21 強化人間
「何だ、お前は!」
最後に残った、実行犯と思われる派手な男が叫ぶ。
答えてはやらない。
お前こそ何だよ、サンバカーニバルみたいな格好しやがって。
残念ながら、もう一度光の塊を作れそうな隙はなかった。
派手男はライフルを持っているが、そんなものを当てさせはしない。
勢いのままジグザグに突っ込んで、回し蹴りを放つ。
クソ、避けやがった!
派手男は素晴らしい反応で後ろに飛びずさり、オレの攻撃をかわした。
だが避けた時に、持っていたライフルを落としたのが見えた。
よし、これで相手も素手だ。
「トゥワー!」
おかしな掛け声とともに派手男の、連続後ろ回し蹴りが襲ってきた!
危ない、危ない。
「トゥワー!」
さらに、側転のような状態でも蹴りを放ってくる。
カポエラのような動きだ。
ん、カポイイラだったかな。
あぁ、そんな事を考えてる場合じゃなかった。
派手男は、こちらを休ませないように続けざまに攻撃してくる。
無理そうな体勢からでも、鋭い蹴りがオレを襲う。
かなりのスピード、ステップで避けるのが精一杯だ。
「トゥワー!」
しかし、避けてる内に攻撃が読めるようになってきた。
完全にパターン化されている。
そして、どこかでやった事のある、格闘ゲームの動きに酷似している事に気が付いた。
いくらリアルなゲームでも、ゲームはゲームだ。
プログラムで動く以上、こういう部分はどうにもならないのだろう。
この動きが読める、という事実を攻略に生かそう。
活性化中なら、パワーはこちらが上という話だった筈だ。
「トゥワー!」
その掛け声、いい加減にして欲しい。
なんとかタイミングを取って、こちらも回し蹴りを放った。
すると、奴の足とオレの足がぶつかって、二人共似たような格好で倒れこんだ。
「ぐぅおぉ、畜生っ、畜生っ、畜生っ……」
派手男は苦しそうな顔をして足を押さえ、立ち上がれない。
オレの方はすぐ立ち上がって、特殊攻撃ボタンを押す。
あばよ、サンバカーニバル。
光の塊をぶつけると、派手男は女と同じように破裂した。
念の為、スキンヘッドの様子を確認する。
ピクリとも動かない。
結局、強化人間に特殊な遠距離攻撃とやらをさせずに終わったな。
ちょっと、見てみたかった気もする。




