67 サンプル
後片付けといっても、オレはほとんどやる事が無かった。
『見張り』という重要な役目を与えられたオレは、ただ眺めているだけ。
一方で、亜衣ちゃんと園池さんは大忙しだ。
サイボーグ達に色々とやって、完全に戦闘能力を奪うらしい。
園池さんが、嫌々やってるのは傍目から見ても分かった。
「よし、これで終了。」
「ふぅ。やっと終わったね。」
「終わったの?」
オレには、何をやっているのか、さっぱり分かりませんでした。
そんなオレが、三人のリーダーだってんだから、申し訳なくなる。
「終わったよ。後は《時空管》の他のメンバーが、回収してくれる。このサイボーグ達は、貴重な情報源らしいからね。」
ふーん。
そういえば、『転送は怖いから嫌』だって言ってたもんな。
しかし、情報源ね。
スキンヘッドは、オレ達を『サンプルにして、研究材料にする』様な事を言ってたな。
立場が逆になったが、酷い実験のサンプルにされないように祈ってやろう。
「じゃ、他の『隠す機械』も回収しちゃって、さっさと帰ろう。」
「そうだね。」
あぁそうか、そういえばそういう予定だったな。
という事は……。
という事は、だ。
また、あの血塗れの男達を見る事になるのか。
オレは陰鬱な気分になった。
屋上の入り口にあった『隠す機械』は、早々に回収した。
どうでもいいが、『隠す機械』って……。
名前とか、なんかないのかな。
倒れている『ウーロン茶』と『短髪ヒゲ』は、ここに置き去りにしたまま帰るらしい。
亜衣ちゃん達の顔を覚えているだろうに、大丈夫なのだろうか。
そういった話題が出なかった以上、なんらかの対策があるのだろう。
十階を足早に通り過ぎると、オレ達は地下駐車場へとエレベーターで降りた。
あの場所に近付くにつれて、オレの気分は沈んでいく。
自分がやった事から、目を背けるのは良くない事だろう。
しかし、正直あの光景はもう見たくない。
ついに、その時が来てしまった。
オレは、あの階段部屋へと続くドアを開けた。
ここを出た時と、全く変らない状態だ。
血の跡なんてないし、倒れている男達の姿はない。
「あたしが回収する。ちょっと待ってて。」
園池さんは、ダンボールが積んである方へ向かった。
『隠す機械』の回収が終われば、血塗れの男達が現れるのだろう。
オレは、無意識に身体を硬くした。
一瞬、視界が歪むようになって、隠れていた男達の姿が現れる。
ん?
さっきまでと、違うぞ。
男達の身体から付いていた血の跡が無くなっていて、普通に寝ているだけに見えた。
それどころか、三人共、寝息に合わせて身体が微妙に動いている様だ。
というか、イビキが聞こえて来た。
確実に、全員が生きている。
これは多分、『隠す機械』の生命維持機能とやらのお陰なのだろう。
「良かったね。全員、ちゃんと生きてるみたいよ。」
振り返ると、亜衣ちゃんが微笑んでいた。
「正直、オレはホッとしたよ。」
「よし、一件落着じゃん。成功条件も、完全にクリア。」
園池さんが両手を挙げて、弾けるような笑顔を見せた。
普段は、こういう明るいノリの娘なのかもしれない。
成功条件か……。
そういや、そんなのが書いてあるプリントがあったな。
プリントの存在なんて、完全に忘れてたよ。




