46 ギャングスタ
「それから、《時空管》に頭の中を監視されてる、っていうのは今も同じ。おかしな事言ってるって思ってるだろうけど、任務に入る前も、《時空管》に監視されてるって意識しておいて。」
バイトなのに、任務って言葉使う時点でおかしいんですけど。
まぁ、亜衣ちゃんの頼みだし、黙って聞いておこう。
「今から行く現場っていうのは、VRゲームで体験したビル。これは到着してみれば、すぐに本当だって分かる。それで、ゲームと同じ任務をやる事になるの。あの屋上まで目立たずに行くのが、最初の目標。信じられないだろうけどね。」
そりゃまぁ、サイボーグと戦うってのを信じろって言われてもね。
ただ、目立たずに屋上まで行くっていうのは、マジでありそうだ。
何かの、運び屋とかの場合。
あぁ、中学の時にギャングスタもどきをやっていた黒歴史が、頭をよぎる。
暴力沙汰に巻き込まれた以外は、子供のイタズラレベルの悪さしかやってないけど。
高校生になって、そういうのから、逃げ切ったつもりでいたんだけどな。
「あとさ、頭の中に声が聞こえる、テレパシーってのがあんの。タマラさんから急にテレパシーが入っても、びっくりして大声出したりしないでよ。で、あたし達もテレパシーが使えるはずなんだけど、当てにしない事。簡単に盗聴されるから、普段はOFFなんだってさ。小声で喋った方がマシ。距離が遠いなら、《時空管》に電話しちゃった方が早い。」
テレパシー意味ねぇ。
それ、幻聴と変らないレベルだろ。
なんの為にテレパシー設定したのか、小一時間問い詰めたい。
とにかく、不測の事態で連絡が取れなくなったら、《時空管》に電話しろって事だろうけど。
「そんで、任務が始まったら、基本的に黙ってる事。VRゲームでも、そんなだったでしょ。特に、チームメイトの名前は、絶対に呼ばない。正体がバレちゃうから。任務の直前になったら、タマラさんがこの三人のコードネームっての決めるから、会社に帰るまではそれで呼ぶ。」
それは、多分本当だろう。
オレは頷いた。
やっぱりヤバイ事をやるんだな、あの山形さんが代表の会社だし。
「現場で体験するまで、実感がない事が多いと思う。怖いし。でも時間が限られてるから、悪い事をやってる訳じゃないって信じて、行動するしかない。」
タマラさんも似たような事言ってたな。
なんだろう。
暴力彼氏から逃げて来た人を匿うとか……。
いや、わざわざ屋上で待ち合わせしないか。
「そんな感じ。このバイト、嫌になっても簡単には辞められないから。契約書に色々書いてあったでしょ。まぁ、あたし達はもう辞めるつもりないけど。任務の途中で帰るのもありえない。両方とも、とんでもない事になるらしい。」
然も在りなん、だな。
裏の契約書、とかいうトンデモ書類があったし。
「さっき瑠乃華ちゃんも言ってた事だけど、ダメだと思ったら、恥ずかしいと思わずに、早めに私達に言って。元々は、二人でやる筈の任務だったから、それでも大丈夫。」
オレは頷いたが、女の子二人だけに任せる事は、さすがにありえない。
本当にヤバくても、一人で逃げたら一生後悔する。
それに、リーダーはオレって事になってるから、山形さんに殺されそうだしな。
「事前に知っておいて欲しい事は、これぐらいかな。作戦会議を始めましょう。まず、佐藤君がどうやってVRゲームをクリアしたのか、詳しく教えて。」
オレは、力強く頷いた。
いいでしょう。
ご要望とあれば、オレのプレイを熱く語るとしましょう。




