66 機能停止
オレは寂しさのあまりに折れそうな心を奮起して、園池さんを追いかけた。
すると、派手男が倒れている所に、園池さんと亜衣ちゃんが居た。
「活性化が終わってるのに、一人で動いちゃダメでしょ!隠れてなきゃ。」
園池さんは怒ってはいたが、安心したような口調でもあった。
もし、派手男がもう一度立ち上がって来た場合、活性化状態になれない亜衣ちゃんはとても危険だ。
もちろん、それは要らぬ心配だった様だが。
「ごめんね。念の為に、スタンガンで確実に機能停止しておかないと、心配だったから。」
なるほどね、そういう事か。
オレは、思わず笑ってしまった。
園池さんは、亜衣ちゃんを心配してここに来た。
活性化の残り時間が、ごく僅かなのにも拘わらずだ。
派手男が立ち上がっているなら、園池さんの方がヤバかったかもしれない。
一方の亜衣ちゃんは、戦っているオレ達を心配してここに来た訳だ。
活性化できないという、リスクがあるにも拘らずだ。
全くよくもまぁ、そんなお人好しが揃ったもんだね。
(ご苦労様、もうほとんど任務は終了。少しイレギュラーな事象があったみたいだけど。)
これは、タマラさんだな。
テレパシーも、すっかり違和感が無くなって来てしまった。
多分もう喋ってもいいんだろうから、今度はオレも会話に参加しよう。
「頭の薄い人の強さには、ビックリしましたよ。演習の時は、二人でもっと簡単に倒せてたから。」
亜衣ちゃんも、納得がいかない様子だ。
確かに奴は強すぎだったし、ゲームのシミュレーションとは大分違ったのだろう。
「ホント。二人だけだったらヤバかったよ。まぁ、だからこそ、三人だったんだろうけど。」
園池さんが、チラッとオレの方を見た。
なんというか、複雑な思いを感じる視線だった。
(そうね、今回は精度の高い予測を使用してる筈。あの人は、織り込み済みだったんでしょう。念の為に、気をつけて帰ってきてね。イレギュラーな事象は、連鎖して発生する場合があるから。)
「何それぇ。あたしはもう、疲れた。」
「三人共クタクタですよ。正直オレ、次に何かあっても動ける気がしない。」
こんなに疲れたのは、一体全体、何時以来だろう。
(大丈夫。仮にそういう事態が起きても、すぐに救援がそっち向かうから。とにかく、後片付けを終わらせて。)
「了解しました。」
亜衣ちゃんの、清々しい応答だ。
激しい戦いで荒んだ心が、洗われる様です。
「……了解。」
しぶしぶ、といった感じで園池さんも了解した。
「了解です。」
二人の真似をして、オレも了解してみた。
しかし、『後片付け』ってのは、何をやるんだっけ?
えぇと、転送だったかな……。
どうやってやるんだろ。
ゲームだと確か、Zボタンを押すだけだった様な……。
でもオレ、コントローラー持ってねぇじゃん。




