手合わせ
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「十兵衛。それじゃ、手合わせお願いするわ! わたしが女だからといって、手を抜かないでちょうだいね」
そう言って、少年に向かって、木刀の剣先を向けたクレア姫の構えは、なかなか堂に入ったものだった。
特に、隙などは見つけられない。
少年も、少しだけ気持ちを切り替えた。
それでも、真剣勝負の本気ではなく、真剣の遊びである。
クレア姫は、上に構えた木刀の剣を、鋭く少年に振り下ろしてくる。
少年は、それを左に体を動かして躱した。
クレア姫の木刀の剣は、その躱した少年の方向に鋭く追ってくる。
少年は、それを木刀の剣で受けて防いだ。
次の瞬間。少年の木刀の剣先は、クレア姫の顔の前で止まった。
これで、勝負ありだ。
「どうです。姫様。これで満足いただけましたか?」
少年は、木刀の剣先を下した。
「そうね」
そう言った、クレア姫の木刀の剣は、不意打ちで、少年の脳天を直撃する。
少年は、気を失って倒れた。
♢
少年は、夢の中にいた。痛い。頭の上のところが痛い。この痛みだけは、絶対に夢ではない。
家の中で、クレア姫を含めた、大人たちの会話が聞こえる。
「彼の本当の力量はわからなかったけど、あんなものではないのね」
「はい。私たちの知る限り、みんな一撃で倒していますから。間違いありません」
「彼を、リッチ率いる死の軍団討伐の為に、貸してくれないかしら」
「それは、彼さえよければ、私たちはなにも」
「その代わりに、この村に、五人の兵士を護衛におくわ。それでいいでしょ」
「はい。それでしたら、安心です」
その会話を夢の中で聞いていた少年は、まるで自分は物々交換の品物のようだと思った。
そして、これまでここが自分の夢の中だと誤魔化していたものが、すべて現実の世界であることも、頭の激痛と共に理解した。
少年は、誰かに起こされる前に、自分で体を起こした。
そして、まだ傷のない、クレア姫のきれいな顔を見つめた。
「その、死の軍団の討伐って、オレはなにをすればいいんですか?」




