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人工知能との生活4

すいません!すぐあげると言いつつ遅れてしまいました・・・。

【修二。カメラを起動したまま胸元のポケットにしまっていただけませんか?丁度、カメラの部分が外に向くように】

それじゃあまるで盗撮犯のようではないか。もし職務質問でもされたら言い訳のしようがない。携帯に言われてやりました、なんて言ったら精神科にでも連れていかれそうだ。けれども、外の景色を見たいという目的を果たしてあげるためには効率的だ。しぶしぶ胸ポケットに忍ばせる。

 「くれぐれも音声はなしで頼む。伝えたいことがあったら通知形式にしてくれ」

 交換条件に無音声であることを要求した。家から出るときにも伝えたが、再確認として今一度言う。

 【わかりました】

 ピコンという通知音が聞こえて、携帯の画面を見るとメッセージが入っていた。送信先は文字化けしていてよくわからない。システムをいじった代償か、もし壊れたらどこに修理に出せばいいのか、見当もつかない。

 早朝の通勤道。365日の内半分以上、この時間帯に通行している。あたりを見回してみるが、相変わらず人は少ない。同じように会社に向かっているサラリーマン・OL。ごみの片づけをしているコンビニの店員。夫を送り終えた主婦。ぴっちりしたトレーニングウェアで走る早朝ランナー。そして、シャッター街と化した商店街。

 体ごと向けていたのでその光景を見たはずのコルタナからメッセージが来る。

 【修二。あの商店街が開いていないのは勤務時間外だからでしょうか】

 同じくメッセージで返信しようか迷ったが、電話中のように携帯を耳元にあて、さも通話しているかのようにした。これなら独り言を言う寂しい独身とは思われないだろう。独身は合っているか・・・。

 「いいや、あそこの商店街は時間が過ぎても開かないよ。閉店してるんだ。ここ最近じゃ商店街に行く人も減って、経営する人も高齢で辞めてって、その二つが相乗効果を発揮してこの有様よ。ここに引っ越してきたから知らんけど、きっと昔は人がたくさんいたんだろうな」

 ピコン。画面を見る。

 【繁栄と衰退。人には付き物ですね。しかしこう物悲しくなってしまうのはなぜなのでしょうか。淋しい。そう、この表現がしっくりきますね】

 「それは・・・形は変わらないからだろうな。中身はなくても、外見は繁栄したときのまま。昔と今を比べた時の差が、そう感じさせるんだろうよ」

 少し寂寥の気持ちを感じながら言葉を紡いだ。商店街のほうは変わっていない。商売をし、人と人とをつなぐ場所。変わったのは、その中身の人間のほうだろう。時代や流行などによって簡単に変わってしまう人間の心。

 「どうだ、現状を目撃した感想は?」

 会社まであと半分の距離か、というところで携帯を耳元にあて問う。何を考えているのかさっぱりわからないが、少し間を開けてからメッセージが届いた。

 【イメージと違う部分はあります。ですがやはり美しいと思いますね】

 「綺麗か?こんなコンクリートと排気ガスまみれの景色が」

 ピコン。

 【それは修二がずっとこの景色を見てきたからです。データしか見えなかった私には、とても美しく見えるのですよ】

 そういうものか。甘いものをずっと食べていると胃もたれしてしまうが、途中でしょっぱいものを食べるとすごくおいしく感じるみたいなことか。俺にとっては胸やけの景色も、コルタナには高級スイーツに見えているんだろうか。

 そこから数十分歩きようやく会社に到達した。事務所へと続く道の途中、立ち話をしている社員が何人かいたので挨拶をして通り過ぎる。

 「おはようございます、今田さん」

 そのうちの一人は食堂で昼飯を共にしている後輩だった。こんな朝っぱらから人付き合いのいいやつだ。後輩は立ち話から抜け出し駆け寄ってくる。

 「今田さんに話したいことがあるって言って抜けてきましたっ」

 高校卒業したてのさわやか笑顔を向けてくる。俺にもこんな時代が・・・、あったかなあ。

 「いいのかよ、抜け出して」

 「つかまってたんですよ~。俺まだタイムカードも押してませんって」

 「そりゃ災難だな」

 そんな話をしながら事務所に入りタイムカードを押す。時刻は八時前。まだ朝礼まで時間があるか。

 「よう。二人とも」

 声に振り向くと、同じく昼食を共にしている同期がいた。後輩は「おはようございまーす!」と健気にも明るく挨拶を返す。

 「おっす、早いじゃん」

 同期は担当の仕事が暇なのか、寝坊癖でもあるのかよく遅刻してくる。この時間帯にいないことも多いので、タイムカードを押しに来た社員も珍しそうな目で見ている。

 「今日は彼女が放してくれたんだよ」

 いかにも嘘百パーセントだが、彼女自体はいるので腹立つことこの上ないジョーク。「そうですかい」とだけ返答して自分の仕事場へと向かった。後輩はまだ同期と話したいらしく、事務所に残った。

 仕事場のロッカーに荷物を入れたところで、沈黙を保っていた携帯がピコンとなった。

 【あの方たちが修二の仕事仲間ですか】

 見てたんならわかるだろ、と思うがその文面から感情を読み取ることは難しく「そうだよ」とだけ返答。

 ピコン。

 【私には他のパソコンとコミュニケーションをとる手段がないので、すこしうらやましく思います】

 とれたところで、他のパソコンにもコルタナのようなAIが搭載されているとは思えないが。しかし、コルタナにとっては他のパソコンが仕事仲間といえる。俺にとっての同期や後輩のような。

 じゃあ俺は、コルタナにとってどのような存在なのだろう。俺は、親友のように感じているような気がしなくもないがAIのこいつにとってはどうなのか。

 思考を遮るように始業のチャイムが鳴り、朝礼が行われる正面玄関へと急いだ。


今回から直に打つのではなく、メモに書いたものをコピーして貼り付けるようにしました。文が消えるショックがだんだんと堪えてきたので(*_*;

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