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44  ジンジャーエール

結局、オレ達は駅構内にほど近い、コーヒーショップに入った。

その店は、平日なら朝七時前から開店しているらしかった。

サンドイッチなどのモーニングセットメニューが目立つ。

スイーツ系はあまり置いていない様だった。


それでも、園池さんはめざとく、かなり甘そうなジャムとアイスクリームの乗ったフレンチトーストのセットがメニューにあるのを見つけて、さっそく注文したようだ。

オレはジンジャーエール、亜衣ちゃんはアイスロイヤルミルクティーを頼んだ。


「一人辺り千円位なら使ってもいいって言われてるので、お腹空いてるなら何か頼んで。現場は歩いて三十分もかからないから、ここに一時間ほど居る事になるし。」


ほう、意外と気前が良いんだな。


「最後の晩餐かもしれないのに千円って、セコイよねぇ。」


「だから、そういうのはやめてって。」


「ちゃんと覚悟が無いで任務始まっちゃうのも困るじゃん。後一時間しかないんだからさ。」


険悪な雰囲気になったら、嫌だな。

ちょっと、場を明るくする事を言わないと。


「最後の晩餐って話になってるけどさ、コレって朝飯だよね。」


二人は一瞬黙って、こっちを見た。

お、作戦成功か。


「そういう問題じゃない。」


「何それ、あたしがバカだって言いたい訳?」


うお、オレに矛先が向いてしまった。


「朝飯ならどう転んでも最後の晩餐にはならないから、心配しないでも大丈夫、って事が言いたかっただけだって。」


何言ってんだ、オレ。

はぁ、と亜衣ちゃんが溜息をついた。


「とにかく、打ち合わせを始めましょう。えっと、今日のグループリーダーは佐藤君って事だけど、初日で分からないだろうから、私が進行をやるね。」


「うん。よろしく頼むよ。」


「OKOK。」


園池さんは、どうでもいい、って感じでフレンチトーストに夢中だ。

甘いブルーベリージャムの匂いが漂ってくる。

オレもなんか頼もうかな。

と、園池さんが顔を上げた。


「あ、そういえば亜衣は聞いてなかったね。この翔君、今回のVRゲーム初回でノーミスクリアなんだってさ。それで山形さんが、助っ人からリーダーに変えたみたい。『簡単に隙を突ける、若い女の方がいい』なんて言ってたのにね。」


オレは元々、この二人の助っ人のつもりで募集させたのか。

危険だとしても、ビビッてちゃダメだな。


「それはスゴイね。あれはあくまでもゲームだけど、現場で役に立たない訳じゃない。どうやったのか、後で教えて。」


おぉ、アクションゲームの事で女子に褒められるなんて、新鮮な気持ちだ。

そんなに上手くなって何の意味があるの、とか言われた事あるし。


「いいよ。オレ、ああいうゲームは得意だから。」


「まぁでも、今度はゲームじゃないからねぇ。現場で怖くて動けないようだったら早めに言ってよ。そんなんで付いて来られても邪魔だし。その辺に隠れれてくれればいいから。」


園池さんは疑わしい目でオレを見ている。

オレは何をやるのかすら分かってないので、反論は出来なかった。

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