう決めたことだから」

「……そうか」

 そうキッパリと言い切られたら、何も言い返せない。彼女は母親の犯した罪を知り苦しんだ。そして自分がそれを共に背負おうとしている。母と娘、2人で暮らしてきた思い出、そして情があるのだろう。たとえ番いだとしても俺が立ち入るべきではない。

 みやびの手に俺の右手を軽く乗せる。

「わかった」

 いつか彼女が本当の名前を俺に明かしてもいいと思う時まで待とう。焦る事はない。


 それにしても、そうなるとみやびの本当の名前を知るのは他には加賀宮だけか。

 少し嫉妬を覚えるが、血が繋がらないとはいえみやびにとってこの世に残る最後の「家族」だろうしな……。

 加賀宮は弘原海先生の所に来た時には天涯孤独だった。

 それから考えると、父親もすでに他界しているのだろう。


「それにしても、何か用事? お兄ちゃん」

 お兄ちゃん!?

 あれからまだそう時が経ってないがなのに、加賀宮を親し気に「お兄ちゃん」と呼ぶ。

 いや、子供時代の記憶を取り戻したのなら、そう呼んでいた記憶を懐かしんで思わず口を衝いて出たのかもしれないと心を落ち着かせようとする。

「ああ、こないだ話していた店のアップルパイを持ってきただけだ」

 いつの間にそんな話まで? 俺が面会謝絶だった時に加賀宮が足しげくここに通っていたとは噂に聞いていたが、そんな個人的な話を深くしているとは思わなかった。

 加賀宮が右手に持っていたケーキの箱を掲げる。それをみやびが満面の笑みで受け取る。

Quincyクインシー」と言う店名が箱に書かれているが、度々ネットニュースで話題になるほどの名パティシエが経営している店だ。

「わあ! ありがとう。しかしよく買えたね。いつも大行列が出来て、即売り切れる程の有名店なのに」

「休みの隊員に買いに行かせた」

「え、酷い。職権乱用じゃない」

「この間規則違反したからその懲罰だ。俺の仕置きにしては温い方だ」

「どっちにしても公私混同してるよね? シオンさんも怒らなかった?」

「あいつ、自分の分をついでに買わせてたぞ」

「弐番隊って人使い荒いな」と、みやびがあきれたように笑う。

 仲睦まじく話す様はこれまで生き別れていて、つい先日まで他人だと認識していたとは思えないほどだ。

 そして前までと違い、みやびは俺と話すような砕けた口調で加賀宮と接している。

 俺だけの特権だと思っていたのに。


 ケーキの箱を開けたみやびが顔をほころばせた。

「わぁ美味しそう。あ、もう切り分けられてるんだ」

「ここには防犯上ナイフが持ち込めないからな。面会可能になった途端にナギが早速来るだろうと思ってあらかじめ切っておいたのだが。……まさかこんなところで妹を押し倒してるとは思わなかった。節操が無いのか、てめえ」

 加賀宮が俺をじろりと睨む。

「お前とは違って俺は久々にみやびに会えたからな。我慢なんてできるか」

 お前は俺が会えなかった期間もずっと会っていたのだろう? と嫌味を込めた。

 彼女の好物がアップルパイだと知るくらいに話をしていたのだろう、羨ましすぎるぞ。俺ですらこの間彼女の友達に聞いて初めて知ったくらいなのに。

「いや、そこは我慢しようよ。節度あるオトナとして」

 みやびに真顔で突っ込まれてしまった。

 さっきは「とびきりえっちなキスをしていい」と言ってたのに。後で思いっきりえっちなキスをしてやろう。


 そんなことを話していたら、昼休み終了を知らせるチャイムが流れてきた。

「ん、と。もうこんな時間だけど、ナギ時間大丈夫? というかちゃんとお昼ご飯食べた?」

「ここに来る前に軽く済ました。それに急ぎの仕事はないから、すぐに戻らなくても問題ない。もし何か対処しなければならない事案が発生しても天方に全て一任している」

「え、酷い。職権乱用じゃない。……って警護隊の隊長ってみんなそんな感じなの?」

 非難めいた視線で見られてしまった。加賀宮と一緒にはされたくないな。


「ナギ、てめえはとっとと戻れ」

 加賀宮は不快さを隠さず言い、邪魔者を追い払うように手を振った。

「お兄ちゃんもだよ」

「俺は仕事を調整して昼休憩をずらして来ているから問題ない」

 そうだな、俺を避けるためにここ最近ずっと昼休みはわざと時間をずらしていたからな。

 何故かと思っていたが、みやびの兄であるという事を俺に説明するのが面倒だったからなんだろうな。


 どちらにしても加賀宮が病室に居座るつもりなら2人きりにはなれないから退室するとするか。

「あ、アップルパイ、ナギの分を持って行く?」

「いや、ここで2人で食べたい。15時の小休憩にまた来る」

 加賀宮を牽制するようにわざと「2人で」と強調する。

「そっかあ。うん、待ってるね」

 みやびは満面の笑みで言ってくれる。

 可愛い。

 部屋を出る前に軽く口づけしたいが、流石に加賀宮の手前できない。当の加賀宮は「早く行け」とばかりに視線を送ってくる。


 そうだ。

「加賀宮、今日は寮に帰ってこい。話がある」

「ちっ。――わかった」

 俺の意図が読めたのだろう。

 彼女について査問が開かれる予定だと長官から内々に連絡を受けた。

 異能力者であるみやびはこのままだと保護・監視対象として鳥籠に入れられる。それを回避するために策を練らなければならない。


「うん?」と小首をかしげるみやびには「なんでもないから」とばかりに微笑む。

 長官にはみやびを召喚するのはやめてもらった。彼女には心労をかけたくないし、内密に俺と加賀宮でもってこの問題を処理しなければ。

 護国機関を敵に回してでも、みやびの籠入りを阻止しなければならない。

挿絵(By みてみん)

※AI生成イラストです

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