間章五章3話 遠き日の……
「おお成功だ! これで勝てる!!」
「しかも6人も居ますよ!」
始まりはよくある異世界召喚だった……。
テンプレよろしく異世界に召喚された僕たちは、これまたテンプレよろしくこの召喚された国の王様と謁見して国を守ってくれと頼まれた。
でも、僕たちの中にその王様の言葉を真に受けて勇者として頑張ろうなんて馬鹿は居なかった。
この度、異世界召喚なんてものに巻き込まれたのは僕、水上亮太、幼馴染の美月穂乃香、親友の日村仁、穂乃香の親友で僕も一応友人という事になるのかな? 上土狩弦子、親交自体は無いけどクラスでもオタクで有名な五百木錬、こっちも親交は無いけど、関西弁の守銭奴な為憶え易かった金城康成の6人だ。
この世界に召喚された事で全員何かしらの能力を与えられているらしい、僕も自分に与えられた能力がどんな物なのかは自然と理解できた。
仁の能力は剣聖、身体能力が高くなり剣を操る技能が上がるらしい。魔物なんてものが居る世界じゃ、単純だけど有用な能力だろう。
穂乃香の能力は結界、この世界に来てから感じられるようになった魔力を消費して強固な結界を展開する能力で防御なら誰にも負けないんじゃないだろうか?
弦子さんは狩人っぽい能力らしい。
五百木君は何か物を作ったりする能力。
金城君はお金が多く必要な能力らしい。
そして、僕の能力は魔物を操る能力だったけど、魔物を完全に敵と認識しているこの世界の人間には打ち明けられない能力だった。
召喚された城での訓練は僕たち召喚された者にとってそれ程大変なものではなかった。身体能力がこの世界の人たちと僕たちとでは根本的に違っていた。と言うよりはこの世界に来たことで僕たちの身体能力が上がっていると言えるのだろう。
僕たちの中でも、仁は戦闘面に特化した能力のため訓練なんて有って無い様な物に見えた。
対する僕は、魔物を操ると言う能力上自身の能力はそれ程強化されていないようで他の召喚された皆と比べると少々見劣りしてしまう。その上僕の能力はこの世界の人には言えないから、能力も無く、戦闘能力も召喚された者の中では低い出来損ないな奴と言う扱いになってしまっていた。
それでもこの世界の人間位なら簡単に倒せる位の能力は有るんだけどね。
訓練を順調にこなした僕たちはすぐに戦場へと駆り出される事になった。
戦場と言っても魔物や盗賊の退治、偶に貴族の護衛なんて馬鹿げた物もあったけど、基本的には国を守ると言う方面で活躍する事になった。
そんな中、金城君は商売を始め瞬く間に莫大な富を築き、五百木君は自室に怪しい機材を大量に持ち込んで引き篭もってしまった。まぁ、五百木君は時折部屋から出て来て便利なアイテムを僕たちに提供してくれるので、物作りに没頭しているんだろうと言う事は分かった。仁に言わせれば実験台にされてるんじゃないかって事だけど、その疑いを払拭するように、五百木君が提供してくれたアイテムは本当に役に立つ物ばかりだった。
とまぁ、2人の行動の変化が有り、魔物退治なんかに駆り出されるのは残った僕たち4人になった。
異世界に大分馴染んでいるように感じるけど僕たちは、衣食住で都合が良いので王国の方針に従いつつも元の世界に帰る方法を探していた。
ある日、問題無く魔物退治を終えた僕の前に一匹の魔物が現れる。その魔物は猪の見た目で牙が剣の形をした物騒な魔物だった。でも、僕の前に現れたそいつは満身創痍といった具合で全身から血を流していた。
僕は魔物を操る能力のせいなのか、その魔物が助けを求めているような気がして思わず五百木君の持たせてくれた回復薬をその魔物に使ってしまった。
傷の回復した魔物は僕に懐き、僕の最初の従魔となった。
それから、他人にばれない様にブルトと名付けた魔物と特訓や魔物退治を繰り返していたけど、他人にばれずに上手くやるなんて事は不可能だった。
魔物を従える、操る能力を知られた僕は召喚されたその国から追われる立場になった。仁や穂乃香は僕を庇ってくれたけど、結局、僕はブルトと共に国を抜け出す事にした。
仁たちとは分かれてしまったけど、国の追っ手から逃げ回る道中で能力を隠す必要も無いので、ブルト以外の魔物も仲間になった。そして国境を越えてしまうとあの国も簡単には追って来れないのか襲撃は驚くほど少なくなり、言葉は交わせないけどなんとなく言いたい事やこっちの伝えたい事の分かる仲間になった魔物たちとの旅は楽しいものだった。
暫く気楽な旅を続けた僕たちは、ブルト以来の転機に遭遇する。
僕たちはこの世界で魔王と呼ばれる存在に出会ってしまった。
「目が覚めた?」
意識が覚醒して始めに聞こえてきたのは、甘くて優しい声……。僕が最後に友誼を交わし、他の妻や仲間たちが逝ってしまってからもずっと側に寄り添ってくれた黒い竜の声……。
「あ……どれぐらい……経った?」
おそらく久々に意識が覚醒したのだろう。けど、酷く億劫だ……何か懐かしい夢を見ていた気がするけど……昔の事はもう殆んど思い出せない。
「だいたい……日、前より長くなってる」
眠っている時間がどんどん長くなってきているってことは、多分もう限界なんだろう……。どの道、身体は殆んど動かせない、精神的にも磨耗している……こんな状態でも自分のことなのに他人事にしか思えない。
「状況……は?」
このやり取りはもうお決まりになっている、知った所で今の僕にできることなんて何も無いのに。
「異世界から勇者が召喚されたわ、もうすぐ戦場に来るんじゃないかしら?」
「勇者……」
懐かしくも忌まわしい名に、思わず声が漏れる……勇者、このタイミングで僕の所へ来るか……この世界には未だに忌まわしい儀式が残っているみたいだ。
「こちらの人的被害は無いけど……影の魔物は壊滅状態ね」
そうか、でも人的被害が無いなら、僕の生み出した魔物がいくら減っても問題無い。
もう僕自身は殆んど何も出来ないけど、魔物たちを操るのが僕の能力だから……。
色んな物を奪って来た力だけど、この力が守ってくれた物は多い、だからこそ、後は最後の瞬間までこの力を皆の為に使いたい……。
「ブルトには悪いけど……もう少しだから……」
もうずっと昔だけど、僕と最初に友誼を交わした魔物は今も僕について来てくれているのが感じ取れる。
でも、この友誼ももうすぐ終わる……。
「キミもブルトも、僕が消えた後は……」
「分かっている、好きに生きろと言うのだろう」
そう、分かってくれているなら良いんだ。
今回はそろそろ限界かな。眠っている時間に反比例するように、こうして目覚めている時間も短くなる、次に眠ればもう目を覚ませないんじゃないかって気もするけど、それならそれで構わない。
どの道、この世界で僕の穢れきった魂は存在を許されはしないのだから……。
「おやすみ……」
「ええ……おやすみ、リョウ……」
力尽きたので短め、本編終了後にこっちもやるかも、でも予定は未定。




