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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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1/7

サムライの格好で異世界に来たんだが

 ある日の放課後のこと。


 まだ十七歳になったばかりの、高校二年生の少年は、河川敷の草の上に寝転んで、青く広がる空に、ゆっくりと流れる白い雲を見ていた。

 

 少年は小さいときにサムライに憧れて、小学四年生のときから剣道を習ってはいたが、試合で勝った数はほんのわずかだった。


「あぁー、なんかこのままカラダが宙に浮いて、空って飛べねーもんかなぁー」


 そんな現実では起こりえないことを妄想していた。


 まぁ、そんなことはありえないよなー……。そんなことより、もっと剣道が強くなんねーかなぁー。


 これが半分遊びだったら、余裕でみんなに勝てんだけど、試合になると、どーも緊張して、なんか身体カラダが上手く動かねーんだよなぁー。


 そのうち少年は、急激な強い眠気に襲われると、そのまま深く寝てしまった。


 そして目を覚ましたとき。少年はさっきまでとは違う、異世界に来ていた。


 さっきまで、河の向こうに立ち並んでいたビルの山たちがない。


 その前に、目の前にあった河も無くなっている。


 後ろは深い森で、目の前には緑の草原が広がっている。


 少年は前に見たことがある、北欧神話の映画のようなところだと思った。


 少年は、この突然の状況が、まったく理解できなかった。


 それが、普通の反応である。


「はぁーーっ!? って、どういうことだよ!? って、ここドコだよ!?」


 それだけではない。少年が身に付けている衣服も、高校の制服から、サムライの着物に変わっていた。


「えーーっと、これって、どういうことなんだぁーー!? この格好は、完全にサムライの格好だよなぁーー。オレが稽古のときに着てる、剣道着でもない」


 少年が、自分の足元に目をやると、穿いていた運動靴が、藁草履わらぞうりに変わっている。


「それになんなんだよ!? オレのこの横にあるのって、どう見てもカタナじゃねーかよ!? しかも、大刀だいとう脇差わきざしの二本、ちゃんとある!?」


「おまけに、なんだよ!?」


 その二本の刀の横には、火縄銃まである。


「えーと……。オレ、時代劇のエキストラにでもなったってことはないよな……」


 もし、そうであれば、少し合点がてんがいくのだが、そんなわけはなかった。


 そんな突然のことに、動揺しまくりの少年の前に、口髭を蓄えた白人の老人が声を掛けてくる。


「アンタ、こんな所で、おかしな格好をして何しとるのかね?」


 その老人の言語は、いままで少年が聞いたことがない外国の言葉だった。


 えっとぉー、この人、なに言ってるんだ? 言葉わかんねー。でも、少なくとも英語ではないとは思う。


「あっ、えっ、えーっと……」


 そのとき、老人の背後に、西洋の鎧を付けた骸骨のバケモノが、剣で襲い掛かろうとしている。


「ちょっと!? ふざけんな!」


 少年は、ずっと前にゲームで見たことがあるようなバケモノに、自分はまだ夢の中にいるのだと、なんだか腹が立った。


「どーせ、夢の中なら、好き放題暴れてやるぜ!」


 少年は大刀を手に取ると、そのまま抜刀して、その骸骨のバケモノを、左手に持っていた盾ごと、鎧を横一閃に斬り裂いた。


「どんなもんだい! 夢でしょ! 夢!」


「えーと、確かさっきのは……。スケルトン・ウォリアーって、いうんだっけか」


 この老人を背後から襲おうとした、骸骨の兵士は、RPGでは、スケルトン・ウォリアーと呼ばれている。


 その役割は、前衛として前線に立ち。 突撃兵であり、盾役でもある捨て駒だ。


 奴らは、近接戦闘に特化していて、剣・斧・槍などを武器にしている。


 ゲームの設定では、物理的に頑丈なはずだが、少年の手にしたカタナは、それをいとも容易たやすく斬り裂いた。


「しかし、夢とはいえ、スゲー切れ味だなー! 盾と鎧をまとめて真っ二つにするなんて」


「でも、なーんか、おかしい……。カタナを抜いたあと、カタナが勝手に動いたような……」

 

 少年は、カタナを振るう前に、カタナが勝手に反応したように思えた。


「それにしても、なんか妙に、リアリティのある夢だなぁー。ホント、夢かぁー」


 そうどこかで疑いつつも、それでも、この老人が無事だったことに安堵する。


「おじいさん、怪我ない? 大丈夫だった?」


 老人はこの少年が、いとも容易たやすく、一瞬のうちにスケルトン・ウォリアーを倒したことに驚愕した。


「あ…ありがとうございます。助かりました」


 少年はこのとき、老人が話した言葉が、はっきりと理解できた。


 あれ? なんでだ? このお爺さんが話してる言葉わかる。なんで? まぁ、夢なら、当然か」


 少年は、これもすべて、夢の中のことだと思った。


 ふとカタナを確認すると、いつの間にか鞘に収まっている。


 確認のため鞘からカタナを抜いて確認してみると、刃こぼれ一つしていない。


 おまけに、あの斬ったスケルトン・ウォリアーの姿まで消えてる。


 少年は試しに、太い木に向かって、大刀を振ってみるのだが、打ち込んだカタナヤイバが当たったにもかかわらず、その木には傷一つ付いてない。


 それに、カタナヤイバが当たった、衝撃すら感じない。


「んーーっ? どういうことだぁーー?」


 これは、どういうことかと、まったく理解できない。


 これも全部夢だからと、そう思うことにした。


 そして少年は、この流れ的にも、「命を救ってもらったお礼をしたい」という、この老人に付いていってみることにした。


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