19 屋上
「順調だな。後は三人の強化人間を始末するだけだが、今までのようにはいかないぞ。アシスト情報のマークは敵を捕捉した瞬間から、正確な位置に置き換わる。三人に囲まれるような事は絶対に避けろ。健闘を祈る。」
確実な情報ではないようだが、三人の強化人間の予想位置を確認する。
エレベーターの敵は秒単位で正確だったのだから、信用する価値はあるだろう。
屋上のミニマップには、半透明の赤いひし形マークが三つ。
マークが三つとも半透明なのは、正確な情報ではなく予測情報だからと思われる。
くっついた二つのマークが左側で点滅。
おそらくは、実行犯とボディガードの一人だ。
少し離れて、移動し続けるもう一つのマークが右側にある。
これはもう一人のボディガードで、見回りでもしているのだろう。
この位置なら、今屋上に出ても、すぐに見つかる事はなさそうだ。
空調設備の配管や大きなファンのおかげで、隠れる場所には困らない。
慎重にドアを開けて、屋上に移動した。
すぐに近くの空調設備の陰に隠れ、周囲を確認する。
一人も見つける事は出来なかった。
予測でマークが表示されている地点は、死角になっていて見えない。
予測通りの場所に居る可能性は高い。
耳を澄ますが、ファンの動作音が大きく、会話なども聞こえない。
安全第一だ。
三人の正確な位置の確認を最優先としよう。
そして、最初の一人は気付かれないように不意打ちで倒したい。
その為には、ナノマシンの活性化が必要だろう。
最初の一人を倒したら、活性化状態が持続している間に、残りの二人も一気に始末する。
多分、活性化が終わると戦闘力は著しく下がる事になる。
速やかな行動が成否を分ける、って事だ。
予測位置が正確だとすると、一人で移動する強化人間までの距離は数メートル。
活性化には声を出す事が必要になる。
ここで予め活性化を発動して、それから近づいた方が良いだろうか。
いや、活性化が数十秒で終わってしまう可能性があるなら、近づいてからがいい。
隠れつつ、一番近い、強化人間の方へ移動する。
一人目を発見した。
『女』だ。
東南アジア系だろうか、日本人ではないように見える。
アシスト情報を確認、この女の位置はこれで正確なものになった筈。
みつからない様に気をつけて、後二人の位置を確認しに向かう。




