vs武蔵タイタンズ③
「ついに、この時がやってきました――プロ野球・セ・リーグ、関西ジャガーズ対武蔵タイタンズ。今宵、優勝をかけた決着の第3戦です」
「1勝1敗で迎えた最終戦。勝った方がすべてを手にします。
この東京ドーム、立ち見も含め、4万6000人を超える観衆の熱気が溢れかえっています」
「武蔵タイタンズの先発は、宮藤公康。
36歳のベテラン左腕。
その最大の武器は、技巧と緻密さ――最速149km/hのストレートに、スピンの効いた縦カーブ、さらにはスライダー、シンカー、カットボール。全ての球種を同じフォーム、同じ腕の振りから投じるその投球術は、まさに“静かなる魔術師”」
「対する関西ジャガーズは、22歳の若きエース・飯川慶。
こちらは勢いに乗っている左の本格派です。最速151km/hの直球と、同じ回転から沈むチェンジアップ、そして縦にも横にも切れるスライダー。球威とキレで押し切るピッチャー。世代を超えたエース対決にも注目です」
「さあ、戦いは整いました。
これが最終戦。優勝の栄冠を手にするのは、ただ一つのチームだけ――」
(歓声が高まり、スタジアムに流れるファンファーレ)
「関西ジャガーズの攻撃から試合は始まります。運命のプレイボール――第3戦、まもなく開始です!」
【1回表】
打席にはジャガーズの切り込み隊長・紅星。
スタンドの声援を背に、初球から思い切り踏み込んだ。
カウント1ボール1ストライク、宮藤の3球目――
内寄り高めのストレートを完璧に捉えた。
打球は右中間を真っ二つに割り、転々とフェンスを転がる。
紅星は迷わず二塁へ到達。いきなり、長打でチャンスメイク。
続く2番・村瀬が、初球から送りバントを試みた――が、空振り。
その一瞬、紅星がスタートを切っていた。
バントと盗塁のサインが重なったか、あるいは勘違いか。
捕手・安倍はそれを見逃さず、ノーステップで送球。矢のようなボールが二塁ベースへ突き刺さり、タッチアウト。
ジャガーズベンチがざわめいた。
痛恨の走塁ミス。
初回の流れを、早くも手放しかけた。
なおも村瀬はライト前ヒットで出塁。
檜山が死球を受け、一死一・二塁。
打席には4番・新城が入る。
東京ドームがどよめいた。
最も警戒されている男。
宮藤もその打球傾向を読み切っていた。
鋭いピッチャー返し――かに見えたが、そこに立っていたのは、二塁ベース寄りに守る西。打球を難なくさばくと、二塁へ、そして一塁へ。
完璧なゲッツー。
スコアボードにゼロが刻まれる。
試合前の分析で、新城がインコース寄りの球を“引っ張る”傾向があると見抜いていた西のポジショニングが、試合の流れを手繰り寄せた。
【2回裏】
先制は、タイタンズだった。
4番・松居。飯川の投じたスライダーが、わずかに甘く浮いたその瞬間だった。
松居は見逃さなかった。
フルスイングで完璧に捉えた打球は、一直線にレフトスタンドへ突き刺さった。
快音とともに、東京ドームに轟く大歓声。
タイタンズ1点先制。
さらに、続く5番・茅原がセンター前ヒット、6番・衛藤が右中間に運び、ノーアウト一・三塁。
7番・志水は三振に倒れ、打席に立つのは、8番・安倍。
飯川は、チェンジアップを引っかけさせ、ショートゴロを打たせたが、打球は緩く三塁ランナーが楽々ホームイン。
点差は2点に広がった。
スコア、2-0。
タイタンズの老練な攻撃が光る。
【3回表】
しかし、ジャガーズも黙ってはいなかった。
先頭の紅星が、今度は左前に弾き返すと、続く村瀬もそれに続く。
二者連続ヒット。
打席に檜山。
初球、体を寄せるようにインサイドの球に詰まりながらも、一二塁間を破った。
三連打で無死満塁。
そして4番・新城。
前の打席の借りを返すとばかりに、詰まった打球ながらレフト前に落とす。
まず1点。
スコアは2-1。
なおも満塁、打席は5番・酉谷。
高く上がった気合いのスイング――だが空振り。
直後、6番・今丘も、低めのスライダーにバットが空を切る。
まさかの連続三振で、二死満塁。
絶体絶命の場面。
だが、ジャガーズはここで助けられる。
7番・矢乃の打球は、ライト正面。
だが、打球の軌道を見誤ったのか、やや前進守備だった高梨の頭上を襲った。
高梨が下がる――が、グラブの先をすり抜けるように打球が落ちる。
痛恨のミス。
三者が次々と生還し、ジャガーズが一気に逆転。
東京ドームが揺れた。
三塁側スタンド、ジャガーズファンが総立ちとなる。手拍子、歓声、太鼓の音――それらが渦巻き、ドームの空気が膨張していく。
動いたのはタイタンズベンチ。
ここで宮藤を諦め、2番手・高羽尚成をマウンドへ。左の技巧派、ストレート148km/h。変化球の種類も豊富で、緩急の幅がある。
迎えるは8番・壷井。
逆転の直後、畳みかけたいジャガーズだったが――
高羽の外角スライダーに空振り三振。試合はなおも混沌の中にある。
スコアは、ついにひっくり返された
――4対2。
逆転の瞬間、東京ドームの空気が一変する。




