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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
五章 異世界人・勇者
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五章21話 クロト 決着

「あのままやっても、ゴホッ、勝ててたんじゃないか?」


 クロトとの戦いを相田と交代して、俺が戦いに参加してからは結局役に立っていなかった藤田が聞いて来る。相田と替わる時に動きの遅い藤田を見かねて引っ張ったんだけど、いい具合に首が絞まっていたらしくちょっとっ咳き込んでいる。


「今のあれがクロトの全力なら負けはしないな、あれが全力のわけないから勝てるかどうかはやってみないと分からないけど……俺が本気で相手して相田の覚醒前にあっちにもマジの本気になられるより、加減されている内に覚醒済みの相田に代わって終わらせて貰った方が良いだろ?」

「覚醒ってお前まで田嶋みたいな事を……」

「その田嶋が言ってたんだから仕方ないだろ……」


 セリアを俺が相田に届ける事が分かった時点で田嶋が色々状況をシミュレーションしていたからな。

 セリアってキーが一時的に相田から離れる状況であいつがピンチにならない訳が無い、その上俺がセリアの本体だった聖剣を持って来てるんだ。これ確実に相田の覚醒フラグだろう! って言うのが田嶋談だ。


「フハハハ! 来い聖剣使い!」

「遠慮無く! 行くよ!」


 本気に遠慮無くなら宣言無くいきなり攻撃しろよ……まぁ、そんなことする奴は勇者じゃないのかも知れないけど……。

 相田は聖剣を振るい複数の光の斬撃をクロトに飛ばす。クロトは地属性の魔法で増えた腕を使いその光の斬撃を叩き落そうとするが、最初に届いた光の斬撃一発が模造の腕を破壊する。残る光の斬撃の内一発は残った模造腕で受け、慌てて他の斬撃を避ける姿勢に入る。

 光の斬撃を避け体勢の崩れた所へ追撃をかけようとしたのだろう、相田がクロトに向って駆け出すが……。


「GAAAAA!」


 光の斬撃を避け体勢を崩すかと思われたクロトは無理矢理地面を踏み砕いて揺らし相田の接近を阻む。


「いいぞ! この短い間に何が有ったかわ知らぬが驚くほど成長している! もっとだ! もっと我を楽しませよ! 地魔法技(ガイアーツ)地闘技法(ガイアームズ)


 げ、さっきの魔法よりも腕が更に2本増えたが、それだけじゃなく足まで増えたか? 本物も入れて腕6本と足4本か……。更には、さっきまではクロト自身の腕に連動して動いていた魔法の腕が独立して動いている。クロトの攻撃力で手数が増えたってだけで結構厄介なんだが……。


「くっ! 身体が思った以上に動く!?」


 クロトの攻撃を聖剣を振るい、光刃を飛ばし迎撃する相田だけど、あの動き……俺が上がった能力値に振り回れていた時に似ているな。聖剣の解放によって使えるようになった地力を使いこなすのに調整中といったところだろうか? それでも、クロトの攻撃に対応できているみたいだから、相田はもう大丈夫だろう。セリアもサポートしているみたいだしな。


「ま、あっちはもう大丈夫だろう……。藤田は怪我とか無いのか?」

「最後に首が絞まった以外はな……」


 大丈夫そうだな、飯本とはタイプが違うけどこいつも鉄壁だよな。多分能力値が防御に偏っているんだろうけど……相田が一緒だったとは言え、良くクロトと戦っていたよな。ちょっと戦っただけだけど、あのクロトって奴、確実にドラーク以上だ。


「ふはははHAHAHAHAHA!」

「おおおおおお!!」


 相田とクロトの戦いは激しさを増している。クロトが操る地属性魔法で生み出された手足は数を増し、中には赤く燃え上がっている物もある。対して相田は聖剣によるものであろう様々な技を駆使して地の手足を撃破、さらに相田の周囲に浮いた光球から光線が放たれる。


「正直、互いの叫び声しか聞こえない」


 ん? 藤田には見えてないのか?


「ああ……あれか、リミッターがかかってるんだったな」

「リミッター?」


 俺も田嶋から聞いただけなんだけど……言われたそのままに藤田にも説明してやる。能力値のリミッターが解除できれば今の相田たちの戦いも見えるようになるだろう。リミッターがかかっていない、常にリミッター解除状態の俺に見えているんだからな……。


「そう言われても急にできる訳じゃないからなぁ……はぁ、結局俺は役立たずか」

「危機的状況に追い込むと火事場の馬鹿力的に解放されるらしいけど」

「さっきまで十分危機的状態だったと思うんだが?」


 藤田の場合は下手に防御能力が有るから真に危ないと感じてなかったんだろうな。

 

「さっき壁をぶち破ったあれで狙ってやろうか?」

「クロトも纏めてぶっ飛ばしたやつだろ!? 止めてくれ! マジで! もしかしたら俺に当たってたかもしれないって聞いてゾッとしたぞ……俺だって能力使ってない状態だと皆と防御力そんなに変わらないんだからな!」


 まぁ、俺と違って気分? 気の持ち様でパワーアップできるんだから頑張れ。

 それにしても、相田とクロトの戦いは訳分からなくなって来ているな……。


振動噴火(ボルカノクエイク)!」

聖護陣結界ホーリープロテクション!」


 クロトが拳に展開された魔法陣ごと地面を殴り、そこを基点に地面が震えて各所で吹き上がる炎を無詠唱の防御魔法で防ぐ相田。

 段々規模がでかくなってきたな、急に高くなった力を使いこなすのに苦労するのは分かるけど、それでもクロトを圧倒できない程度のレベルか、下手に時間をかけるとクロトの方もギアを上げて来る……いや、もう段々上がって来ているから手遅れか? クロトの実力が出し切られる前に倒して欲しかったんだけどな……実際は徐々に戦いの激しさが増していっている。うん、もっと離れよう。

 藤田を促して相田たちの戦いから距離を取る。別に意図したわけじゃないけど、俺たちが向かったのはブレイカーで開けた穴の方だった。でも、ここで穴の方に向ったのは正解だったな。今まさに、開けた穴からゴーレムが数体入り込んで来た所だったからな。


「あいつら、どういう命令で動いてるんだ?」

「そんな事より! アレをどうにかしないと! 宗佑の邪魔されるわけにも行かないだろう!」


 アレ位軽く薙ぎ払いそうな感が今の相田には有るんだけど……まぁいいか、魔剣アンサンブルで斬って穴の前に積んでおこう、これ以上入って来られるのも面倒だからな。


「なんでそんな簡単に倒せるんだよ!」

「いや、これ魔剣だから……魔法を切れるんだよ、あのゴーレムって魔法で生み出されているからこの魔剣はゴーレムの天敵だな」

「魔法を斬るのか……高深、間違ってもそれで外壁を切るなよ」


 ってことは、この闘技場は魔法で生み出されたのか? 何処までが魔法の範囲で何処まで斬れるのか分からないから下手に地面すら斬れないじゃないか……今、外壁が崩れてゴーレムが雪崩込んで来るとか洒落にならない……大人しく魔剣アンサンブルはポーチに戻しておこう。


「リュミ! ソレイ! リュヌ! クレル! エクレ! エトワ! シュテル! 七星の極光(セブンレイ)!」


 相田の周りを飛び回っていた光球が相田の頭上で七芒星を描くように飛び回る、そこが魔法陣となって次々とクロトに光線を撃ち込んで行く、クロトは光線を避けたり防いだりしているが上手い具合に光線がクロトの行動を制限していっている。クロトの動きを制限する光線を放ちながら七芒星は中心で強い光量を蓄えている。あれは、冬子が扱う精霊術と同じ感じだな……。

 

「GU! GUOOOOOOO!」


 クロトの方は余裕が無くなって来ているのか? 獣染みた咆哮が多くなって来ている。ってか、俺には魔物の鳴き声に聞こえるんだけど? 獣化って言うより魔物化しているのか?


「FUHAHAHAHAA~」


 あ、俺の勘違いだ、クロトの奴凄い笑顔だ、余裕が無くなってる訳じゃ無さそうだな……多少の怪我は無視して相田の放つ光線を最低限に防いで前に出て来る。俺やドラーク、チンピラドラゴン程じゃないにしても治癒力が高いみたいだけど……さっきの獣化時の回復は普通に考えたら獣化時の一度のみの物だろう、クロトもドラゴン関係って言うなら話は別だけど……怪我している状態で元に戻ったら、あの傷は多分深くなる。


「行けぇ!」


 無理矢理突っ込むクロトに対して七芒星から極大の光線がクロトに放たれる。


「GUMUU! OAAAAAAA!」


 クロトも自身に光線が当たる前に黄色と赤の魔法陣、多分魔法の障壁を展開して光線を受けているけど……相田が上段に構えた聖剣が強い光を放っている、追い討ちを掛ける心算なんだろうな。


「シャイニング……ブレイド!!」


 聖剣から放たれる光の剣戟は光線とクロトと防御障壁を纏めて飲み込んで闘技場の壁を突き抜けて行った。

 なんだかクロトが急に弱くなってないかって気はするんだけど……相田が強化されすぎただけか?


「聖剣一つで梃子摺っていたらしい相手を圧倒するとか……なんか理不尽だな」

「お前も結構大概だからな」


 藤田が何か言っているけど、俺なんて可愛いものだろ?


「一応言っておこう……やったか!」

「その台詞に良いイメージが無いんだが!」


 そうは言っても、クロトの獣化も解けているみたいだしこれ以上の戦闘は不可能だろう。相田が新に開けた穴からゴーレムが入って来ると鬱陶しいから塞ぎに行こう……。


「ふむ……見事だ。だが、次は負けぬ……」


 なんか良い感じに倒れたし、ここでの戦闘は終わりだろうと思っていると闘技場が大地を揺らしながら地に沈んで行く……。


「おいおい……どうなってる?」

「まさか、闘技場を作ったクロトが倒れたから魔法が解除されたのか!?」


 藤田の予想が正しそうだ。相田の開けた穴を塞がなくてもいいのは良いけど……。

 闘技場の外壁も無くなるって事は、今も進軍を続けるゴーレム軍に囲まれた状態になるって事だよな!


「そ、ソードフィールド!」


 慌てて藤田を引っ掴んで相田とクロトの元へ向い、俺たちがスッポリ納まるように四方の地面にポーチから出した短剣を刺し結界を張る、まだ外壁が残っているから外のゴーレムには見つかって居ない筈!

 そうしている間に闘技場は完全に地面に消え、俺の張った剣結界だけ避けてゴーレムが埋め尽くした。


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