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元部下に奢ってみた

元部下三人の正装を購入する約束をしてから数日後。

俺は自分の発言に後悔する素振りを微塵も見せず、有言実行していた。



厨二で格好つけて宣言したから……ではなく。

家族への感謝の印という名目がある。

決して後悔はしていない。



「おおっふ……」



店員から言い渡された金額を聞き、思わず変な声が漏れた。

正装が高いのは知ってたけども。

三人分だからな、財布へのダメージが三倍と。



「隊長、本当に大丈夫だったんすか?」



心配そうに声をかけてきたのはデュークだ。

デュークのセンスと俺の資金により、良い感じに仕上がっている。



紺色のスーツを着て首にはスカーフを巻いているので頭が落ちないようにした。

うん、これで結婚式は大丈夫だな。



「わーい。隊長の奢りだー」



「そうだな。俺の奢りだ」



シークは白色のシャツに上下空色のスーツと。

羽も上手く隠せているので問題ない。



女性店員の着せ替え人形になること間違い無しだったから、魔法で隠してきて正解だったな。



「……感謝」



「おう、感謝しとけ」



ハピネスは淡いピンク色のドレスを選んだ。

……実は一番、値段が掛かっていたりする。

ちゃんとした女性用の服って結構するのな、勉強不足だったよ。



まあ、ハピネスの髪色に合っているし。

ドレス姿を見てしどろもどろになるレイヴンが見れるなら良いや。

合計金額を見られないよう、一人で会計を済ませた。

三人には気を遣われたくない。



「いやー、さすが隊長っすよね。値段を見せないようにしてたっすけど……結構な金額いってるっすよ」

 


「……感謝」



「今回ばっかりは素直にありがとうって言わないとねー」



店の入り口前では珍しく俺に感謝しようと話し合っている三人の姿が。

……うん、やっぱり購入したことに間違いはなかったな。

今日はこれで解散なので注意事項を話しておこう。



「お前ら、帰る途中で汚したりするなよ。本気で泣くからな」



「汚さないっすよ。何すかその注意と脅しは」



「ふっ、これから結婚を控えている男のガチ泣きだぞ。俺の見るに耐えない姿を見たくなかったら持っている商品は慎重に扱うことだ」



「……重要!」



「この服が関わってなかったら見たかったかもなー。すっごく笑う自信しかないもんー」



「俺は嘆くっす」



三者三様のリアクションだが、個人的にデュークの言葉が一番刺さったな。

嘆くって……しょうもない理由で泣かないように気をつけよう。



「それじゃ、隊長。ありがとうっす」



「……帰宅」



「ばいばーい」



大事そうに荷物を抱え去っていった。

俺の財布からも結構な額がばいばいしたけどな。



「セシリアに金遣いが荒いって説教されるかもなぁ」



俺の脳内のセシリアは何をしているんですか、といつも通り叱って……。



「式場に着ていく服をですか。良いと思いますよ」

「三人とも喜んでくれて良かったですね」

「多少、散財をしたとしても払った金額以上の価値があったかと」



ダメだ、俺の脳内のセシリアが叱ってくれない。

俺の考えが甘いのだろうか。



「別に蓄えはあるけど。一気にお金を使うと不安になる……仕事に行くか」



結論、使った分を稼ぐ。

黒雷の魔剣士で行くかな、ヨウキよりも名前が売れてるし。

何か聞かれても厨二でゴリ推せるしな。

決めたからには即行動、家で着替えてギルドへ。



もう黒雷の魔剣士はヨウキということが知られている。

特に秘匿事項とかはないので一般の受付でも良いのだが、慣れているのでクレイマンに受付へ。



ちょっと嫌そうな顔をされるかと思ったがそんなことはなかった。

それが普通なんだけど、変な感じする。

ちゃんと受付してくれるなら良いけど。



「仕事をくれ。副ギルドマスター」



「おー、お前か。仕事はあるけどよ。ソフィアから聞いてるぞ。あれ、近いんだろ」



自分が嵌めている指輪を指差しながら聞いてくる。

あれって……結婚式のことか。



「まあ、近いと思うが」



「何だよ思うって。主役の一人がそんな曖昧で良いのか」



「いや、まだセシリアと細かく打ち合わせしてなくてさ」



ここ数日、二人の時間が作れなかったんだよ。

セシリアも俺も家族と過ごしていたからな。



「ふーん、そうなのか。ソフィアがやたら張り切って式に着ていく服を選んでたからよ。近いとまでは聞いたんだが、詳しい日程までは……な」



「そりゃあ、決まってないんだから言えるわけないだろう。その辺はもう少ししてからだな。……さて、ヨウキの話はこれくらいにしてだ。黒雷の魔剣士に合った依頼の有無を聞こうじゃないか!」



「あー、今日はそんな感じか。その格好してきた時点で何となく察してはいたけどよ……」



頬杖をついてめんどくせぇとこぼしている。

先程まで通常営業だったじゃないか、やっぱりクレイマンだな。



「ふっ、仕事に面倒臭さを感じてはダメだなクレイマン。背負っている誰かを守るためにも……誠心誠意勤めるのが副ギルドマスターであり、父であるお前の義務のはずだ。こんなところで……」



「わかった、わかった。依頼はこんな感じだ。確認しろ。んでもって受けるやつを決めろ。あとは処理するから」



ほれ、と乱雑に何枚かの依頼書を渡された。

ここから選べということだ。



いかにもこれ以上関わりたくないからって感じの会話の切り方だったな。

俺の厨二をかわす術を身につけたか。



「黒雷の魔剣士は相手が強くなると燃えてくるタイプだ。今後の展開に期待してくれ」



「俺は相手しねぇし期待もしねぇからな」



「黒雷の魔剣士はミネルバのギルドにおいて唯一無二の謎めいた冒険者だ。現状維持など、黒雷の魔剣士には似合わない。常に進化し続けるぞ」



「謎めいたって……もう正体ばらしただろーが」



「黒雷の魔剣士の謎は一つではない。全てを解明するなど不可能と思え!」



大事なところなので久々に決めてみた。

たとえ黒雷の魔剣士はヨウキということが周知の事実になっているとしてもだ。

何かあるぜこいつ……的なものがあった方が良いだろう。



「あー……もう良いや。そんな感じな。てか、唯一無二じゃねーだろ。お前の知り合いにいるだろうが」



俺の知り合いで顔を隠した謎めいた冒険者か。

ガイのことだな、あいつは仕方ないんだよ。

ティールちゃんのヒモにはなりたくないってことで変装して依頼を受けている。



ちゃんと俺が考えた設定もあるからな、謎があるわけじゃないぞ。



「つーか、さっき依頼を受けに来てたぞ」



「ほほう」



きっとガイも俺とセシリアの結婚式の話を聞いたな。

それでティールちゃんのドレスを買うために金策をしていると。

二人で依頼を片付けた方が効率良いし、帰ってくるまで待っているかな。



「だったらパーティーを組むことにしよう。済まんが待たせてもらうぞクレイマン」



「……シエラ、今日一日だけで良いから受付の席交換してくれ」



「すみません、クレイマンさん。私はこの席で普通の冒険者さんの列を捌くのが仕事なので」



「言うようなったな、シエラ」



「本音を言うと私じゃ対応ができません。正解がわからないです」



俺の対応は正解を出すのが困難らしい。

そこまで難しいことを要求している覚えはないんだが。



「クレイマン、あまり後輩を困らせるのは良くないぞ」



「俺はお前の扱いに困ってるけどな……おっ、知り合い帰ってきたみたいだぞ」



クレイマンに言われてギルドの入り口に視線を向ける。

そこには変装したガイの姿が……ない。

では、誰がいたのかというと。



「蒼炎の鋼腕、無事に依頼を片付けて……戻ったぞ!」



蒼炎の鋼腕、隣国の次期領主ソレイユがいた。

いや、お前ぃぃぃぃぃ!



次期領主がこんな頻繁に隣国に来て良いのかよ。

これは何か企んでるに違いないな。

腹の内を聞かせてもらおう。

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― 新着の感想 ―
[一言] ガイでなくて蒼炎の鋼腕。そうじゃないかなとは思った。
[良い点] 予定調和w 唯一無二と聞いてすぐに蒼炎の鋼腕かな?って思ったw ガイは厨二じゃないでしょうにw [一言] シーク「たいちょーごめーん。土いじりしてたらスーツ汚しちゃったー。テヘペロ☆」(確…
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