第七十二話
ユウ先輩と共に地下室に行き、閉じ込められたメーヌちゃんの母親、ヘレフォードさんに会えた。
色々現状を確認していると、誰かが地下室に降りて来た。果たして敵か味方か?
俺達は部屋の隅にミラージュをかけて隠れている。
降りて来たのは、ゴテゴテした着飾った鎧を男だった。その後ろにはユウ先輩が吹っ飛ばした副騎士団確か名前は?
「オンゴールよ、誰かいるか?」
「いえ、私の感知では何も感じません」
「ふっ、お前程の猛者が感じないなら誰もいないのだろう」
いやいや、ここにいますよー。ってか猛者ってアイツ、ユウ先輩にワンパンされてたのに。あれで猛者なのかー。
「何しにきたのですか。リムーザン騎士団長」
「おや、洗脳が解けているのですね。やはり何者かが潜入したのでしょうね」
「しかし、なら何故ヘレフォードを連れ出さなかったのでしょう」
「おそらく、この檻を開けれなかったのでしょう。これには強固な防御魔法がかけられていますから」
「成程、流石はリムーザン騎士団長!」
「ハッハッハ、私ぐらいになると幾つもの仕掛けを施すものなのだよ」
「貴方方は一体何をするつもりなのです。私をこんな所に閉じ込めて!」
「・・・戦争ですよ。隣街との戦争を起こし、貴方にはそこで死んで頂きます。そして、そこで私達リムーザン騎士団が活躍し、次の神器所有者となり街長として君臨しましょう」
「貴方はそんな下らない野望の為に民を犠牲にするのですか!」
「下らないとは何ですか。権力を握りたい。誰でも思う事ですけどね」
「その為に民がどうなってもいいと!」
「民などほっておいても増えて行きます。私達が管理して行きますよ貴方に変わってね」
「勝手な事を!貴方の野望など必ず阻止してみせます」
「出来るものならしてみたらいいでしょう。この檻から出る事はできないでしょうけど」
「その通りだ!更にお前はリムーザン騎士団長によって洗脳されるのだからな」
「洗脳?一体どうやって!」
「これですよ!コレ!」
リムーザン騎士団長は手甲を外し、黒い石の付いた指輪を見せる。そしてヘレフォードさんに向けて見せつけた後、一言こう言った。
「では、おやすみなさい。貴方が次に目を覚ますのは戦場ですよ」
それを言い終わった後、ヘレフォードさんの瞳から光が消えた。再び人形の様になっている。
「よし、コレで問題ない。オンゴールよ戦争の準備はどうだ?」
「今晩には出発出来ます。どうしますか?」
「では、今晩出発しよう。アヤツにも連絡しておけよ!」
「はっ!了解しました!」
そんな話をしながら二人は地下室から出ていった。俺達は音が聞こえなくなってから暫くしてから喋り出した。
「さーて、どうするか?」
「ヘレフォードさんはどうします?」
「ぶっちゃけ、戦争までは生かされてるから、このままにしとくしか無いな」
「そうっすね」
「とりま、ノリ達と合流するか。多分、明日か明後日には戦争が起こるからな」
「了解っす!」
俺達は後ろ髪を引かれる思いでヘレフォードを置いて家から出て街を出ていった。
街を出て、待機しているノリ先輩達と合流した。
俺達を見つけるとメーヌちゃんが近寄ってきた。
「ユウさん!お母さんは無事でしたか?」
「無事だったぞ。手紙も渡してきた」
「そ、それでお母さんは何処に!」
「今はまだ街の中だ。色々あって連れては来れなかった」
「そ、そうですか」
「それでユウ先輩、何があったのですか?」
「それがな・・・」
ユウ先輩が街の中であった事を話した。ヘレフォードさんが地下室に閉じ込められた事。しかも洗脳されている事。今晩には隣街に向けて進軍が始まるという事。
「そ、そんな!お母さんがどうしたら!」
「もしかしてあたしのお母さんも!」
「多分だが、二人の母親は洗脳されて戦争に駆り出されるだろうな」
「ど、どうしよう。オオルリちゃん!」
「私もわからないよ!どうしよう!」
「やっぱりこれしかないよ!」
「でも私、一枚しかないよ!」
「それでもお願いしてみよう!それしか無いから!」
二人の子供がお互いに話し合っていると思ったら急に二人揃って俺達の方に来て土下座をした。
「お願いします。冒険者チームアース様!どうか戦争を止めて私達のお母さんを助けて下さい」
「お金はこれだけしかありません。足りなかったら後でお母さんに出して貰います!どうかお願いします」
二人は金貨を一枚づつ出してきた。それを見たマシロも二人に並んで金貨を一枚出して土下座してきた。
「師匠!私の友達のお願いをどうか聞いて下さい!お願いします」
三人の子供に土下座される。この光景を他の人が見たら俺達途轍もない悪党だな。
「おいおい、俺達に戦争に介入しろってか?金貨一枚で?安く見られたもんだぜ!だがな、乗りかかった船だ。その依頼受けてやるよ!」
ユウ先輩はそう言ってマシロの前に置いてある金貨を手に取る。
「まあ、此処まで関わって知らん振りは出来ませんよね」
ノリ先輩はオオルリちゃんの前に置いてある金貨をとる。
「そうっすよね。俺等そこまで薄情じゃ無いっすから!」
俺はメーヌちゃんの前の金貨をとる。
「おし、やるぞ!目的は戦争に武力介入だ!行くぞ!」
「それに彼女達の母親の救出も依頼ですよ!」
「腕がなるっすね!」
「ほら、立てよお前達!戦争を止めに行くぞ!」
「「あ、ありがとうございます!」」
「よかったね。オオルリちゃん!メーヌちゃん!」
「マシロちゃんもありがとう!」
「ありがとうマシロちゃん!」
「いいよ!だって私達友達だもん!」
子供達の、美しい友情を見ながらユウ先輩が俺に言った。
「よし、ダイ魔力飛行機で移動だ!」
「分かったすけど、何処に行くっすか?」
「そうだな。ノリ、どの辺か分かるか?」
「ユウ先輩、確認ですが今晩から軍は出発するんですよね?」
「ああ、アイツ等はそう言ってたぞ」
「そして、向こうにも連絡するって言ったのですよね」
「言ってたな」
「つまり、両方が出発して、ほぼ同じ行軍速度ならぶつかるのはあそこでしょうね」
「あそこっすか?」
「決闘の平野でしょうね。二つの街の中間地点ですし、あそこなら見晴らしもいいので」
「そうだな。一応空から両軍を確認してから細かい激突場所を確認しよう」
「じゃあ、とりま飛行機出しますっすよ!」
俺は前回と同じ飛行機を作った。そして全員で乗り込み、両軍の確認を行った。するとノリ先輩の読み通り決闘の平野で両軍がぶつかる事になりそうだ。
俺達はぶつかり予定地点に先回りをし、拠点を作り話し合いを行った!
「さて、作戦はどうするか?」
「さっき上空から両軍を確認した感じ大体両軍五百人ぐらいでしょうかね?」
「おおよそそれくらいじゃないっすか?」
「ただ、大半は洗脳された街民だろうから、先ずはそいつ等の洗脳を解くとするか!」
「何かいい方法があるっすか?」
「おう、それは任せとけ!その為に、最初は俺一人で相手をする!」
「えっ?ユウ先輩で両軍相手にするっすか?」
「まあな」
「それは些か無謀なのではないですか?」
「まあ、聞け!今回、今の所敵は大臣一味とリムーザン騎士団の予定だ」
「そうっすね」
「けど、あの指輪を与えた奴は、未だに正体すら分からない」
「そうですね」
「もし、あの指輪を与えた奴がアイツラだったら流石に俺だけじゃ厳しい!」
「アイツラってもしかして!」
「ネコショウやセッショウ、オロチ達ですか。可能性はありますね」
「だろ。今回出てくるか分からないが、全員が出ていたら対応出来ないと思う」
「それはそうっすけど!」
「それにお前達にはそれぞれ、街長を守って欲しいと思う。大臣とか騎士団長が殺るって言ってたからな」
「分かりました。が!もしユウ先輩が危険だったら私達も動きますよ!」
「おう。もしもの時は頼むな!あと、なるべく殺しは無しにしようや」
「何でっすか?」
「今回の行軍は、ほとんど洗脳されて連れて来られたら街民だ。殺る必要はないだろ。下手に殺しても遺恨が残るだけだしな」
「それはそうっすけど」
「まあ、あくまで自分達の命を大事にだ。無闇な殺しは辞めとけって話だ」
「そうですね。それであの子達はどうしますか?」
「マシロに任せよう。マシロ、お前の友達だ。しっかり守ってやれよ!」
「勿論です!頑張ります師匠!」
「ノリ、ダイ。マシロ達も頼むぞ!」
「勿論です。任せて下さい」
「了解っす!」
「それでノリ。此処に両軍が来るのは何時ぐらいだ?」
「そうですね。二日後の朝一でしょうね。早ければ明日の夜でしょうけど流石に夜に戦闘はしないでしょうけど!」
「それなら少し休むか」
俺達は一日ゆっくりできた!おかげで体力回復だ!更に小山を作って少し簡易な要塞を作れた!
そしてノリ先輩が予告した二日後の朝!両軍が遂に現れた!
「おー、ノリの予想ぴったりだな」
「凄い数っすね!」
「だなー、おっ!両軍一人が前に出てきて何か言ってるぞ」
「開戦前の口上でしょうか?両軍あくまでも自分達の方が正しいと言ってますね」
「何をいってんすかね?正しい戦争なんてないっすのに!」
「ダイの言う通りだな!じゃあ、行ってくる!」
そう言ってユウ先輩は魔導甲冑を起動し、高くジャンプした!目的地は両軍のど真ん中だ!
「では、ダイ。作戦通りに!」
「了解っす!」
俺はユウ先輩の右側に!ノリ先輩は左側に!それぞれファイヤーウォールを発動する。
するとファイヤーウォールの後が焦げた線となった!
そしてユウ先輩が大声と共にど真ん中で着地する!
「両軍に告げる!今すぐに軍を引け!今引いた線を越えたらぶちのめす!」
ユウ先輩の姿を見たララードルーキー軍の方から声が聞こえた!
「な、何だアイツは!」
「あの声、アイツはまさか!」
「知っているのかオンゴール!」
「私達を攻撃した冒険者だったと思います!」
「何!じゃあ、オオルリを取り返した男か!」
「ええ、私と引き分けた男です!」
引き分けたって!アンタワンパンやったやないですか!
更にエクリアデュナレス軍の方からも声が聞こえた。
「何者だあの男?」
「恐らくですが、北の小屋を襲撃した奴等ではないかと!」
「ならばメーヌは?」
「奴等の手の内かと」
「面倒な事を!厄介な奴等だ」
そんな声を聞きながらユウ先輩が右脚を振り上げる!
「洗脳された街民の方々!これで目が覚める事を祈るぜ!喰らえ!振動脚!」
ユウ先輩が魔力を込めた右脚を振り下ろすと、ユウ先輩を中心に魔力の波が地面の下を通る!するとまるで地震の様に全体に広がる!
「これは、流石ユウ先輩!規格外な事をしますね」
「でも、これで!」
両軍の方を見ると地震によって洗脳が解けている。
街民が口々に何かを言っている。
「こ、ここは何処だ?」
「俺達は一体?」
「あ、あれは隣街の連中じゃないか!」
「おいおい、どうなってんだよ!」
ザワザワとする街民!それを見ていた騎士団や大臣が慌てだす。
「ま、まさか洗脳が解けたのか!」
「先程の地震で解けたみたいです!大臣どうしますか!」
「慌てるな。確かに街民は洗脳が解けたがまだ我々には街長がいる。」
「そ、そうですね!」
「まだよ!まだこれからよ!」
その様子を見ていたユウ先輩が一言呟く。
「さーて、この後どうなるか!やるだけやってやるか!」
遂に開戦された戦争!小さな子供の依頼を受けた俺達!無事にこの戦争を終わらせる事が出来るのか!
街民、街長を助けられるのか!
こんな事をしていて俺達は還れるのか!
次回、終戦!
幼子の涙が流れる。果たしてそれは喜びか、それとも悲しみか!




