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巻き戻し。

 わたしは野良猫です。名前はありません。

 空腹のあまり匂いに釣られて、そのまま檻の中に閉じ込められた、ただの野良猫です。

 そんなわたしに知らない人間は熱湯を浴びせました。何度も。何度も。


 そして、今度は熱湯を浴びせた人間とは別にもう一人、別の人間が居ました。髪の長い人間です。

 この人間もわたしに酷いことをするのでしょうか? わたしは檻の中にも関わらず後退りました。


「ちょっと、この子に何しようとしてるの?」


「熱湯ぶっかけてその様子愉しんでるの。お前もやる? 面白いぜ」


 人間達が何か言い争ってます。


「はあ!? 何ふざけたこと言ってるの。それって動物虐待じゃない!」


「ちっげーよ。駆除だよ駆除。害獣駆除。だから虐待にはならねーよ、馬鹿か」


 よく分からないけどあまり良い雰囲気じゃないことは分かります。


「馬鹿は貴方よ! これは立派な犯罪よ。もう、信じらんない。貴方がそんな屑だとは知らなかったわ!」


 髪の長い人間がそういうと、いつもの鍋を持った人間を突き飛ばしました。その反動で人間は持っていた鍋を自分の足に落としてしまいました。


「うわっちゃあああああ!」


 そんな人間を余所に、髪の長い人間が近付いてきます。

 あなたもわたしに酷いことをするのですか? わたしは檻の中で更に後退ります。


「大丈夫? もう怖くないよ。酷い目にあわせちゃってごめんね」


 そう言うと髪の長い人間は檻を開け、ゆっくりとわたしを抱き抱えました。怖くて逃げたいけど、痛くて、熱くて、身体を動かせません。


「おい、何てことしやがる! 警察に行って被害届出すからな! それと足の火傷の治療費も払ってもらうから覚悟しろよ!」


「良いけど、私も警察に言うわよ。この人は猫を虐待してました。火傷は猫を虐待するための熱湯を足に被ったからですってね。それに第一私は貴方をただ押しただけ。そんな危ない物を持ってる方が悪いんじゃないの?」


 髪の長い人間がそう言うと、いつもの人間は黙ってしまいました。


「可哀想に。火傷もしてるよね? 病院に行って治してもらおうね」


 髪の長い人間はわたしを抱き抱えられたまま、その場を立ち去って行きました。


 


 それから暫く経ちました。

 あのあと、あの人間は警察という悪い人間を捕まえる組織に捕まったそうです。わたし以外にも同じようなことをしていたそうです。ただ、刑罰が軽いそうですが、何でも個人情報が流出したとかで、仮に出てきた(何処から?)としても、もうこの辺には居られないだろうとのことです。


 そしてわたしは――


「おーい、ご飯だよー」


 あの時の髪の長い人間と一緒に暮らしてます。あの人はとても優しくて毎日ご飯をくれます。もう何日もご飯が食べれないような事はありません。

 わたしは髪の長い人間、わたしの飼い主の足に首を擦り付けます。


 わたしは今、幸せです。

どうも、作者です。

この話はとあるツイートを見て思いついたものです。それは子供を身籠った野良猫が虐待され、死んでしまうまでを野良猫視点で語られている動画です。実は一話は子供を宿しているかいないかの違いだけで、殆ど同じです。更に言えば参考にしたその話も実話を元にしています。

で、そのツイートのリツイートでは、同じ目に合わせてやれ、というコメントが多く、じゃあそうしようと。なら折角だから猫に復讐してもらおうと相成った次第です。

因みに、二話の後日談ですが、あのあと、件のスレの住人は次々と不可解に死を遂げます。当然、死に追いやったのはあの猫です。そして遂にはスレ住人は誰も居なくなる――とまあ、そんな感じです。

最終話である今話は、やはりこの野良猫には幸せになってもらいたいという作者のエゴです。時間が巻き戻っているからタイトルが『巻き戻し』です。


この話はとても短く、全話合わせても長めの短編小説より短いものになってます。もっと長くすれば良いじゃないか、と思われるかもしれません。けど自分はこれで良いと思ってます。


もし、この話で動物虐待駄目ゼッタイ! と思われてくれたら幸いです。


それでは!

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