夢か現実か
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それで、この老人に付いていってみてわかったことは、ここが「ムートリアム王国」というところで、このおじいさんが住んでいるのは、「アスラム」という村だということだ。
そしてこの王国は、現在「死の王リッチ」という、生きていたときには大魔導師で、死んだ後も知識と魔力を求めて自らアンデッド化した、肉体はすでに朽ちて骸骨に近いのだが、知性は生前以上で、魔力もほぼ無尽蔵という、「死を超越した魔導師」が率いる「不死の軍団」が、王国を征服しようと、ずっと人々を苦しめ続けている。
そんな危機的状況の中で、スケルトン・ウォリアーから、村の長老の弟であるムランさんを助けてくれた英雄として、この村の人たちが、少年を取り囲んで歓迎してくれていた。
男の人たちは、少年よりもみんな体が大きく、180cm以上ある。
女の人たちも、みんな背が高く、大体170cmぐらいある。
それなので、身長165cmで、体重が53kgの小柄な日本人の少年は、みんなの顔を見上げるばかりだったのである。
ただ、この村の人たちが本当に注目しているのは、少年ではなく、少年が持っていた、刀の方だった。
この国の人たちが、「不死の軍団」と戦うために使っているのは、まっすぐな両刃で幅広く、横に大きく張り出した十字の鍔を持つ、いわゆる西洋剣である。
それなので、少年の持っているこの細身の刀は、これまで見たことがなく、村の人たちからは、とても珍しいものであった。
それが、盾と鎧ごと、斬り裂いたとなれば、気にならないわけはない。
村の男たちは、少年の刀を、代わるがわる手に取り、鞘から抜いてみようとするが、誰一人として抜くことはできない。それは、脇差の方も同じだった。
少年は、自分にしか抜くことができない、刀に誇りを持ちつつも、
あんな凄い刀を、こんな所で抜かれて振り回されたら、たまったものではないと安堵した。
そこにムランさんが、そんな村人たちに、自分の恩人に失礼だとたしなめる。
これまでこの村も、何度も「不死の軍団」に襲われながらも、ギリギリのところで、その侵入を防いでいたとのこと。
但し、これまでこの村を護ってくれていた戦士は、先の戦いで大きな傷を負ってしまい、現在は隠れて療養中とのことだ。
村の外周は高い石壁で取り囲まれてはいたが、それだけでは防ぎきれないことは、村人たちもわかっていた。
それでも少年は、美味しいものも食べさせてもらって、空いていたお腹も満たされ、ゆっくり眠れそうなベッドも用意してもらったので、今日はこのまま、何も考えずにもう眠ることにする。
しかし、夢の中でも寝るなんて不思議な気分だ……。今日はなんだか、凄く疲れた……。
朝起きたら、今度こそ夢から覚めてますように……。
少年は、また深い眠りに落ちた。




